沖縄本島の井泉散策|今も残る暮らしの風景

掲載日:
2026.01.27

ビーチや世界遺産を巡る旅も楽しい沖縄ですが、少し視点を変えてみると、沖縄の暮らしや自然に根ざした風景が、観光地のすぐそばに今も残されています。
そのひとつが、各地に点在する「井泉(沖縄の方言でガー・カー)」と呼ばれる湧き水や井戸です。
海に囲まれた沖縄は、山が低く河川も小規模なため、水道が整備される以前は生活用水の確保は決して容易ではありませんでした。人々は湧水や井戸水を頼りに、水のある場所に集って暮らしを営んできました。今も各地に残る井泉には、そうした沖縄の暮らしの記憶が静かに息づいています。
本記事では、県内に数多く残る井泉の中から、美しい石積みが見られ、今もなお湧水が流れる場所を中心に、5か所ご紹介します。観光の合間に立ち寄り、いつもとは少し違う沖縄の暮らしに触れる旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

INDEX

井泉(ガー/カー)・樋川(ヒージャー)とは?

井泉(ガー/カー)とは、沖縄各地に残る湧き水や井戸のこと。地下水を樋で引いた形式は「樋川(ヒージャー)」と呼ばれています。

沖縄県内には1,000を超える湧水があるとされており、その背景には、琉球石灰岩からなる沖縄特有の地質があります。地表に降った雨水が琉球石灰岩層に浸透し、地下水となって各地で湧き出すことで、多くの井泉が形成されてきました。

前述のとおり、沖縄には大きな河川が少なく、本土に比べて雨水が海へ流れ出るまでの時間が短いという特徴があります。また、降水量が梅雨期や台風期に集中することから、水は古くから貴重な存在でした。

井泉の水は、飲み水や洗濯などの生活用水としてだけでなく、農業用の灌漑水として、また場所によっては出産時の「産水」として用いられるなど、人々の暮らしと切り離せない水源でした。現在では水道が整備されていますが、井泉は今も地域の人々によって守られ、手入れされ、信仰の対象として拝所となっている場所も少なくありません。

旅の途中で立ち寄りたい、沖縄の井泉スポット5選

こうした背景を持つ井泉は、今も沖縄本島各地に点在し、それぞれの土地で大切に守られています。ここからは、今も湧水が流れ、往時の姿を感じられる井泉をいくつかご紹介します。
静かな水の風景に耳を澄ませながら、沖縄の暮らしの痕跡をたどってみてください。

① 仲村渠樋川(なかんだかりひーじゃー)|南城市

南城市玉城地区にある仲村渠集落の共同用水施設で、国の重要文化財に指定されている樋川です。最大の特徴は、五右衛門風呂が併設されていること。この形態は、県内でも仲村渠樋川だけとされています。

施設は、男性用の水場「イキガガー」、女性用の「イナグガー」をはじめ、広場、拝所、共同風呂、石畳(カービラ)などで構成されています。かつては飲み水や洗濯、野菜洗い、水浴びなど、集落の暮らしを支える生活用水として利用されてきました。
近くには、日本の名水百選にも選ばれている「垣花樋川」もあり、あわせて訪れることで、南城市に残る井泉文化をより深く感じることができます。

仲村渠樋川(国指定重要文化財)

五右衛門風呂付の樋川(ひーじゃー)は県内でここだけ

住所
南城市玉城字仲村渠724
TEL
098-917-5374

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垣花樋川

全国名水百選に選ばれた人々の憩いの場。

住所
南城市 玉城字垣花182
TEL
098-948-4660

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②宝口樋川(たからぐちひーじゃー)|那覇市

那覇市首里にある宝口樋川は、急な崖下に設けられた井泉です。琉球石灰岩を用い、沖縄特有の「あいかた積み」と呼ばれる石積みで築かれており、地形に合わせた堅牢な造りが特徴です。

