連載・おきなわ41物語/南大東島に広がる未知の世界
- 掲載日：
- 2025.09.24
41、それは沖縄県にある市町村の数です。
本連載「おきなわ41物語」では、41市町村のイマの魅力を現地ライターが独自取材。
地元民しかしらない地域ならではの魅力や穴場スポット、とっておきの寄り道グルメなど、沖縄をもっともっと好きになってしまうような、唯一無二の旅のアイデアを紹介してまいります。
41の物語とともに、新しい沖縄を再発見してみませんか？
太平洋に浮かぶ「浪漫孤島」
南大東島はサンゴ礁が隆起してできた隆起環礁の島で、ニューギニア付近から約4800万年かけて移動してきたとされ、現在も沖縄本島へ向かって年間約4㎝～最大7㎝の移動を続けています。
島に砂浜はなく、360度を絶壁に囲まれているため、外来種の影響も受けず、多くの固有生物たちが生息してきました。
しかももともとは無人島で、人が住み始めたのは明治時代から。八丈島からやってきた玉置半右衛門による本格的な開拓がなされてから、まだ120年あまりしか経っていません。
この島には4800万年の時を感じる手つかずの自然と、琉球と八丈島が入り混じった独特の文化が残っており、悠久のロマンを感じさせます。
INDEX
｜ Access ｜南大東島までの行き方
南大東島へは、飛行機と船の2通り。
空からプロペラ機でみる島は最高に綺麗です。
海からは、ゴンドラにのって、断崖絶壁から上陸します！
どちらも、エキサイティング！
飛行機の場合
琉球エアコミューター（RAC）
経路：那覇 ⇔ 南大東
所要時間：約１時間
運 航 日：毎日（午前・午後 各１往復）
※詳細はRACのWEBサイトでご確認。
船の場合
大東海運
経路 那覇 ⇔ 南北大東
所要時間 約13時間
運 航 日 前月の15日前後に決定
※大東島周辺の気象・海象状況の影響により、変更や延期が多いため、日程に余裕をもってご計画することをおすすめします。
※詳細は大東海運のWEBサイトでご確認ください。
｜ interview ｜新たな発見がある、おすすめの目的地を教えてください
南大東島は、琉球伝説で 「うふあがりじま（東の涯ての島）」と語られていましたが、人が住み始めてから約120年ほどしか経っていない、大自然のエネルギーと神秘を感じられる島です。地域を知り尽くしたみなさんに、ズバリこんな質問をしてきました。
「新たな発見がある、おすすめの目的地や新しい楽しみ方を教えてください」
この問いに答えてくれたのは、一般社団法人南大東村観光協会 会長の金城 祐子さん
「南大東島は、フツーの観光に飽きた方にオススメな島です。人が住んでたったの120年余り。自然も文化も、あなたにとっては未知の世界。ぜひ、南大東島に上陸してみませんか。」
では、金城さんの案内で、南大東島に広がる未知の世界を見てみましょう。
金城 祐子さん
一般社団法人南大東村観光協会 会長/株式会社グレイス・ラム 代表取締役
那覇市出身。沖縄電力に勤務しながらラム酒への情熱からビジネスを立ち上げることを決意し、2004年3月に同社の社員ベンチャー制度を活用して株式会社グレイス・ラムを創業。沖縄の自然・素材と、自らの「好きなこと」を起点に社会にインパクトを与えつづける。グレイス・ラムのCOR CORを通じて、南大東島のストーリーを広めている。
未知の世界 南大東島①～南大東島の成り立ちが独特すぎる～
①約4800万年前ニューギニア諸島で誕生
現在のニューギニア諸島付近で、火山の隆起によって南大東島のもととなる火山島が誕生しました。その後、火山活動が止まると島はゆっくりと沈み始めましたが、沈降する島の上にサンゴ礁が発達し、長い年月をかけて積み重なっていきました。 こうして、海底火山とサンゴ礁の営みが繰り返される中で、やがて現在の「南大東島」の姿がつくられたといわれています。
②島の特徴は「断崖絶壁」
南大東島の周囲は、高さ数十メートルもの断崖絶壁に囲まれており、沖縄の他の島でよく見られる天然の砂浜はほとんどありません。 これは、長い年月をかけてサンゴ礁が隆起し、その後、荒々しい波の力によって削られたことによるものです。 大自然がつくりあげた雄大な景観は、まさに「絶海の孤島」と呼ぶにふさわしい迫力があります。
③1820年 ロシア艦船「ボロジノ号」により発見
ロシア艦船「ボロジノ号」が航行中に大東諸島を発見し、南大東島を「サウスボロジノ・アイランド」と命名しました。これが、南大東島が歴史の記録に初めて登場した出来事です。
