アダンの葉で編む幻の帽子「琉球パナマ帽」の復活
ETHICAL TRAVEL OKINAWA
自生するアダンの葉を使い、手仕事だけで編み上げられる帽子「琉球パナマ帽」。絶滅寸前だった技術と産業を復興させるためのプロジェクト「RYUKYU PANAMA HAND WOVEN(琉球パナマハンドウーブン)」が、那覇市小禄にある「HONNO PARK(ホンノパーク)」を拠点に、沖縄の貴重な伝統産業として次世代につなぐため、受注販売会や編み手育成スクールを開催しています。
一世を風靡した、沖縄が世界に誇る技術
1904年に始まった「琉球パナマ帽」産業は、黒糖と泡盛に次ぐ沖縄を代表する主要産業となり、高級品として海外へも輸出され、最盛期には約3万人が従事するほどの規模に成長しました。しかし、時代の流れとともに衰退の一途をたどり、ボウシクマー(沖縄の方言で「帽子をつくる人」という意味)といわれる正統な技術を継承した編み手は、一時わずか3人にまで減り、危機的状況に陥っていたのです。
そんな中、ハイクオリティな帽子づくりで知られる国内帽子ブランド「MAISON Birth」のデザイナー・清原世太さんが「琉球パナマ帽」の魅力に着目し、那覇市小禄にあるギャラリー&ショップ「HONNO PARK」を営む新城暖さんと共に、「琉球パナマ帽」を現代に復活させるためのフィールドワークを開始しました。
10年近い歳月をかけて準備を整え、ボウシクマ―として高い技術を持つ親川 利恵さんと出会い、2021年に琉球パナマ帽復興プロジェクト「RYUKYU PANAMA HAND WOVEN」が発足しました。
素材づくりから手仕事で仕上げる希少な国産帽子
「琉球パナマ帽」の魅力は、素材と繊細な「編み」にあります。
素材となるアダンは、沖縄の海辺に自生し、防風や防潮、砂防林として人々の生活を守っています。厳しい天候の下で育つ葉は耐久性に優れ、軽くて強靭。
また、「琉球パナマ帽」の編みは繊細で美しく、当時は本場のエクアドル産パナマハットを製造する企業からも委託生産の依頼があったというほど、世界から高評価を得ていました。
丈夫な素材で丁寧に細かく編まれた帽子は、破れたり型崩れしたりしにくく、100年以上持つといわれています。デザインも流行に左右されないトラディショナルなスタイルなので、その魅力は色褪せることなく、親から子へ、子から孫へと世代を超えて受け継いでいくことができるでしょう。
「RYUKYU PANAMA HAND WOVEN」では、ボウシクマーの親川さんが自宅の庭で育てているアダンの葉を収穫し、テープ状の素材に加工するところから全て手作業で行っています。素材づくりだけで、約1カ月半、帽子を編んで仕上げるまでにさらに2~3カ月かかるため、量産はできません。
しかし、いくつもの工程を経て仕上げた作品は工芸品としても高く評価され、一般財団法人伝統工芸品産業振興協会主催の公募展において、二度入選しています。素材の栽培から製造まで一貫して国内生産という帽子は他に類を見ない、とても希少な存在です。
価値を再構築し、“工芸品”から“ファッションアイテム”へ
「琉球パナマ帽」を伝統的な工芸品として復活させるだけはなく、ファッションとして楽しめるよう帽子本来の魅力を高め、若い世代にも届く新しい価値を生み出したい。それが新城さんたちの描くビジョンです。ファッションアイテムとしての価値と可能性があると、自信を持って取り組んでいます。
受注会とボウシクマーの育成スクールを開催
「琉球パナマ帽」は、年に3~4回開催される受注会で注文することが可能です。帽子の形や編み方、サイズ、リボンのカラー&デザイン、内側のスウェットバンド、オリジナル刺繍などが選べるため、自分に似合うデザインにこだわることができます。
受注会の日程は随時「HONNO PARK」のSNSで公開。時期によっては個別の受注も可能な場合があるので、興味があれば、問い合わせてみてくださいね。
また、定期的に短期集中のスクールも開催しています。規定のコースを修了すると、講師や帽子作家として収益を得ることも目指せる仕組みが整っています。こちらは毎回全国から応募があり、募集開始と同時に定員に達するほど人気なのだそうです。
「アパレルブランドや百貨店などから仕入れや取引のお問い合わせをたくさんいただいていますが、生産が追いつかないため、お断りしているのが現状です。需要に応えるためにも、編み手となるボウシクマーを増やすことが大きな課題の一つです。また、伝統を継承し発展させることで、雇用の創出やエコシステム再生などに寄与し、全てが良い方向に向かうと考えています」
と新城さん。かつての「琉球パナマ帽」のように、産業としての復興を目指しています。
アートを沖縄観光の主要コンテンツに!アートに出会える「HONNO PARK」
ギャラリー&ショップ「HONNO PARK」の店名には、「ほんの少し」「本能」、そして「パーク(公園)」という意味が込められています。
子どもが描く落書きのような、ほんの些細な絵にも、本能を刺激する強い力がある。そんなアートの持つ力を、公園のように気軽に楽しめる空間で身近に感じてほしいという想いから、「HONNO PARK」という名前が付けられました。
店内には絵画やオブジェ、琉球ガラス、アクセサリー、Tシャツなど、県内外・海外のアーティストの作品が並び、アート鑑賞とショッピングが同時に楽しめます。
見た瞬間に「これはすごい」「欲しい!」と思わせるモノづくりをサポートしている新城さんが手掛けるプロジェクトやコラボ商品など、ここにしかないアイテムも多数並んでいます。
旅の途中に立ち寄りたい、ワクワクできる場所です。
「沖縄にある素晴らしいモノの対外的な発信にも取り組みたいですね。また、ヨーロッパの美術館巡りのようにアートや伝統工芸品巡りが沖縄観光の一つの楽しみ方として認識してもらえたら嬉しいです」
伝統技術を復活させるだけでなく、ファッションというフィルターを通し、現代や未来に通用する価値へと高めて、産業としての復興に挑戦する「RYUKYU PANAMA HAND WOVEN」プロジェクト。ぜひ、「HONNO PARK」でその取り組みに触れてみてください。