おきなわ41物語/島をやさしく包み込む緑の風景 多良間島

掲載日:
2025.12.22

41、それは沖縄県にある市町村の数です。
本連載「おきなわ41物語」では、41市町村のイマの魅力を現地ライターが独自取材。

地元民しかしらない地域ならではの魅力や穴場スポット、とっておきの寄り道グルメなど、沖縄をもっともっと好きになってしまうような、唯一無二の旅のアイデアを紹介してまいります。

41の物語とともに、新しい沖縄を再発見してみませんか?

自然と歴史と伝統が残る島

多良間島は、宮古島と石垣島のちょうど中間に位置する島です。
サンゴ礁からなる平坦な地形に広大なサトウキビ畑が広がり、収穫期には黒糖の甘い香りが島中に漂います。心地よい風が吹き、ゆるやかな時をのんびりと過ごすには最適な島です。
起伏のない平坦な島なので、夜は空がほぼ半円級のドーム型に広がり、プラネタリウムにいるような感覚で星空観賞を楽しめます。

INDEX

| Access |多良間島までの行き方

■飛行機の場合
沖縄県宮古島市の宮古空港から多良間空港までRAC(琉球エアコミューター)の飛行機が片道約25分、一日2往復が運航しています。
那覇空港及び他空港から多良間空港への直行便はありません。詳しくは琉球エアコミューターへお問い合わせください。
琉球エアコミューターホームページ:https://rac-okinawa.com/

沖縄県石垣市の石垣空港から多良間空港まで第一航空の飛行機が片道約25分、週2往復程度運航。(原則として月曜日・土曜日)
第一航空ホームページ:https://dai1air.com/ishigaki/#diagram

■船の場合
沖縄県宮古島の西へ約67キロ、石垣島の北東約35キロに位置する多良間島へは、宮古島の平良港からフェリーで約2時間の船旅です。基本的に海路は宮古島からの一日一便のみです。旅客運賃表、フェリー運航情報について、詳しくは多良間海運へお問い合わせください。
多良間海運ホームページ:http://www.taramakaiun.com/

| interview |新たな発見がある、おすすめの目的地を教えてください

多良間島は、宮古島と石垣島のちょうど中間に位置する島で、サンゴ礁からなる平坦な地形に広大なサトウキビ畑が広がり、収穫期には黒糖の甘い香りが島中に漂います。そんな多良間島ですが、地域を知り尽くしたみなさんに、ズバリこんな質問をしてきました。

「新たな発見がある、おすすめの目的地や新しい楽しみ方を教えてください」

この問いに答えてくれたのは、多良間島観光コンシェルジュの波平 雄翔(なみひら かずと)さん
「商業施設がほとんどない"何もない”を極めた、本物の離島体験。他の観光地とは違う、”ありのままの暮らし”と”手つかずの自然”を体感できる、それが多良間島です。 ​」

では、波平さんの案内で、他の観光地とは違う本物の離島体験を見てみましょう。

波平 雄翔(なみひら かずと)さん

島唯一の多良間島観光コンシェルジュ

多良間島で生まれ、沖縄県、東京都などの観光関連事業でコーディネーターを歴任し、地域資源を活かしたプロジェクト推進、観光商品開発、関係人口創出に携わる。多良間が大好きすぎて再び島に戻り、観光コンシェルジュとして活躍中。

「文化経済の循環」をキーワードに、多良間の自然や文化が価値として循環し、次世代へと受け継がれていく仕組みづくりに取り組んでいる。島の暮らしや営みの中で育まれてきた自然の恵みや伝統文化にふれながら、訪れる人と地域が一緒に学び、関わり、支え合う関係を育てたい。100年先も多良間の旅が楽しめる島であり続けるために、来訪者と共に考え、島の魅力を“体感し、循環させる”ツアーを企画・案内している。

公式ホームページはこちら

八重山遠見台

島に来たらまず訪れたい。17世紀頃に船の往来を見張るために作られたと伝えられる。隣接する展望台からは島の全景が見渡せる。

日本一の黒糖の産地

島全体で品質にもこだわり、200戸以上の農家が「島ごとエコファーマー」として認定されています。

八重山遠見台~島に来たらまず訪れたい、全景を見渡す場所~

多良間島に到着したら、最初に訪れたいのが八重山遠見台。標高34mと島の最高地点にあり、17世紀頃に船の往来を見張るために作られたと伝えられています。

隣接する展望台からは、島の形や集落の位置、さとうきび畑の広がり、そしてその先にある海までを一望できます。高い建物がない島だからこそ、視界を遮るものはなく、多良間島の大きさや暮らしの様子が一目で感じられます。

多良間島は3つの壁で守られています。
まず島の外周には、一周道路沿いに浜抱護(防潮林)が植えられています。これにより潮風から集落や畑を守ります。次に集落の周りには村抱護(防風林)が集落を強風から守ります。3つ目の壁は、屋敷林。それぞれの家を風や湿気から守ります。これらはポーグ(抱護)と呼ばれ、台風の強風から島全体を守ってきました。