④ 1885年 沖縄県に帰属（無人島）
1885年、南大東島は沖縄県の一部となりました。 当時は人の住んでいない島でしたが、琉球の人々の間ではすでに「うふあがり島（東の涯ての島）」と呼ばれ、伝説の中で語られていたのです。 歴史と伝承が重なり合うことで、南大東島にはどこか神秘的な雰囲気が漂っています。
⑤1900年 八丈島開拓移民により有人島へ
1900年（明治33年）1月23日、八丈島からの開拓移民23名が現在の西港に上陸し、南大東島は初めて有人島となりました。 歴史に登場してからわずか約200年、人が住み始めてからもまだ120年余りしか経っていないという、非常に新しい歴史を持つ島なのです。
未知の世界 南大東島② 南大東島ならではの風景やアクティビティ
南大東島の神秘に触れる旅 ～“地底の宝箱”のような鍾乳洞の世界
沖縄の離島の中でも、独自の自然景観を誇る南大東島。島の魅力は断崖絶壁の海岸や豊かな自然だけではありません。
実は、島の地下にはかつて200以上もの鍾乳洞が眠っており、まるで“地底の宝箱”のような神秘の世界が広がっています。
数ある鍾乳洞の中でも最大規模を誇るのが「星野洞」。
ライトアップされた洞内には、天井から無数に垂れ下がる鍾乳石や、自然が彫刻したような石柱が並び、幻想的な光景が広がります。
「星野洞」は、観光で見学できる鍾乳洞として整備されており、探検気分で足を踏み入れると、まるで別世界に迷い込んだかのよう。
南大東島を訪れるなら、外せないスポットです。
南大東島秘境探検ツアー
大人も子供もワクワク！ 世界中から注目されている南大東島の豊かな自然を体感しよう
- 住所
- 島尻郡南大東村在所52 三島商事シェアオフィス101号
- TEL
- 090-5082-4949
ビーチのない島で楽しむ青い海
南の島といえば、やっぱり青い海を満喫したいもの。ところが、断崖絶壁に囲まれた南大東島には砂浜がありません。その代わりにあるのが、島内に二つだけ存在する“天然プール”。
崖の下の岩場をくり抜いて造られたもので、満潮時には海の中に沈み、干潮になると姿を現します。波がザブーンと打ち寄せるワイルドなプールの中では、南洋の小さな魚たちがのんびり泳ぎます。ただし、天候によっては近づくのが危険なこともあるので注意が必要です。
この天然プールは、地元の大人たちが「子どもたちを安全に海で遊ばせたい」という想いから、岩をくり抜いてつくったものです。
天気や海の状況に合わせていつでも泳げるよう、島の西側と東側に一つずつ設けられました。
南大東島の魅力③～南大東島ならではのグルメ＆お土産スポット～
南大東島には、沖縄本島や宮古・八重山の島々とは少し違う、独特のグルメ文化があります。観光で訪れたらぜひ味わってほしい名物をご紹介します。
大東寿司＆大東そば
大東寿司
大東寿司は、みりん醤油の特製ダレに漬け込んだサワラやマグロを、甘酢の効いた酢飯と一緒に握った握り寿司です。そのルーツは開拓移民のふるさと八丈島の「島寿司」と言われており、やや甘味の強い酢飯を使うなどの特徴が同じです。もっちりとした甘めのシャリが、みりん醤油の漬けネタと合わさって、芳醇な甘みの美味しいお寿司です。
大東そば
南大東島は八丈島からの移民によって開拓されました。そのため、八丈島文化の影響を受けつつ、沖縄そばと融合して生まれたのが「大東そば」だと言われています。甘辛い大東寿司との相性は抜群です。
大東寿司は、みりん醤油の特製ダレに漬け込んだサワラやマグロを、甘酢の効いた酢飯と一緒に握った握り寿司です。そのルーツは開拓移民のふるさと八丈島の「島寿司」と言われており、やや甘味の強い酢飯を使うなどの特徴が同じです。もっちりとした甘めのシャリが、みりん醤油の漬けネタと合わさって、芳醇な甘みの美味しいお寿司です。
大東そば
南大東島は八丈島からの移民によって開拓されました。そのため、八丈島文化の影響を受けつつ、沖縄そばと融合して生まれたのが「大東そば」だと言われています。甘辛い大東寿司との相性は抜群です。
南大東島生まれのラム酒「COR COR（コルコル）」
「COR COR」は、沖縄・南大東島にある グレイスラム蒸留所 でつくられている国産ラム酒ブランドです。南大東島は島の大部分がサトウキビ畑で、さとうきびの恵みを生かしたラムづくりが盛んに行われています。
「COR COR」という名前は、フランス語で “Coeur”＝心・ハート を意味し、「サトウキビの心」から生まれるラムという想いを込めて名付けられています。
南大東島のラム酒、誕生物語が映画化されました！
