連載・沖縄こころの旅|コザのまちと歩んだのぼりやのお菓子

掲載日:
2026.05.11

沖縄の旅を彩るのは、美しい海や豊かな自然、そして心温まる人との出会いです。
当連載「沖縄こころの旅」では、観光の舞台を支える“人”にスポットを当て、その想いや仕事、沖縄への愛を紹介します。
観光地や飲食店、体験サービスの裏側には、訪れる人を迎える多くの人の物語があります。
人を通して出会う沖縄の魅力を、少しだけ深く旅してみませんか。

INDEX

今回お伺いしたのは、コザの日常に寄り添う、町のお菓子屋さん

今回お伺いしたのは、コザのまちで長年親しまれてきた老舗菓子店、のぼりや製菓。
創業から64年、世代を超えて愛される味とともに、まちの移り変わりを見守ってきました。
ショーケースに並ぶ素朴なお菓子の一つひとつには、変わらないやさしさと店主の想いが込められています。
観光ではなかなか出会えない、コザの日常の甘い風景をたどります。

1962年創業の『のぼりや製菓』
「子どもから大人まで笑顔になれるお菓子を」との想いのもと、洋菓子から和菓子まで幅広く提供しています。
創業者は米軍基地のベーカリーで務めた経験を活かし、甘さ控えめで上品な味わいのお菓子を生み出してきました。
人気の「ジャーマンケーキ」は、アメリカ文化の影響を受けた沖縄の歴史が感じられる一品。濃厚なチョコ生地にココナッツの食感がアクセントになっています。沖縄県産の黒糖を使用した「黒糖ケーキ」は、底に粒の大きなザラメが敷かれ、上品な甘さの中にも満足感のある味わいです。
長年愛される定番商品も、時代に合わせて形を変えたり、新作を生み出したりと、進化を続けています。

のぼりや

コザの日常に寄り添う、町のお菓子屋さん

【住 所】沖縄県沖縄市上地1丁目11-1
【電 話】098-932-7895
【営 業】10:00-20:00
【定休日】月曜日

公式ホームページはこちら

甘い香りで、コザの歴史を見守ってきた人

與座 美香さん

のぼりや製菓 代表取締役社長/沖縄商工会議所 女性会 会長

沖縄市・コザで60年以上続く老舗菓子店「のぼりや製菓」。その味と看板を受け継ぐのが二代目の與座さんです。創業者の長女として店とともに育ち、経理や配達、接客まで現場のすべてを経験しながら家業を支えてきました。地域の人に愛されてきたお菓子と、両親の想いを次の世代へつなぐことを大切に、今日も店に立ち続けています。

のぼりや製菓 公式ホームページ

インタビュー|コザのまちと歩んだ、のぼりやのお菓子

のぼりやの歴史について教えてください

父が築いた繁盛店の歴史

のぼりやは1962年に父が創業しました。2026年の今年で64周年になります。
父はコザの上里製菓で修業した後、米軍基地内のベーカリーに勤務し、その後、登屋製菓を創業しました。
当時の沖縄にはケーキ店が少なく、遠方から買いに来る方も多かったため、大変繁盛していたと聞いています。職人を約30人雇い、毎日およそ200台のホールケーキが売れていたそうです。
下の写真は父で、当時の様子がうかがえます。復帰前のため車は左ハンドルですが、国産のトヨタ車です。
特に男性の方は、この写真に興味を持たれることが多いですね。

当時の思い出やエピソードはありますか?