古くから水量が豊かで、干ばつの時期にも枯れにくかったと伝えられています。現在も水が静かに流れ、耳に心地よい水音と、美しい石積みや石畳が広がる空間は、まるで時間がゆっくりと巻き戻ったかのよう。首里の歴史と暮らしを身近に感じられる井泉です。

宝口樋川

首里の歴史と暮らしを身近に感じられる井泉

住所
那覇市首里儀保町4-80 付近

③大謝名メーヌカー(おおじゃなめーぬかー)|宜野湾市

宜野湾市大謝名にある「大謝名メーヌカー」は、水道が整備される近年まで、集落の暮らしを支える大切な湧水として親しまれてきました。日常の生活用水としてだけでなく、正月に身を清めるための「若水」や、出産時に用いる「産水」としても利用されてきたと伝えられています。

こうした背景から、大謝名メーヌカーは祈りを捧げる場でもあり、現在も正月や2月、8月には、集落の人々によって「カーウガミ(泉拝み)」が行われています。

水が流れる三本の樋口には、布積みとあいかた積みの石積みが用いられ、その上には水の神様を祀る香炉が据えられています。地域の人々によって大切に守られてきた井泉の佇まいに触れながら、静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

大謝名メーヌカー

地域の人々によって大切に守られてきた井泉

住所
沖縄県宜野湾市大謝名5丁目11付近

④仲間樋川(なかまふぃーじゃー)|浦添市

仲間樋川は、浦添市内でも大きな井泉のひとつです。沖縄戦の際にも大きな被害を受けることなく残り、戦後には仲間地区の収容所に集められた多くの人々の生活用水を支えたと伝えられています。

昭和10年にはコンクリートを用いた改修が行われ、水を段階的に利用できる仕組みが整えられました。飲用水として使われた後、洗濯用水、農具や農作物を洗う水、馬の水浴びを行う「ウマアミシ」へと流れ、最終的には灌漑用水として再利用されていたとされています。限られた水を無駄なく活用する、当時の人々の知恵が感じられます。

また、清らかな水が湧き出る井泉は、暮らしを支える場であると同時に、祈りを捧げる場としても大切にされてきました。仲間樋川も、地域の人々の信仰と深く結びつきながら、今に受け継がれてきた場所です。

仲間樋川

暮らしを支える場であると同時に、祈りを捧げる場

住所
浦添市仲間2丁目

⑤金武大川(キンウッカガー)|金武町

金武町並里区の中央に位置する共同井泉、金武大川(ウッカガー)は、水道が整備される以前まで、飲料水として利用され、地域の暮らしを支えてきました。

干ばつの際にも枯れにくい豊かな水量を誇ることから、「長寿の泉」とも呼ばれています。正月には身を清めるための「若水」として使われてきたほか、余水は武田原へと流れ、稲や田芋の栽培を支えてきました。

現在もこんこんと湧き出る水の流れに涼を求め、夏になると多くの子どもたちが訪れる、地域の憩いの場となっています。

金武大川(町指定史跡)

県下有数の湧泉といわれるどんな干ばつでも枯れることのない長寿の泉

住所
金武町 金武640

詳細ページを見る

旅で出会う井泉と沖縄の暮らし

いかがでしたでしょうか。今回ご紹介した5か所は、県内に数多く残る湧水のほんの一部です。
井泉は、沖縄の暮らしや歴史と深く結びついてきた存在。訪れると、どこか懐かしく、タイムスリップしたような感覚を覚える場所でもあります。

ビーチや観光名所を巡る旅の合間に井泉を訪ねることで、沖縄の自然や暮らし、そして人々の営みを、より身近に感じられるひとときが生まれるはずです。

ご紹介した通り、井泉は生活の場であり、祈りの場として今も大切に守られています。立ち寄る際は案内表示や注意事項を守り、静かな時間を楽しみながら、井泉のある風景にそっと触れてみてください。

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