小説『風のマジム』は、南大東島を舞台に、ラム酒づくりに挑戦した女性・金城祐子さんの実話をもとに描かれた物語です。
原田マハさんによる小説として出版された感動のサクセスストーリーは、伊藤沙莉さん主演で映画化され、2025年9月12日に全国公開されました。
夢に向かって挑戦する姿は、島の雄大な自然や文化と重なり合い、多くの人々に深い感動を与えています。
原田マハさんによる小説として出版された感動のサクセスストーリーは、伊藤沙莉さん主演で映画化され、2025年9月12日に全国公開されました。
夢に向かって挑戦する姿は、島の雄大な自然や文化と重なり合い、多くの人々に深い感動を与えています。
映画 『風のマジム』 主演・ 伊藤沙莉 x 芳賀薫監督 特別インタビュー 【9/5 沖縄先行・9/12全国公開】
主演の伊藤沙莉さんと芳賀監督が語る、映画の見どころ・撮影秘話。さらに、SNSで寄せられた皆様からの質問にも答えていただいた貴重なインタビュー。
南大東島では「縄を切る魚」として知られる深海魚、ナワキリ（クロシビカマス）
ナワキリはその頑丈な顎と鋭い歯を持ち、「縄を切るほど強い」ことが名前の由来です 。
体は細長く、黒褐色の体表で鱗はなく、メタリックな印象。顎には鋭い歯が並び、夜間に中層、昼間は深海にいる肉食性の魚です。
見た目の印象とは裏腹に、白身ながら脂がしっかり乗っていて、マグロのトロのような上品な旨みがあります。
南大東島から直送！ナワキリを沖縄本島・西原町で味わえる！
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ナワキリ定食 ※みそ汁、ごはん、マグロの刺身、もずく酢、パパイヤイリチー、漬物付
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隠し味でマデイラ酒というワインを加え煮詰めてつくったマディラソースでいただきます。
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脂の乗ったプリプリな白身をバターしょうゆで焼いています。味変で自家製トマトソースも！
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南大東島から直送のキハダマグロが付いています
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自家製パパイヤイリチー！
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勝連のもずくを使用し、南大東島から取り寄せたシークヮーサーを使った自家製のポン酢がかかっています。
なんと！このナワキリが沖縄本島でも食べられるのです。
「ito.cafe」は西原町上原にあり、南大東島の鮮魚やこだわりの地元食材が楽しめるゆったりカフェで、お店一押しの「ナワキリ定食」は南大東島の高級魚「ナワキリ」を使用しており、ここでしか味わえないメニューを楽しむことができます。
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大東寿司も味わえる
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もっちりとした甘めのシャリと、みりん醤油に漬け込んだネタが特徴
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南大東島の風化したサンゴで焙煎した「琉球珊瑚珈琲」
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広く明るい店内
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グループでの使用も可
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南大東島のガイドブックやパンフレットがいっぱい
さらに ito.cafe では、名物の「大東寿司」も味わえます。
もっちりとした甘めのシャリと、みりん醤油に漬け込んだネタが絶妙に合わさり、思わず何個でも食べたくなる美味しさです。
コーヒーは、南大東島の風化した珊瑚を使って焙煎した「琉球珊瑚珈琲」を使用。お土産にドリップバッグの購入もできます。
店内は明るい陽射しが差し込む開放的な空間。
