ビーチクリーンを通し、人と人をつなげるプロジェクトマナティの取り組み
- 1 観光客と地域の人々を結ぶプラットフォーム
- 2 沖縄を訪れる学校や企業・団体向けに体験型の観光コンテンツを提供
- 3 活動を持続させるために、収益の柱となる事業をつくる
大切な観光資源でもある沖縄の海は、未来に残すべき“宝”です。プロジェクトマナティは、ビーチクリーンを通して、観光客とさまざまな店舗や事業者をつなぐ新たな観光スタイルを提案しています。沖縄の海を守ることと、観光ビジネスとを両立させるヒントになるかもしれません。
誰でも手軽にビーチクリーン
プロジェクトマナティは、誰でも気軽にビーチクリーンができるプロジェクトです。特徴的なのは、参加希望者はマナティパートナーと呼ばれる登録事業者の元を訪ね、袋やトングといったごみ拾いセットと引き換えに500円を支払って参加すること。マナティパートナーは、業種を問わず、プロジェクトに賛同する方なら誰でも登録可能で、カフェやダイビングショップ、観光ガイドなど多岐に渡ります。
主催する金城由希乃さんは「サンゴに優しい日焼け止め」など、環境に配慮した製品の開発を行ってきました。プロジェクトマナティの始まりは自身の経験がきっかけだったそう。
「西表島でごみを拾った時に、集めたごみをどこに持っていくべきかが分からなかったんです。調べてみると、県内各地で同じようなことが起こっていました。ビーチクリーンをしても捨てる場所がなくてその場に放置されてしまい、ごみ置き場と勘違いされ、逆に増えてしまったこともあったそう。中には近隣の店舗に持ち込む人もいて、店主が困ってしまうケースもあると聞きます。善意で行った結果が誰かを困らせることになるなんて、悲しいじゃないですか。簡単なルールを設け、手軽にビーチクリーンができる仕組みがあればいいのにな、と思ったことが始まりでした」
一般社団法人プロジェクトマナティを2020年に設立し、プロジェクトを開始。現在、80の事業者や個人がマナティパートナーに登録しており、沖縄本島だけでなく、久米島や愛媛県など、県内外で活動が行われています。
欠かせないマナティパートナーの存在
プロジェクトマナティを続ける上で不可欠なのがマナティパートナーです。登録時に初期費用はかからず、参加者から徴収した500円のうち250円がパートナーの元に残る仕組み。
「当初は私の知人に声をかけていましたが、今では『参加したい』と登録を希望される方がほとんどです。収集されたゴミの処分費用もかかりますし、手元に残る250円はほとんど手間賃のようなものにしかなりません。それでも続けてくれるなんて、マナティパートナーは私たちにとって神様のような存在です」と金城さん。
中には、既存のガイドツアーにプロジェクトマナティを組み合わせるなど、独自にプランを作成している事業者もいます。「ゆるく続けてもらうことが大切」と言い、長く続けてもらうためにも細かなルールは設けていません。
浦添市港川にある「隠れ家カフェ 清ちゃん」は、プロジェクトマナティが始まった当初から、マナティパートナーに登録しています。
薄曇りだった11月中旬、店舗には西日本高速道路総合サービス沖縄株式会社の社員の方々が訪れていました。同社では、会社の事業計画の一つにCSR活動を掲げ、その一環として企業や団体が主催していたビーチクリーンイベントに参加していました。しかし、コロナ禍で続々とイベントが中止や延期に。どうやったら事業計画を達成できるか模索していたところ、プロジェクトマナティの活動を知り、2021年から参加しています。
まず初めに、プロジェクトマナティのために制作したオリジナルTシャツに身を包んだ社員の方々へ「隠れ家カフェ 清ちゃん」店主の黒島春奈さんがバッグとトングを手渡して流れを説明しました。その後、カフェのテラス席から浜へ下り、ビーチクリーンがスタート。約1時間で、3袋が満杯になるほど集まりました。
シーグラスアーティストとして活動する黒島さんは、これまでカフェを経営する傍ら、時間を見つけては自ら浜辺のごみを拾い、環境保護に努めていました。
