舞台を旅したい
やんばるの自然を楽しみたい
やんばるの美しい海で遊ぼう
沖縄自動車道最北端の許田インターチェンジから国道58号をさらに北上。今回ご紹介するのは、沖縄本島北部国頭村奥間の「道の駅ゆいゆい国頭」の向かいで、海・山・川遊びのツアーを提供している「オクマナビ」です。
この日、ガイドを務めてくれたのはオクマナビ代表で元プロウェイクボーダーの大田義信さん。多くのメニューからSUP(サップ)とシュノーケリングのコースを選びました。ちむどんどんしながら、大田さんの運転するトラックで海岸へ移動します。
SUPとは、「Stand Up Paddle board」の略称で、サーフボードの上に立ちパドルを使って漕ぎ進むハワイ発祥のウォータースポーツです。海岸に着くと、大田さんがまず砂浜でボードへの乗り方、立ち方、パドルでの漕ぎ方をレクチャーしてくれました。ボードを持つと案外軽いことに驚きながら、いざ、海へ!
ボードの上に正座するような姿勢で乗り、漕いでみたものの方向が定まらず、なかなか前へ進みません。「力を入れすぎず、パドルは上の手で押すように水中で長く掻いて」とのアドバイス通りにやると、徐々にまっすぐ進めるようになりました。水上をまるで滑っているような感覚です。
慣れてきたところで立ち漕ぎに挑戦。ボードのやや前に立ち、パドルの先をボードの前方に突くようにして重心を作り、三点を支えに直立。が、漕ぎ始めてすぐにバランスを崩し、この日最初の海面へのダイブとなりました。しかし、太陽の光や潮の匂い、風、海水の心地よさを五感でしっかり堪能できるのは、やはり最高の気分です。
この日は風が強く、なかなか進みづらかったのですが、天気が良ければ、初心者でも海岸から割と広い範囲をSUPで回るとのこと。体重が比較的重い男性より、軽い女性の方がSUP上で安定しやすい傾向があるとも話していました。少々へばり気味になったところでSUPは終了。次のスポットへ車で移動することになりました。その時、山側から「チー、チー、チー」と甲高い鳴き声が聞こえ、「ヤンバルクイナの鳴き声ですよ」と教えてくれました。
美しいサンゴの海でシュノーケリング
次はシュノーケリングです。「サンゴが見えたら、その上には立たないでください」など、レクチャーを受け、水中へこわごわ顔をつけました。体の力を抜き、落ち着いて口呼吸すると、リラックスできました。少し沖へ泳ぐと、生き生きとしたサンゴの群れが現れました。
テーブルサンゴとエダサンゴが入り混じり、信じられないぐらい美しい光景が広がっていることに感激しました。ルリスズメダイやツノダシ、モンガラカワハギ、アオブダイなどが気持ちよさそうに泳ぐ様子は、見ていて全然飽きません。沖縄本島、それも岸から近い場所で、これだけサンゴが残っているポイントは珍しいと、同行のカメラマンも「さすが地元を知り尽くした大田さん」と感心していました。
風や波がおだやかな日はSUPでシュノーケルポイントまで行くこともあるそうです。サンゴは世界中の海に600~800種いるとされ、その半数が沖縄にいるといわれています。初めてのシュノーケリングでも、やんばるの海の豊かさを実感できました。
「他の海へ行っても感じるのは、地元の海の方がきれいだということです。自然が残っている。山も近くにあるから栄養分が豊富なんでしょうね」
国頭村出身で村内のホテルに勤めながら、プロウェイクボーダーとして全国大会2位になるなど活躍した大田さんはこう話します。地元の海を愛するがゆえに、12年ほど前に「オクマナビ」を開業。新型コロナの影響を除けば、県外、県内ともに利用者は増えていて、リピーターも多いといいます。
「みんなで笑って楽しむことを心掛けています。海ではお客さんに危ない所は注意しますが、そうでないところでは思いっきり楽しんでもらっています。夜も友達みたいに、わいわい、いちゃりばちょーでー(一度会えば皆兄弟)の感覚で、接しています」
太陽のような明るい笑顔の大田さん。SUPやシュノーケリングのほか、カヤック、ウェイクボード、リバートレッキング、釣りなどメニューも豊富。ホームページもチェックしてみてください。
オクマナビ OKUMA navi
- 住所
- 〒905-1412
沖縄県国頭郡国頭村奥間1715-1
(Googleマップ利用の場合は「オクマナビ」で検索) - 予約・お問い合わせ
- TEL : 050-3561-2277
Mail : info@okuma-navi.net
【オマケ画像】
やんばるの豊かな森とともに暮らす人々
国頭村与那は、三方が山に囲まれ西は海に面し、その間を清流・与那川が流れる、昔ながらのやんばるの雰囲気を残す集落。集落中央の宿泊交流田舎体験施設「よんな~館」で、区長の大城靖さんと待ち合わせをしました。
