沖縄本島中部の北中城村。集落の街並みが美しいと定評のあるこの村は、起伏のある地形から、風光明媚な景色が楽しめる高台も多く、昔はその高台にドライブインシアターもあったことからドライブスポットとしても、親しまれる地域になっています。
今から50年ほど前。その村の高台に沖縄初のリゾートホテルとして外資系ホテルが建設され、幾度のオーナーチェンジを経て、現在の「EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」が誕生しました。
豊かな自然と共に、訪れる人々に新たな癒しと健康を提供する場所として、かつてのドライブスポットから生まれ変わった現在。このホテルを訪れる客層は、観光客だけでなく沖縄県民も多いのが特徴です。
創業のきっかけは「病気にならない社会をつくる」
ためのモデルづくり
人気の背景は立地だけでなく、同ホテルが掲げるサスティナブル(持続可能)な宿泊や食の提供です。元々、有用微生物のEM菌を取り入れ「病気にならない社会をつくりたい」「それをお客様に持ち帰っていただくことで、日々の生活に健康を提供する」というコンセプトのもと、ホテル経営において「ウェルネス(※)」を追求してきたのが、創業のきっかけでした。
しかし、ウェルネスとリゾートを追求していく中、徐々に観光がメインのリゾートホテル色が強まってきたそう。「暮らしの発酵」を名乗る前のホテル(旧名称:EMウェルネスリゾート コスタビスタ沖縄)が運営されていた当時の沖縄観光は右肩上がりで、年間の観光客数は1千万人に迫る勢いでした。リゾート色が強まった背景には市場のニーズがあり、当然の流れだったかもしれません。
※ウェルネス…心身ともに健康で幸福という概念
風光明媚な景色が楽しめる同ホテルは、観光客だけでなく多くの地元客も魅了している。
コロナによって一変。
健康とサスティナブルへ、原点回帰
記憶に新しいコロナ禍で、同ホテルも大きな打撃を受けました。ただ、お客様が減った状況だからこそ、これまでの成功体験・反省点を見直し「やるべきこと」に取組みました。「もともと何をやりたかったか?」を改めて見つめ直し「来訪いただいた人たちを元気にさせて、帰ったあとも健康的な生活やサスティナブルな生活を実践してもらいたい」という、思いの原点に回帰することを決めたのでした。
リ・ブランドとその影響
コロナ禍を経て、同ホテルは「暮らしの発酵ホテル ライフスタイル&リゾート」としてリ・ブランドされました。この変更は、単に名前を変える以上の意味があったのです。
それは、健康とサスティナブルなライフスタイルを核とした、新しいブランドイメージを構築する試みでした。リ・ブランド後は、特に若い女性や健康を意識した客層に大きく変わりました。もともと女性の宿泊や来訪が多かった同ホテルでしたが、リニューアル後はさらにその割合が高まり、今では8割が女性客となっただけでなく、客層も10歳ほど若返ったとのこと。さらに新たなブランドコンセプトと連動したストア(暮らしの発酵 STORE OKINAWA)や、スパ(暮らしの発酵スパ)の利用者もホテルと同様に増加していったのです。
ホテルの入り口を入ると目に入る、こだわりアイテムをセレクトした
暮らしの発酵SOTRE OKINAWAやヴィーガン対応のスイーツも味わえるDELI&CAFÉ
エシカルな取り組みとその展開
歯ブラシにも配慮。オーガニックの竹歯ブラシは全室に完備するほか、暮らしの発酵STORE OKINAWAでも販売もされている。
同ホテルではオーガニック食品を提供するレストランの運営や、ケミカルフリーの清掃方法の導入、またサスティナブルな資源を使用したアメニティの提供など、持続可能な取り組みを多方面にわたり展開しています。
これらの取り組みはSDGsの活動にも通じるものでもあり、最近では修学旅行客のSDGsを学びたいというニーズに対応する為に、ホテルを利用した学校からの要請を受けて、修学旅行を終えた後もオンラインでサスティナブルな活動を紹介する講義も行っています。こうした平和学習だけでなくSDGsやサスティナブルに関心の高い学校も増えてきたことから、そのニーズに応えられる同ホテルは、学習というコンテンツを提供することで、未来の顧客の開拓も果たしています。
これからの展望
「EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」は、今後もサスティナブルでエシカルなホテル運営を実践しながら、地域の伝統や文化を尊重しつつ、訪れるすべてのゲストに健康と癒しを提供していくことでしょう。サスティナブルな観点から沖縄の魅力を新たに世界に発信することは、同ホテルが目指す次のステップであり、沖縄ブランドを牽引する役割を担うポテンシャルを秘めている同ホテルだからこそ果たすべき使命かも知れません。
同ホテルでは、ワークショップや教育プログラムを通じて、地域社会とのさらなる連携を深め、サスティナブルな観光モデルを築きあげています。今後も観光客だけではなく地元との共存によって、これからのホテルの在り方を担っていくことでしょう。
アウター(お客様や取引先)だけでなく
インナー(従業員)へのブランド化は『尖りと粘り』から!
ホテル名に「暮らしの発酵」という大胆なネーミングを取り入れた同ホテル。リ・ブランドしてからのお客さまの反応は様々で、全面的に共感していただけるお客様も増えた一方、今までのお客様からは「自分たちの居場所がなくなり利用しにくくなるのでは?」という声も聞かれたそう。しかし同ホテルの考え方を伝えるツールの整備や、新たなブランドコンセプトに基づいたホテル運営を重ねるにつれ、徐々に支持者が増えていきました。
そうした流れの中で、当初は従業員の半数がブランド変更に抵抗感を示していましたがその意識も変わっていったのでした。例えば、お客様からの質問もこれまでとは異なり「食事は、オーガニックですか?」「お部屋の清掃もノンケミカルでやっているのですか?」といった質問が増えるようになり、それに答えていくことで、従業員にとっても徐々に「暮らしの発酵」というコンセプトに馴染み自らのブランドとして語れるようになったそうです。
このようにコンセプトに独自性を持たせて「尖らせる」ことは、お客様だけでなく従業員の方々にとっても、受け入れるまでに労力がかかるもの。しかし、一度受け入れてもらえれば、ブランドとして強固な力を発揮するのも事実。お客様、従業員の双方に対して時間をかけた「丁寧なブランドの浸透」が功を奏したと言えるでしょう。(余談ですが、コロナ禍で、リ・ブランドに関する社内全体会議を増やせたこともその一役を担ったとのこと。怪我の功名とは、これまた然り!)

有言実行でブランディング
「暮らし」や「サスティナブル」、「ウェルネス」を掲げる同ホテル。最近では毎月10本ほどの「暮らし」に関するワークショップも開催し宿泊客だけでなく、沖縄県民の方々からも好評だそう。サスティナブルな暮らしの実践方法を、こうした取組で伝えることで同ホテルの「なりたい姿」の実現に向けて動き出しています。このようにブランディングの基本は“有言実行”。ブランドコンセプトの拡散や定着の為に実践すべきポイントです。
暮らしの発酵ライフスタイルリゾート
- 住所/沖縄県中頭郡北中城村喜舎場1478番地
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