連載・沖縄こころの旅/水と人の記憶を未来へつなぐ

掲載日:
2026.04.20

沖縄の旅を彩るのは、美しい海や豊かな自然、そして心温まる人との出会いです。
当連載「沖縄こころの旅」では、観光の舞台を支える“人”にスポットを当て、その想いや仕事、沖縄への愛を紹介します。
観光地や飲食店、体験サービスの裏側には、訪れる人を迎える多くの人の物語があります。
人を通して出会う沖縄の魅力を、少しだけ深く旅してみませんか。

INDEX

今回のテーマは、沖縄の湧き水

沖縄の湧き水について

環境省が2024年に実施した「湧水保全に係る状況調査」によると沖縄県の湧水把握件数は1,261件で、多くの湧き水が今も存在していることがわかります。
 その理由は、沖縄の島々の地質と地形にあります。地面の下には、サンゴ礁に由来する琉球石灰岩が広がっています。この層は隙間が多く、水を通しやすいのが特徴です。
 一方、その下に分布する島尻層泥岩は水をほとんど通しません。雨水は、琉球石灰岩のすき間を通って地下へ浸み込み、泥岩の上を流れて、島の低い場所や崖の割れ目などから湧き出します。(引用:沖縄の湧き水アーカイブ)

あいうえお

このような自然と風土が生み出した沖縄の湧き水は、大きな山や川の存在しない沖縄の人々の暮らしを支え、島国である沖縄を大きく発展させました。沖縄戦の最中にも多くの命をつなぎ、その恩を忘れない人々が今も感謝の祈りを捧げる場所でもあります。
 上水道が完備された現代においても、沖縄では、かつて飲料水や生活用水、防火用水等につかわれた湧き水が、多く残っています。湧き水は生活だけでなく、歴史や文化、自然や環境においても大きな役割を果たしていると考えます。(引用:沖縄の湧き水アーカイブ)

湧き水とは

 広辞苑や大辞林で「わき-みず「涌き水・湧き水」を調べてみると、「わいて出る水」「地中からわいて出る水。ゆうすい」とあります。さらに「井」「井戸」「泉」について調べてみると以下のようになっています。(引用:沖縄の湧き水アーカイブ)

「井」とは ・泉または流水から用水を汲み取る所。
・地を掘り下げて地下水を汲み取る所 。井戸。
・井戸。堀り井戸。
・泉や地下水をためた水汲み場。
「井戸」とは ・用水を得るために、地を掘って地下水を吸い上げ、または汲み取るようにしたもの。
・地面を深く堀り、あるいは管を地中に打ち込んで地下水をくみ上げるようにしたもの。
「泉」とは ・地中から湧きでる水または湯。また、その場所。

沖縄における湧き水の呼び方

沖縄では、井戸のことを「カー」、川のことを「カーラ」と呼びます。井戸にはその他に「ガー」、「ジャー」、「ハー」、「ケー」、樋から水が流れ落ちる所を「ヒージャー」等、その呼び方に違いがあります。呼び方にはその地域や前につく言葉によって違いがあるようです。(引用:沖縄の湧き水アーカイブ)

沖縄湧き水fun倶楽部とは

2010年6月に発足した『湧き水fun倶楽部』は、沖縄県全域にある湧き水についての情報収集と発信を目的に活動を続ける湧き水愛好会です。そのもとになるのがラジオ沖縄で1994年から2009年の15年間にわたり放送された『多良川うちなぁ湧き水紀行』です。その際に沖縄県内の500箇所以上の湧き水を訪れ、地域の方々にお話をうかがった記憶と記録を残したいと『湧き水fun倶楽部』が発足されました。さらに湧き水fun倶楽部での活動を通して収集された情報も加え、湧き水マップ、冊子、沖縄の湧き水カルタの制作、講師の派遣等を行い、多くの方々に湧き水と人の記憶を伝えてきました。

沖縄湧き水fun倶楽部 代表 ぐしとこもさん

ラジオ沖縄で1994年から2009年の15年間にわたり放送された『多良川うちなぁ湧き水紀行』という番組があり、初代パーソナリティはごやかずえさんで5年、その後私が引き継いで10年担当しました。この番組を担当する中で、地域のお年寄りから湧き水に関しての貴重なお話を聞くことができました。ラジオは一過性のものなので、これを何とか残して地域の方々に返していけないかと考え、番組終了後に勉強会を立ち上げたのが、『湧き水fun倶楽部』の始まりでした。現在は会員も増え15名ほどになりました。

沖縄湧き水fun倶楽部 代表 ぐしとこもさん

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活動概要・これまでの取り組み

身近な湧き水を訪ね、湧き水をとりまく歴史や文化、自然や環境を学び、いざという災害時にも地域の水源が活用できるよう、情報収集と発信を行っており、 2011年3月に『浦添市の湧き水マップ』、2013年に『浦添の湧き水』(冊子)、2015年に『沖縄の湧き水カルタ』を完成。ワークショップや勉強会の企画、また、依頼があれば、子ども達や地域で湧き水を学習する際に講師の派遣などを行っています。

湧き水fun倶楽部に入会して良かったこと

湧き水fun倶楽部会員のみなさま

水が好きで、子どもの頃から水たまりを見つけると、何か生き物がいないかと覗き込んでいました。湧き水fun倶楽部の活動が新聞で紹介された際には、自ら連絡して入会しました。
活動を通して、これまで知らなかった水場を訪ね、その土地の歴史や文化についても併せて学べることが、とても楽しいと感じています。
また、沖縄では水のある場所には必ず祈りがあることも、県外とは異なる点で興味深いと感じています。