父の教えが今も店の原点

幼少期は、よく店で遊んでいた記憶があります。父は奄美大島出身、母は石垣島出身で、兄弟姉妹が多かったため、親族を地元から呼び寄せて手伝ってもらっていたようです。私は叔父や叔母にあたる方々に遊んでもらっていました。
小学校に入る頃には店が成長期に入り、非常に忙しくなりました。高学年になると、私も手伝うようになりました。クリスマスや春休み前など、ケーキがよく売れる時期は、本来子どもにとって楽しい季節ですが、友達や家族と遊んだ記憶はあまりありません。反抗期には「どうしてうちはケーキ屋なのだろう」と思ったこともありました。そんな時、父から「しかめっ面で登屋に入ってくるお客さんはいない。この仕事は、お客様を笑顔にするお手伝いができる、とても良い仕事なんだ」と諭されたことを覚えています。
この父の考えは、今も私の中に息づいており、これからもしっかり守っていきたいと考えています。

変わらぬ場所に刻まれた店と街の記憶

店の場所は、創業以来変わっていません。この場所ならではのエピソードが二つあります。
一つ目は、1970年12月に起きた「コザ暴動」です。当時、店の前も現場となり、飛び火で店のテントが焼けたそうです。12月の最繁忙期でまだ営業中だったのですが、父は大急ぎで従業員を帰宅させ、兄とともに消火活動にあたったと聞いています。私は少し離れた自宅におり、二階から立ち上る炎を震えながら見ていた記憶があります。
二つ目は、店の目の前にあるバス停です。この位置関係は創業以来64年変わっていません。復帰前は右側通行だったため、店の前のバス停は那覇行きでした。現在は左側通行となり、北向きのバス停になっています。あるお客様から、幼少期の誕生日に父に連れられてバスに乗り、ケーキを買いに来た思い出があると聞かされました。

これまでの経営でご苦労されたことはありますか?

コロナ禍が転機になった

のぼりやは、ほとんどが店頭販売のみだったため、コロナウイルスの流行による外出制限の影響を受け、売り上げが落ち込みました。この危機を打開するため、研究→改善→実施を繰り返し、次の3つの方策を見出しました。

【販路拡大】
県外で開催された5県7会場の催事に出展しました。出展を通して、「ジャーマンケーキ」が沖縄のローカルスイーツとしてほとんど知られていないことが分かりました。同時に、米軍統治下の沖縄の話やアメリカ文化、復帰後の沖縄についてお話しすると、皆さんに大変喜んでいただきました。さらに驚いたことに、出展後、7会場すべてから来場者が実際に来沖し、のぼりやを訪れてくださったのです。

【ネット販売】
沖縄に来られない方々のために、ネット販売も開始しました。ケーキは壊れやすいため宅配業者の集荷が難しいという課題がありましたが、それを解決するため、ジャーマンケーキを四角い形にして崩れにくくし、冷凍配送する方法を考案しました。もちろん、冷凍しても味が変わらないよう研究を重ねました。

【個包装】
ホールケーキは切り分ける手間があるため、より気軽に食べられるようにしてほしいという声や、沖縄土産として持ち帰りたいという要望を受け、5個入りの個包装パッケージの販売も開始しました。おかげさまで、2026年4月よりパレット久茂地の楽園百貨店でも販売を開始し、大変ご好評をいただいています。

最後に沖縄を訪れる観光客の方々へのメッセージをお願いします

物語ごと味わう、コザの日常の甘い思い出をぜひ

のぼりやのお菓子は、米軍統治下の時代から受け継がれてきた、沖縄の暮らしの記憶が詰まったお菓子です。観光で訪れる皆さまにも、ただ甘いだけではない、その背景にある物語ごと味わっていただけたら嬉しく思います。コザのまちを歩き、空気を感じたあと、ぜひのぼりやへお立ち寄りください。ここには、昔も今も変わらない沖縄の日常があります。私も時間の許す限り店頭に立っていますので、楽しく“ゆんたく”(沖縄の方言でおしゃべりの意味)しましょう。皆さまの旅の思い出の一つになれたら幸いです。

周辺の観光スポットとして私のおすすめは「沖縄こどもの国」です。
動物園では約150種の動物を展示しており、沖縄ならではの野生動物や在来家畜をはじめとして、日本や世界の野生動物に出会うことができます。
よろしければ是非お立ち寄りください。

沖縄こどもの国 Okinawa Zoo & Museum

楽しみながら学べる!体験できる!沖縄こどもの国Okinawa Zoo & Museum

住所
沖縄市 胡屋5-7-1
TEL
098-933-4190

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2026.05.11

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