島の日常に出会う。「共同売店」で楽しむ島時間

掲載日:
2026.10.02

沖縄本島中部、うるま市の海中道路を渡り、平安座島、宮城島を抜けた先にある伊計島。美しい海に囲まれた島には、昔ながらの集落やのどかな風景が残り、ゆったりとした時間が流れています。

そんな伊計島の集落の中にあるのが「伊計島共同売店」です。
一見すると地域の小さな商店ですが、その歴史は100年以上。島の人々の暮らしを支え、人が集い、つながる場所として大切に受け継がれてきました。

近年では島ならではの商品も充実し、観光客が立ち寄る場所としても注目されています。

今回は伊計島共同売店を訪ね、伊計自治会の玉城会長にお話を伺いました。共同売店を入口に、島の日常や文化に触れるひとときを楽しんでみませんか。

100年以上、島の暮らしと共に歩んできた共同売店

伊計島共同売店が設立されたのは1923年。途中、戦争によって中断した時期を経ながら再建され、2026年で103年を迎えます。

共同売店が生まれた背景にあったのは、離島で暮らす人々の生活でした。当時は本島との行き来も現在のように簡単ではなく、個人商店だけでは島民の暮らしを支えることに限界があったため、住民が力を合わせて運営する共同売店がつくられたといいます。

現在も伊計島共同売店は自治会を中心に運営され、食料品や日用品などを販売しています。単に買い物をする場所ではなく、島の人たちが顔を合わせ、言葉を交わす地域の拠点としての役割を担っています。

「いつも来る人が来ないと、自治会に連絡が入って、家まで様子を見に行くこともあります」と玉城会長。

売店は島の人々をゆるやかにつなぎ、お互いの暮らしを見守る場所でもあるのです。

島民みんなで考えた、共同売店を未来へつなぐ方法

1982年に伊計大橋が開通すると、伊計島から本島へ車で移動できるようになりました。
島民の生活が便利になった一方、本島のスーパーなどで買い物をする人が増え、共同売店の経営は次第に厳しくなっていきました。

「このままではいけない」と始まったのが、共同売店を未来へ残すための改革です。

全国の共同売店を研究し、その魅力を発信する小林未歩さんも加わり、島民みんなでアイデアを出し合いました。

店内にはゆっくり過ごせるイートインスペース「シマキッチャ」を設置。さらに、来店者や売れ筋などを細かく調べるマーケティング調査を行い、営業時間や売場づくり、商品開発などを見直していきました。

そうした取り組みが実を結び、共同売店は赤字から黒字へ転換。

「まだ改革は続いています」と玉城会長が話すように、100年以上の歴史を守るだけでなく、時代に合わせて変わり続けていることも、伊計島共同売店の魅力です。

不定期ですが、シマキッチャでは「島ぜんざい」や「黄金いものシフォン」「小麦コーヒー」を販売。使用しているさとうきびや黄金芋は全て伊計島産とのこと。ぜんざいのムーチー(餅)は時間がたっても柔らかくなるよう考えて開発したそうです。さとうきびの自然の甘さと見た目にもかわいいぜんざいはぜひ食べてほしい一品です。

ここでしか出会えない「伊計島のもの」をお土産に

共同売店を訪れたら、ぜひチェックしたいのが伊計島ならではの商品です。
なかでも注目したいのが、島で栽培された小麦を使った商品。伊計島では一度途絶えていた小麦栽培を復活させ、現在では「原麦」「ブラン」「全粒粉」「白粉」の4種類をはじめ、島小麦を使ったサーターアンダギーやお菓子など、さまざまな商品が生まれています。

そのひとつが「小麦珈琲」。
「ある日、麦を炒っていたら焦がしてしまって。もったいないな、と考えたことから小麦珈琲ができたんです」と玉城会長が笑いながら教えてくれた、思わぬ失敗から誕生した商品です。

他にも、「豊年祭 伊計島」とデザインされたTシャツや、島の湧き水を活用した化粧水など、ここでしか手に入らない商品が並びます。

取材した日は、玉城会長の娘さんが新しいお菓子の商品開発に取り組んでいました。「商品を通して、もっと伊計島のことを知ってほしい」とにこやかに話してくださいました。

旅先でその土地のものを選ぶ時間も楽しみのひとつ。伊計島を訪れた思い出として、お気に入りを探してみてはいかがでしょうか。

共同売店からはじめる、伊計島の島歩き

現在では島民だけでなく、共同売店を目当てに訪れる観光客も増えています。

島内にある旧伊計小中学校の跡地を活用したN高等学校の先生や生徒も売店を訪れ、スクーリングの際にはお弁当の注文が入るなど、新しい交流も生まれているそうです。

共同売店に立ち寄ったあとは、少し時間をとって集落を歩いてみるのもおすすめです。伊計島は、うるま市景観条例の「伊計島重点地区」に指定され、昔ながらの暮らしを感じられる建物や風景が残されています。3月頃にはひまわり畑も楽しめるなど、季節によってさまざまな島の表情に出会えます。

そんな島歩きを楽しむ際に知っておきたいのが「伊計島憲章」です。
島には昔から島民が大切にしてきた自然や文化、場所があります。それらを次の世代へ受け継ぎ、島の暮らしを持続していくために制定されました。島内7カ所には憲章が記された看板なども設置されています。

島の日常に少しおじゃまするような気持ちで歩いてみることが、伊計島の魅力をより深く感じるきっかけになるかもしれません。

「共同売店を観光案内の拠点としても活用し、島歩きツアーや島小麦を使ったお菓子の商品開発など、これからやってみたいことはまだまだある」と玉城会長。

100年以上受け継がれてきた共同売店は、島の暮らしを支えながら、新しい伊計島の魅力を伝える場所へと進化を続けています。

伊計島共同売店

住 所:沖縄県うるま市与那城伊計163
営 業:9:00~19:00
電 話:098-977-8393

公式Instagramはこちら

沖縄各地に残る共同売店にも立ち寄ってみよう

伊計島だけでなく、沖縄本島北部の山原や離島を中心に、今も各地に共同売店が残っています。
買い物をする場所であると同時に、人が集まり、地域の暮らしを支えてきた共同売店。それぞれの地域を訪ねてみると、その土地ならではの商品や人との交流など、観光地とはひと味違った沖縄の魅力に出会えます。

地域の暮らしを支える「山田共同売店」/恩納村

恩納村山田の集落にある「山田共同売店」。昔から地域の人々の暮らしを支えてきた、地元に根ざした共同売店です。食料品や日用品などが並び、今も地域の人々に親しまれています。恩納村を訪れた際には、昔ながらの沖縄の暮らしを感じながら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

てるしのの島にある「しまじり共同売店」/伊平屋村

「てるしの(太陽神)の島」とも呼ばれる伊平屋島にある、75年の歴史を持つ「しまじり共同売店」。
美しいエメラルドグリーンの海に囲まれた島で、昔ながらの懐かしい雰囲気を残す共同売店です。伊平屋島を訪れた際には、島の暮らしや歴史を感じながら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

名護市東海岸の大浦集落にある「大浦共同売店」/名護市

地域の人々の暮らしを支えてきた、昔ながらの共同売店です。近くにはマングローブを散策できる遊歩道や「わんさか大浦パーク」もあり、自然豊かな大浦の風景を楽しみながら立ち寄るのもおすすめです。

共同売店を巡ってみると、それぞれの地域で受け継がれてきた暮らしや文化、人と人とのつながりが見えてきます。
沖縄を旅するときには、有名な観光スポットだけでなく、地域の日常にそっと触れられる共同売店にも立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

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掲載日:
2026.10.02

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