南大東島を紹介するガイドブックやパンフレットも揃っており、お友達やご家族と一緒に旅行計画を立てる場所としてもぴったりです。
ito.cafe
南大東直送の新鮮な魚を使用した沖縄の食材が楽しめる
店名の「ito」には3つの「いと」が込められています。
愛しい人と楽しい時間を。
人と人との糸（縁）を繋ぎ、紡ぐ。
意図したことが叶う。
そういう場所になりますように。
■住所：沖縄県西原町上原2-2-6 2F
■電話番号：080-6489-6558
■営業時間：11時〜17時（L.O.16時30分）
■定休日：日曜日、月曜日
■駐車場：あり（10台）
｜ model course ｜紹介スポットも回れる、とっておきの旅プラン
未知の世界を体感！冒険気分で楽しむ1泊2日
展望台から絶景を眺め、秘境探検や大東グルメを味わう充実の2日間
雄大な自然と独自の文化が息づく南大東島。限られた滞在時間でも島の魅力を存分に楽しめるのが、1泊2日のモデルコースです。
旅の始まりは島を一望できる日の丸山展望台から。歴史を学べる「ふるさと文化センター」や、開拓の象徴シュガートレインを巡り、神秘の鍾乳洞・星野洞や迫力あるバリバリ岩で大自然を体感します。さらに秘境探検ツアーに参加すれば、冒険気分も満喫。
食の楽しみも豊富で、大東そばや大東寿司、名物ナワキリ、さわらバニラジェラートアイスなど島ならではの味に出会えます。
旅の締めくくりには「てぃーだぬやー」でお土産探し。
自然、文化、食をぎゅっと凝縮した充実の2日間が待っています。
｜ comment ｜一般社団法人南大東村観光協会からのメッセージ
一般社団法人南大東村観光協会
ようこそ、南大東島へ。私たち観光協会は、皆さまにこの島ならではの自然と文化を存分に楽しんでいただけるようお手伝いしております。雄大な海と断崖、神秘的な洞窟、そして心温まる郷土料理。ここでしか出会えない体験が、皆さまの旅を特別なものにしてくれるはずです。どうぞ南大東島でのひとときを心ゆくまでお楽しみください。
- 住所
- 沖縄県島尻郡南大東村字在所317 南大東村立ふるさと文化センター内
- TEL
- 09802-2-2815
｜ 編集後記 ｜おきなわ物語編集部
南大東島を取材して強く感じたのは、「まだ誰も知らない沖縄」がここにある、ということでした。琉球伝説に語られる「うふあがりじま」は、人が暮らし始めてからわずか120年あまり。ほかの島々と比べれば歴史は浅いのに、その分だけ独自の文化や自然がダイナミックに息づいています。取材の中で伺った「フツーの観光に飽きた方にオススメ」という言葉には、この島の本質が凝縮されているように思いました。
断崖絶壁の風景や広大なサトウキビ畑、島の暮らしに根付いたグルメやお土産、そしてここでしか体験できないアクティビティ。どれも“南大東島ならでは”の魅力で、訪れる人に新鮮な驚きと発見を与えてくれます。アクセスのハードルは決して低くありませんが、その分「来てよかった」と心に残る体験ができるはずです。
観光地化されすぎていない島だからこそ、旅人それぞれの感性で楽しみ方を見つけられるのも南大東島の大きな魅力です。ぜひ一度足を運び、あなた自身の「未知の沖縄」を体感してみてください。
【ピックアップ】連載・おきなわ41物語/沖縄にはまだ知られていない魅力いっぱい
連載・おきなわ41物語
沖縄にはまだ知られていない魅力いっぱい
41、それは沖縄県にある市町村の数です。おきなわ「41」物語では、41市町村のイマの魅力をひとつずつ独自取材。
地元民がおすすめする地域ならではの魅力や是非訪れてほしい穴場スポット、寄り道グルメなど、新しいローカル旅の目的地を紹介してまいります。
41の物語とともに、新しい沖縄を再発見してみませんか？
ポスト
南大東島で「ホテルよしざと」を営んでおりましたが、後継者の問題から事業を譲渡し、2年前に家族とともに沖縄本島へ移住いたしました。
南大東島の素晴らしさを多くの方に知っていただきたいという思いから、ito.cafe をオープン。母と3人の娘で力を合わせて運営しております。
食材の多くは南大東島から直送し、ソースやドレッシング、付け合わせに至るまで、ほとんどを自家製でご提供しています。ホテル経営時代には忙しくて実現できなかったことに挑戦でき、とても充実した毎日です。
南大東島のことなら隅々まで知り尽くしておりますので、島にご興味のある方はぜひお気軽にお立ち寄りください。皆さまのお越しを心よりお待ちしております。
ito.cafe店主 吉里 英利子さん