これから巡る島の風景を、最初に上から眺めることで、旅の時間が自然とゆったりとしたものになるはずです。

「抱護(ポーグ)」が生み出す、特色ある文化や景観、持続的島嶼農業システム

多良間島を歩くと、島をやさしく包み込む緑の風景に気づきます。島の外周には潮風を防ぐ浜抱護、集落の周りには強風を和らげる村抱護、そして各家には屋敷林。これらは「抱護(ポーグ)」と呼ばれ、台風の多い島で暮らしを守ってきた知恵です。自然と共に生きる人々の想いが重なり合って生まれた景観は、島時間を感じる多良間島ならではの魅力。ゆっくり歩きながら、その心地よさを体感してみてください。

海への出入口「トゥブリ」

集落から海へ続く小道は「トゥブリ」と呼ばれ、島内に47か所あり、生活と海が身近につながっています。さとうきび畑や牧草地を歩きながら、島の日常風景を五感で感じてみてください。

多良間村には、海へとつづく小道を「トゥブリ」と呼びます。海岸線沿いに47か所存在し、標識が立っています。一つ一つ景色や雰囲気が異なるので、トゥブリ巡りをして、お気に入りのトゥブリを捜してみてください。

私のおすすめのトゥブリは、島の北西に位置する「タカタトゥブリ」です。夕日が美しく見られる場所として知られ、流木に腰掛けて波音に耳を澄ましながら夕日を眺める、ゆったりとした島時間を楽しむのに最適な場所です。

また、「タカタトゥブリ」は、もう一つの顔を持っています。
1857年、多良間島沖でオランダ商船「ファン・ボッセ号(Van Bosse)」が嵐に遭い、高田海岸沖で座礁・沈没したという歴史が、地元の伝承や史料に残されています。この船は上海からシンガポールへ向かう途中、強風に遭遇して遭難しました。船員や乗組員は小舟で島に上陸し、島の人々に手厚く迎えられたと伝えられています。その後、別の船に救助され、出発地へ戻ったといわれています。

遺物として、アムステルダムと表記された瓶・皿類・錨などがあり、高田の海岸一帯に磁器の破片が散財していたそうです。

島の歴史と自然、そして静かに流れる時間を肌で感じられる場所として、ぜひ訪れてほしい場所です。

沖縄県初!令和7年1月 日本農業遺産認定 「琉球王国時代の「抱護(ポーグ)」が育む多良間島の持続的島嶼農業システム」

令和7年1月多良間島の「琉球王国時代の『抱護(ポーグ)』が育む多良間島の持続的島嶼農業システム」が 日本農業遺産に認定されました。これは、沖縄県初でその地域ならではの伝統的な農業の仕組みや知恵が評価されたものです。
平坦な孤島で風の影響を受けやすい多良間島では、琉球王国時代から風水思想を応用し、幾重にも配置された「抱護」により自然災害を緩和し、島内での社会・生産活動を可能としています。さらに、抱護は希少種を含む様々な動植物の生息場所にもなっています。島の地質は通水性が高く、雨水は速やかに地下浸透するため、ため池や地下水を貴重な水資源として、用途別に使用場所を分離しながら、持続的に利用してきました。サトウキビと畜産の耕畜連携による資源循環を行い、島内の全サトウキビ農家がエコファーマー認定を受けるなど、水質や環境の保全に取り組んでいます。豊穣を祈るスツウプナカなど、今も数多くの伝統行事が継承され、村落共同体組織や「ユイマール(互助)」の精神が現在でも生き続けています。
(出典:農林水産省ホームページ

日本一の黒糖の産地~島ぐるみで育てる、さとうきびと黒糖~

多良間島は、日本一の黒糖生産量を誇る島です。主な作物であるさとうきびは、島の風景そのものといえる存在。島全体で品質にもこだわり、200戸以上の農家が「島ごとエコファーマー」として認定されています。広がるさとうきび畑を目にすると、黒糖が島の自然と人の営みから生まれていることが実感できるはず。多良間島の味は、島の暮らしそのものです。

宮古製糖多良間工場は、多良間島の黒糖生産の中心的な拠点です。多良間島では200戸以上の農家がさとうきびを栽培し、島全体で年間約3,000トンの黒糖が生産されています。この量は沖縄県全体の約4割を占め、日本一の生産量を誇ります。
一般向けの工場見学は行われていませんが、黒糖の香りが漂う製糖期(主に12〜3月頃)は、工場周辺で甘い香りを感じることができます。

宮古製糖多良間工場でつくられる黒糖は、さとうきびの風味を活かした豊かな甘みが特徴です。カルシウムや鉄、カリウムなどのミネラルが豊富で、料理の甘みづけやそのままのおやつとしても人気があります。
多良間島では全てのさとうきび農家が、エコファーマー(環境保全型農業者)として認定されており、農薬や化学肥料の使用を抑えた栽培が進められています。これにより、島に優しい品質の高い黒糖づくりが実現されています。

さとうきび全農家による島ごとエコファーマー

多良間村では「さとうきび農家島ごとエコファーマー」として200戸以上の農家が県からエコファーマーの認定を受けており、農薬・化学肥料3割減を目標にさとうきび農家全体でエコと品質向上に取り組んでいます。島ごとエコ認定を受けるのは多良間村が初めてです。
2014年度に島ごと新規認定されて以降、2019年度には再認定され「人にも環境にもやさしい安全・安心な多良間村産黒糖ブランド」が確立されています。

