慰霊の日を前に平和について考えてみませんか?

掲載日:
2025.05.28

80年前の6月23日、太平洋戦争末期に県民を巻き込んだ沖縄地上戦が終結しました。
沖縄県では、この日を「慰霊の日」と定め、沖縄戦の戦没者の霊を慰め、平和を祈る日としています。県条例により公式な記念日となっており、例年、県内の学校や職場は休みとなります。
この日には、県内各地で慰霊祭や追悼式典が行われ、多くの遺族や関係者、一般市民が戦没者を偲び集まります。
また、県内全域で正午の時報にあわせてサイレンが鳴り響き、県民は1分間の黙祷を捧げます。「慰霊の日」は、戦争の記憶を継承し、平和の大切さを改めて考える、沖縄県民にとって非常に重要な一日です。

「慰霊の日」を前に、沖縄戦の悲劇を風化させることなく、次の世代へ平和な社会をつないでいくために。
沖縄戦を題材にした平和劇を観て、今一度、平和について考えてみませんか。

今回は、この平和劇を主宰する永田健作さんに、お話をうかがいました。

永田 健作さん

株式会社ナラティブ 代表取締役/映像ディレクター

那覇市を拠点に活動する映像ディレクター。沖縄戦の記憶を次世代に伝えるための演劇プロジェクト「平和劇」を主宰。この取り組みは2021年に始まり、2025年で5年目を迎える。沖縄戦体験者の証言をもとに脚本を制作し、演劇を通じて戦争の悲劇と平和の大切さを伝える活動を続けている。

「沖縄戦と平和劇」の特徴と構成

「沖縄戦と平和劇」は、沖縄戦の体験者による証言をもとに構成された脚本で、戦争の実相をリアルに描いています。全体は前半・後半の二部構成となっており、前半では永田さんが戦争の背景を解説し、後半では演劇が上演されます。この構成により、観客の深い理解を促します。演劇を通じて観客と時間と空間を共有し、戦争の記憶を「自分ごと」として捉えてもらうことを目指しています。

公演と活動状況

2024年には沖縄県内で24回のロングラン公演を実施し、計622人が観劇しました。2025年には公演回数を48回に増やすことを目指しています。また、沖縄県内にとどまらず、広島や長崎をはじめとする全国各地での公演も行い、地域ごとに異なる戦争の記憶や痛みを共有する活動を展開しています。

活動の背景と想い

永田さんが平和劇を始めたきっかけは、白梅学徒隊の元隊員である故・中山きくさんとの出会いでした。「私が語ることをやめたら、彼女たちが生きた証しも一緒に消えてしまう」という中山さんの言葉に強く心を動かされ、永田さんは戦争体験を演劇で伝えることに使命を感じたといいます。
また、沖縄戦体験者・大城勇一さんの証言をもとにした今回の平和劇では、戦争という極限状態における人間の葛藤や選択が描かれています。

「沖縄戦と平和劇」2025年6月公演

■公演日時
6月4日  (水)16:00開場/16:30開演
6月4日  (水)19:00開場/19:30開演
6月14日(土)19:00開場/19:30開演
6月18日(水)16:00開場/16:30開演
6月18日(水)19:00開場/19:30開演
6月28日(土)16:00開場/16:30開演
6月28日(土)19:00開場/19:30開演
■公演場所
沖縄県立博物館・美術館2F講堂
那覇市おもろまち3丁目1-1
地図を見る
■入場料:無料
■あらすじ
沖縄戦の後期。沖縄本島南部、糸満のガマに避難した父と娘は、そこで二人の男と出会う。ひとりは教え子を戦場に送りこんだという教師、もうひとりは身分を隠した便衣兵(住民に偽装して戦闘を行う軍人)だった。教師は父親に「この銃で自分を殺してくれ」と懇願する。ガマの中に緊張が走る中、米軍が目前まで迫ってきていた。
■出演
山内 和将/仲間 千尋/野原 康市/渡嘉敷 直貴/新垣 晋也/安慶名 みりか/片山 英紀/屋宜 秀高/崎間 由樹/大城 和希
■その他

・上演回によって出演者が異なります。

・公演時間は60分を予定しています。(講話25分/平和劇35分)

・未就学児童の入場も可能です。

・団体のご予約も承っております。(上限200名まで)
■お問い合わせ
平和劇の内容やお申し込みについてのお問い合わせは【080-6486-3529】もしくは【heiwageki@gmail.com】までご連絡ください。

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沖縄戦・ガマの記憶伝える平和劇…沖縄県出身の俳優が命の尊さ語り継ぐ

永田 健作さん

ぼくはこれまで、14名の戦争体験者の方々にお会いしてきました。

体験した内容や、戦争に対する解釈もそれぞれに異なります。
でも、最後には皆さん同じことをおっしゃいます。

「あのような悲劇は、自分たちで終わりにしてほしい。もう二度と、戦争を繰り返さないでほしい」

平和劇の題材になっている大城勇一さんは、ご自身の体験を語る途中、何度も涙を流しました。大城さんの体中から、言葉にならない想いが発散されていました。

ぼくはその想いを、平和劇という形に変えて表現しています。

日本では年々、戦争体験者が少なくなっていっています。あの時代を生きてきた人たちの言葉を聞く機会は、そう多くは残されていません。

どうやってあの歴史を語り継いでいくか。その課題に、ぼくは演劇の力を使って向き合っています。

2025年は戦後80年の節目になります。平和について考える機会も増えると思います。ですが、いちばん大切なことは、今年高まったその熱量を、来年以降にも繋げていくことです。

体験者の痛みに終わりはありません。

「沖縄戦と平和劇」6月公演、ぜひご来場ください。

永田 健作さん