Okaraokara(オカラオカラ)。一度聞いたら忘れられないその愛らしいネーミング。豆腐の製造過程からできる副産物の「おから」を有効活用することで、加工商品や体験プログラムを提供するOkaraokara株式会社のその社名は、シンプルな理由で生み出されたものでした。
沖縄の産業を守り持続可能な社会を創るという強い志を持つ、学生起業家のふたりが立ち上げたOkaraokaraは、本来食べられるものなのに、あまり有効活用されてなかった「おから」を再利用し、価値ある商品やサービスに昇華させることで沖縄のフードロス削減に貢献しています。
創業者のひとり、崎濱花鈴さんが学生時代に参加したビジネスコンテストのテーマが「食」であったことから、沖縄の伝統食材のひとつである島豆腐の副産物の「おから」に注目し、ペットフードの提案をしたのがその始まりでした。提案した側の崎濱さん、そしてその提案を事務局として関わった知念杏珠さんのふたりがコンテストの終了後に「この活動を継続させたい!」という思いから事業化し、その時に命名されたのが「Okaraokara」でした。
「Instagramで登録しようと思ったら、Okaraは既に登録されていたから、Okaraokaraにしました!」
社会課題解決をテーマに起業した
知念さん(左)と崎濱さん(右)
と話す知念さん。ストレートにあまりひねらず、自分たちのビジネスの象徴である「おから」を続けて組み合わせ「Okaraokara」としたそのネーミングは、意外にもブランディングを試みる際に理にかなったものでした。まず、昨今のPR手法としては欠かせないSNSの登録名として他社に抑えられてないネーミングで登録できたことはもちろん、シンプルだけど耳に残り、何よりも女性らしさや可愛らしさも感じられる。「覚えやすく、忘れにくい」といったブランディングには欠かせない認知と定着において功を奏したのです。デュオであるふたりを匂わせる「Okaraokaraといった言葉の繋がりも、ふたりで生み出した事業を象徴する響きとしてぴったりのネーミングでした。
専攻は観光。
だが観光だけにこだわらなかったことが現在の姿に。
もともと学生時代は観光が専攻だった知念さんは、観光が沖縄経済を発展させる産業のひとつであったことから関心をもち、卒業後の仕事も「観光業界」一択で考えていました。しかしその考え方に変化が現れたのが、猛威を振るったコロナウィルスだったのです。
もともと観光業に携わる予定を変更し、
起業の道を選んだ知念さん
大打撃を受けた観光業界を目のあたりにし「地域経済を発展させるには、観光だけではダメだ」と気づき、崎濱さんとビジネスコンテストで関わった「おから」に、自らの道をかけることになりました。「地域産業を活性化することで、地域経済に貢献できる」ことを信じて臨んだその道は、観光産業とは全く相いれない「おから」でしたがモノづくりだけでなく、コトづくりにも取り組むことで、逆に観光との連携による姿が発見できたのでした。
社会課題解決をどうビジネスに結びつけるか?
コンテストをきっかけに注目を浴びたものの、実際のビジネス化においてふたりに様々な困難が待ち受けていました。まず、社屋はもちろん、工場などの生産能力をもたないふたりにとって、他社と連携は必然であり、原料の仕入れ先や商品製造の委託先を探すことからスタート。しかし熱い思いを伝えながら、様々な地元沖縄の豆腐屋さんに相談したものの、知名度がないことや活動そのものを上手く伝えきれず、うまく繋がりがつくれない状態が続きました。
何よりも知識や経験、お金もコネクションもないふたりにとって、ビジネスパートナーを探すことは、すべてが手探りの状態。社会課題解決には一定の知識と経験がありましたが、ビジネスについては全くの素人であったふたりだったことから、社会課題解決とビジネスとしての発展の両立といった、それぞれのテーマが重くのしかかっていったのです。
観光との親和性が高い
「おからスプーン」が突破口に。
ようやく「おから」の原料供給先や製造委託先が見つかると、同社にとって待望の第一号商品である「おから」を使った「食べられるスプーン」が完成。環境に配慮した本品を提供することで、ゴミの削減やフードロス解消に貢献するだけでなく、沖縄の食文化にも触れらえる、相乗効果を築きあげることができました。
沖縄県内の飲食店で採用されているおからスプーン
観光業界にとっても「食」は切っても切り離せない重要な資源。例えば観光ついでに立ち寄ったカフェで食べるアイスクリームにこのスプーンが添えられていると、観光客の皆さんも「えっ?食べられるの??」とびっくりされ、興味津々とのこと。そこに「島豆腐の副産物のおからから作られたスプーン」というストーリーを伝えることで、選択したメニューそのものに、付加価値を感じていただけるのです。まさにSDGsを実践している本商品を通じて、Okaraokaraだけでなく、提供するお店、そしてそれを受け入れるお客様の全てが、持続可能なエシカルな取組みに参加し、貢献できるのです。
持続可能な取組みを
ビジネスに発展させるために取組むべき使命
観光産業はこうしたエシカルな要素との親和性が高いと考えられます。観光客に対して、「観光と持続可能な問題解決は相互に影響し合うこと」や「沖縄を訪れる際に、持続可能な商品を手に取ることで、地域社会にもいつのまにか貢献していること」を実感してもらいたい。そんな思いをもってふたりは活動を発展させています。
これからのOkaraokaraは商品のプロデュースや流通だけでなく、おからを使った味噌づくり体験や粘土体験など、子供から大人まで様々な年代の方が参加できるワークショップの開催も事業の柱として育てていきたいとのこと。正直、経営を安定化させるのは、まだまだこれから。しかし、ふたりには持続可能な取組みをビジネスに発展させ、その結果社会課題解決も果たすという使命があります。
沖縄観光には企業研修などのMICE旅行や、修学旅行といった学びの旅行需要も多々あります。こうした需要に応えていくのも、ふたりが築きあげつつある、「おから」を活かしたリソースが活用できます。ふたりが道を切り拓くことで、そこに続く社会課題解決に取組む起業家も生まれてくることでしょう。周りからの期待を背負いつつも、自らの思いの実現に奮闘するその姿に共感を興せるか?今後のOkaraokaraの活動に注目したいものです。
子供から大人まで参加できる味噌づくり体験やおから粘土体験
社会課題解決の活動そのものが観光資源に。
MICE需要を取り込め!
沖縄の観光商品として需要が高まりつつあるMICE。その中で企業の報奨旅行においても、沖縄の自然やレジャーを楽しむだけでなく「学び」の要素を踏まえた観光プランを希望される企業も増えてきました。Okaraokaraが取り組むSDGsに対する取組みはニーズが高まりつつある観光資源なのです。
持続可能な取組みに自然に参加している。
その伝達も重要
おからスプーンを使うだけで持続可能な取組みに参加している。気づかないうちに観光客の皆さんにも提供できるその価値。重要なのは利用者がそこに気づいてもらうこと。よってこうした取組みでは、商品を提供しているお店でさりげなくその情報を発信してもらうように仕掛けていくことが重要です。さらにお店だけでなくSNSやHPで後々に利用者が情報を深く知ることができるように、しっかりと情報を整え発信していくことも求められます。こうした情報のバリューチェーンを築いていくのも重要な使命です。
INFORMATION
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