エコファーマーとは、沖縄県持続性の高い農業生産方式の導入に関する指針に基づき作成する「持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画」の沖縄県知事認定を受けた農業者のことをいいます。
エコファーマーは、5カ年間の認定計画に基づき生産した農産物に、エコファーマーマークを付して販売することができます。

エコファーマーは、有機質資材による土づくり、化学肥料(窒素成分)及び化学合成農薬の使用低減などの環境にやさしい農業(環境保全型農業)による農産物の生産をすることで、環境負荷低減への寄与と併せ、消費者の求める、より安全・安心な農産物供給に努めています。

(出典:多良間村役場ホームページ

多良間島の黒糖を、より多くの方に味わっていただきたいという思いから、私も商品を販売しています。パッケージには、贈る相手を思い浮かべながら選べるよう、6パターンの「島の格言」をあしらいました。嬉しいことに、先日開催された「離島フェア2025」において、【優良特産品食品部門特別賞】を受賞することができました。
現在は、一般社団法人多良間村ふしゃぬふ観光協会がある、「すまぬむたらま」でも販売していますので、島にお越しの際はぜひ手に取ってみてください。

離島フェア2025「優良特産品」受賞者はこちら

|おまけ|紹介しきれなかった島の日常風景

商業施設がほとんどない、多良間島。そこには、どこか懐かしく心がほどけるような風景が広がっています。昔の沖縄も、きっとこのような佇まいだったのではないでしょうか。多良間島の魅力は、島全体に今も息づく素朴な暮らしと、手つかずの自然。「ありのままの島の時間」を感じられる場所です。日常を少し離れて、ぜひ多良間島へ足を運んでみてください。

| model course |紹介スポットも回れる、とっておきの旅プラン

島をやさしく包み込む緑の風景と歴史を感じる多良間島1泊2日の旅

自然と祈りに包まれる島時間

商業施設が少なく、昔ながらの風景と暮らしが今も息づく多良間島。本モデルコースでは、島の玄関口から集落、御嶽、史跡までを巡り、自然と共に生きてきた島の文化や信仰に触れます。ガイド付きツアーで島を見渡す絶景を楽しみ、島民に大切に守られてきた祈りの場所を訪ね、最後は島の日常が感じられる食堂へ。ゆっくりと流れる島時間を体感できる、1泊2日の旅です。

詳しくはこちら

| comment |一般社団法人多良間村ふしゃぬふ観光協会からのメッセージ

一般社団法人多良間村ふしゃぬふ観光協会

日本で最も美しい村連合に加盟し、無理な島内開発を避け、大切な伝統文化、自然資源を保全していくことで、住む人、訪れる人が融合し、双方にとって魅力的な島を作りご案内していくために会員一同、日々頑張っております。
日本で最も美しい村多良間島に是非お越しください。

・住所:多良間村塩川445-1
・電話番号:0980-79-2828
・営業時間:10:00~18:00
・定休日:年末年始
・駐車場:あり
・その他:Wi-Fi完備

公式ホームページはこちら

多良間島PV/一般社団法人多良間村ふしゃぬふ観光協会

ドローン空撮とは違って、陸・砂浜・海(ダイビング)の動画です。特にダイビング部分の映像は奇麗な魚やイルカ・ウミガメも映っていて見ごたえ充分です。多良間島に来られない方にもこの動画を観て楽しんでいただければ幸いです。

編集後記

多良間島を旅して、まず驚いたのは、すれ違う島の方々が皆さん挨拶をしてくださることでした。見ず知らずの旅人である私に、車ですれ違うおじいも、自転車ですれ違う学生も、商店の前で立ち話をするおばあも、自然に頭を下げてくれます。他の土地ではあまり経験することのない光景に、心を打たれました。

その後、波平さんの案内で八重山遠見台から島全体を見渡し、フクギに守られた集落や広がる農地、そしてトゥブリの先に広がる美しい海を目にして、改めて多良間島の魅力を実感しました。

リゾートホテルもなく、コンビニもなく、信号は島に一つだけ。それでもここには、「豊かな自然」と「ゆっくりと流れる時間」が確かにあります。本物の離島体験を求める方は、ぜひ一度、多良間島を訪れてみてはいかがでしょうか。

【ピックアップ】連載・おきなわ41物語/沖縄にはまだ知られていない魅力いっぱい

連載・おきなわ41物語

沖縄にはまだ知られていない魅力いっぱい

41、それは沖縄県にある市町村の数です。おきなわ「41」物語では、41市町村のイマの魅力をひとつずつ独自取材。
地元民がおすすめする地域ならではの魅力や是非訪れてほしい穴場スポット、寄り道グルメなど、新しいローカル旅の目的地を紹介してまいります。
41の物語とともに、新しい沖縄を再発見してみませんか?

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掲載日:
2025.12.22

※掲載内容は、掲載日もしくは更新日時点での情報です。