湧き水fun倶楽部会員のみなさま

私の好きな湧き水スポット&風景

湧き水fun倶楽部会員のみなさま

南城市の垣花樋川(カキノハナヒージャー)が好きです。集落は高台にあり、水場はそこから30~40mほど下にあるため、戦前は飲料水を人力で運んでいたそうです。石畳の途中には、村人が一息ついた「中休み(ナカユクイ)石」や「上休み(イーユクイ)石」が残っており、当時にタイムスリップしたかのような感覚を味わえる瞬間が気に入っています。

垣花樋川の近くにある仲村渠樋川(ナカンダカリヒージャー)もおすすめです。水場の前に広がる石畳は雰囲気がとても良く、心惹かれます。中央に並ぶ3か所の樋はイキガガー(男性用水場)で、洗濯などに使われていました。右側の石垣で囲まれた場所はイナグガー(女性用水場)で、その隣には共同風呂(五右衛門風呂)も復元されています。当時の人々の息遣いが聞こえてくるような、生活感あふれる場所です。

湧き水fun倶楽部会員のみなさま

垣花樋川

全国名水百選に選ばれた人々の憩いの場。
※「おきなわ物語」テナント情報

住所
南城市 玉城字垣花182
TEL
098-948-4660(DMOなんじょう株式会社)

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仲村渠樋川(国指定重要文化財)

五右衛門風呂付の樋川(ひーじゃー)は県内でここだけ
※「おきなわ物語」テナント情報

住所
南城市玉城字仲村渠724
TEL
098-948-4660(DMOなんじょう株式会社)

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沖縄(うちなぁ)の湧き水アーカイブについて~水と人の記憶を未来へつなぐ~

2010年6月に発足した『湧き水fun倶楽部』は、これまでの活動記録を次世代に残すため、2026年2月「沖縄(うちなぁ)の湧き水アーカイブ」を公開しました。このサイトは、沖縄各地の湧き水(カー・ガー)を写真・地図・物語で記録し、だれもが探して学べるデジタルアーカイブです。このサイトを通してさらに多くの方々に、水と人の記憶を引き継ぐことで、未来の私たちの生活に大きな財産を残すことができると考えています。
今回の公開では、まず、前述の湧き水カルタで取り上げた県内50箇所からスタートしましたが、今後はスポットを随時追加予定です。

沖縄湧き水fun倶楽部会員 野原さん

湧き水fun倶楽部の活動も10年以上が経ち、情報が次々と蓄積されてきたため、整理したいと考えていました。しかし、メンバーはいずれも仕事の傍らで活動していることから、なかなか手が回らず困っていたところ、大阪経済大学国際共創学部教授の熊澤さんとの出会いがありました。先生の研究テーマと私たちの課題が合致し、話はとんとん拍子に進み、約1年くらいの日数で立ち上げることができました。

沖縄湧き水fun倶楽部会員 野原さん

大阪経済大学国際共創学部 教授 熊澤輝一さん

地域に関するさまざまな情報のアーカイブ化を研究テーマに活動していたところ、偶然、妻のつながりで湧き水fun倶楽部の皆さんと出会いました。
地域のアーカイブは、今回のように市民の立場から立ち上がることもありますが、継続が難しいのが現状です。今回はそうならないよう、長く続くアーカイブとなる工夫を重ね、皆さんと一緒に作り上げることができたと思います。

大阪経済大学国際共創学部 教授 熊澤輝一さん

沖縄湧き水fun倶楽部 代表 ぐしとこもさん

このアーカイブの特徴は、その時々の湧き水の様子を記録として残していく点にあります。浦添の仲間樋川を例に挙げると、2008年の記録には水タンクが樋を覆っている写真が掲載されていますが、2009年に発掘調査が行われた際にタンクが取り払われ、中の石樋が見えるようになった際の記録写真、その後浦添湧き水マップを作った際に市民の皆さんと湧き水めぐりをした時の写真、また、急に水が涸れてしまった時、復活した時等、その時々の湧き水の姿が記録として残されています。メモには当時、周辺の方々や専門家のみなさんから伺ったお話なども含めて、これまでのfun倶楽部のあらゆる関わりが記録されています。

今後も沖縄(うちなぁ)の湧き水の記憶をこのアーカイブに記していきたいと考えています。そうした思いから、このアーカイブのサブタイトルを「水と人の記憶を未来へつなぐ」としました。

沖縄湧き水fun倶楽部 代表 ぐしとこもさん

おそろいのTシャツの背中には「飲水思源(いんすいしげん)」という文字が。この言葉は、湧き水fun倶楽部の顧問を長年勤めてくださった金城義信さんの座右の銘です。生物は水がなくては生きていけません。その水の源を思う気持ちを大切にしたいと思っています。この言葉は『湧き水fun倶楽部』の理念となっています。

まとめ|湧き水を訪ねる前に、心に留めておきたいこと

澄んだ水面に木々の影が揺れ、ひんやりとした空気が肌をなでる湧き水のほとり。そこはただ美しいだけの場所ではなく、長い年月、地域の人々の暮らしを支え、祈りや感謝の気持ちが重ねられてきた大切な場所でもあります。私たちが心地よさや癒やしを感じるその風景は、日々手入れを続ける人の想いと、場所を敬う地域の心によって保たれています。訪れる際は、声の大きさや立ち入りの範囲、足元の自然への配慮など、ほんの少し意識を向けてみてください。写真を撮る前に、まず深呼吸をひとつ。水の音に耳を澄ませ、その場に流れる時間を感じることが、何よりの礼儀になるはずです。湧き水は観光スポットである前に、地域の記憶が息づく場所。そっと寄り添う気持ちで、その清らかさに触れてみてください。

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掲載日:
2026.04.20

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