現在約180人が住む与那では、2008年に集落の有志でユナムンダクマ協議会を結成。ユナムンダクマとは「与那の知恵」という意味で、人口減少や少子高齢化に歯止めをかけようと、みんなで知恵を出し合って子育て世代が住みたくなるような集落を目指しています。大城さんは、協議会の会長も務め、自ら集落散策ツアーなどのガイドをつとめています。
「集落を訪れるのは県内の年配の方が多いですね。ふるさとに帰ったみたいで懐かしいという声をよく聞きます」
与那集落では、沖縄戦の後、本島各地へ建築用木材を売る林業が最盛期を迎えたといいます。
「沖縄が復興していた昭和25年~30年代が一番羽振りがよく、小さな村に3軒の製材所がありました。やんばるでは600年前から林業が住民の生活の糧でしたが、山や森を残す接し方をしてきたので、その森が沖縄島北部の世界自然遺産登録につながったと思います。私たちもこれをどう次の世代につなげるか考えているところです。」
一軒の家の前で表札を見ると、屋号が示されていました。「与那に最初に住み始めた人の子孫の方の家で、集落発祥の屋敷です」と大城さん。沖縄では古い集落に行くと、名字とは別に、家に屋号がついていることがよくあります。昔は集落内での分家も多く、名字だけではまぎらわしかったため、屋号で呼び分けるという習慣が今でも残っているのです。与那ではこうした伝統を子どもたちに教えようと、集落の家々に名字の表札とは別に、屋号を書いた表札を子どもたちに作ってもらい掲げているとのことです。
豊かな水と緑に囲まれた、やんばるの里
集落内には五つのカー(井泉)があり、水道が引かれる以前はそこで洗濯や洗い物をしていました。昔、その一カ所には共同の五右衛門風呂があり、地域の人たちが利用して憩いの場となっていたそうです。
「こちらをご覧ください」別のカーでは、40~50センチ四方くらいの地面に食い込んだ石が。与那では「星石(フシイシ)」と呼ばれ、隕石だという言い伝えがあるそうです。
「ハブに嚙まれたら、石に触って患部をなでると早く治ると言われていたようです。ただし、専門家に聞いたところ、隕石ではないようですが……」
ニコニコ顔で教えてくれました。
集落内には古い「石敢當」と呼ばれる魔除けが多く、大城さんが数えただけでも200以上の「石敢當」があるということ。拝所は20カ所を超え、祈りの文化が昔から根付いてきたことがうかがえます。
※石敢當とは…主にT字路の突き当りに置かれる魔除け
また、防風・防火のために屋敷囲いにフクギを植えている家も多く、沖縄の原風景のような古き良きやんばるの光景がそこかしこにありました。
「コンビニはない。映画館もない。居酒屋もない。レストランもない。だけど、与那が好き!」と書かれたTシャツからも与那愛が伝わります。
辺りに自生している「オオタニワタリ」の葉の新芽は、天ぷらにしても、炒めても、生でもおいしいそうです。さらに、「アカメガシワ」や「カラキ(シナモンの一種)」、「クワ」の木なども見られました。
葉や実は料理に使えます。国頭村ではハチミツも採れ、与那ではそれらを「カラキ」と共にパウンドケーキなどデザートの食材として使っているそう。また、「よんな~館」では5人~10人程度の予約で、与那で採れた山菜や野草を中心としたランチも提供しているとのこと。
「猪肉が手に入った時は、要望に応じて提供できます。特に山菜や野草の天ぷらなどが好評なんですよ」
また、宿泊も可能なので、ホームページで詳細をチェックしてみてはいかが。
ユナムンダクマ協議会では、クリーンアップ運動を展開している「プロジェクトマナティ」と連携して海岸でのゴミ拾い活動にも取り組んでいます。集落散策の最後に、近くの海岸へ案内してもらいました。砂浜にはペットボトルや、浮き具などのゴミが打ち上げられていました。
「ここに住みたくなる、元気で笑い声の絶えない集落にしていこうと話し合っています。どれが好まれるか分からないけど、今ある素材を活かしながらいろいろなことをやってみて、与那に住んでよかったな!与那に住みたい!と思える活動をしていきたいです」と話してくれました。
海や山や川などの自然に触れその恩恵に感謝し、地域の人々と出会い、ゆったりとした命薬(ヌチグスイ)の時間を過ごす。それもまた、やんばるの魅力。ぜひ訪れてみてください。
ユナムンダクマ協議会
- 住所
- 〒905-1427
国頭村字与那68番地 宿泊交流田舎体験施設「よんな~館」内 - TEL
- 0980-50-1356
- ウェブサイト
- http://yonna-kan.com