「当店にはプロジェクトマナティに参加したいと、学生から大人まで様々な方が訪れます。以前は浜辺のゴミを一人で拾っていましたが、今では参加者のみなさんが拾ってくれています。そのおかげで、アート作品の制作に集中できる時間が増え、ありがたく感じています」
清ちゃんには、リピーターの参加者も多く訪れます。プロジェクトマナティを通して、ビジターとパートナーがつながり、新たな関係性を築いていく。それは、金城さんが思い描く、「プロジェクトマナティは、ビジターとパートナーとをつなぐプラットフォームでありたい」という思いが形になってきたともいえます。金城さんが、その良さを改めて語ります。
「観光とエンタテイメントで決定的に違うのが、観光は流れが決まっていないということ。何が起こるか分からない時って、ドキドキするし、ワクワクしますよね。例えばプロジェクトマナティだと、パートナーがその地域に暮らす人しか知らない情報を教えてくれるかもしれないし、誰かを紹介してくれるかもしれない。何より、海をきれいにしたいとの共通の思いがあるので会話のきっかけにもなるし、心が通いやすい。旅先で誰かと触れ合い、交流したいと考えた時に、ごみ拾いはとても良いツールになると思います。」
持続可能なプロジェクトを目指して
プロジェクトマナティでは、500円でできるビーチクリーン活動に加え、修学旅行や企業の研修旅行向けに環境学習プログラムを開発しました。海ゴミに関する講話やディスカッションを行い、県内各地のビーチでゴミを拾うというもの。11月には600人の生徒を受け入れました。
「学習指導要領が変わり、修学旅行において体験型の学習プログラムが重視されるようになったこともあって、コロナ禍以降から受け入れが増えています。企業の研修旅行についても、2025年から問い合わせが増えてきました。先日はインスタグラムを通じて香港の企業も参加しましたよ。500円でできるプロジェクトマナティのメイン活動は、ほとんど利益がないのが現状です。きちんと社員に給与を支払い、活動を持続させるためにも、今後はこのような事業にも力を入れていきたいと考えています」
2022年からは、国頭村、東村、大宜味村などで構成するやんばる3村世界自然遺産協議会から、3村で一斉に行われるビーチクリーン事業を受託。収益につながるだけでなく、プロジェクトマナティの認知度向上にも寄与しています。
2026年3月、沖縄の高校生たちに美しいサンゴ礁の海を見てもらい、そこで出会う仲間とともに海が抱える問題について考え、将来の選択肢を広げるきっかけになってほしいとの思いから、1泊2日の日程で、シュノーケル体験やビーチクリーン、チームディスカッションなどを行う「BLUE FUTURE PROJECT」をスタートさせます。渡嘉敷島で開催され、交通費、宿泊費も含めて参加費用は5000円のみ。
「これからはビーチクリーンだけでなく、もっと身近に沖縄の海を感じてもらうプロジェクトにも取り組んでいきたいです。プロジェクトマナティの活動をしていると、『他にやる人はたくさんいるさ』と言われることも多い。そうではなく、自分事として沖縄の海について考えてほしい。『BLUE FUTURE PROJECT』は、その目標に向けた第一歩。次年度以降も開催を続け、将来的に1000人の高校生に参加してほしいと考えています。今回の事業は、『こども夢基金』という助成金を活用していますが、広告費や人件費などは対象外。それでもやる意味はあると思うので、協賛金を集めながら続けていきたいです」
新しい施設を作るのではなく、いまある自然を活かして人と人とをつなぐ。プロジェクトマナティは、旅を通して沖縄の海を守る、新しい沖縄観光のスタイルとなりそうです。
-プロジェクト マナティ-
- 公式WEBサイト:https://www.manatii.org/
- 詳細を見る
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