連載・おきなわ41物語/与那国島で『ばちらぬん』体験を!

掲載日:
2025.07.08

41、それは沖縄県にある市町村の数です。
本連載「おきなわ41物語」では、41市町村のイマの魅力を現地ライターが独自取材。

地元民しかしらない地域ならではの魅力や穴場スポット、とっておきの寄り道グルメなど、沖縄をもっともっと好きになってしまうような、唯一無二の旅のアイデアを紹介してまいります。

41の物語とともに、新しい沖縄を再発見してみませんか?

自然・文化・歴史すべてが八重山のどの島にもない独特の雰囲気

沖縄本島から南西へ約509km、石垣島から約127km、東京から約2,100km。
周囲27.49km、面積28.95k㎡の日本最西端の孤島、与那国島。

隣接する台湾とは、約111km距離にあり、年に数回、台湾の山並みが見えることもあります。
荒々しい波が打ち付ける断崖絶壁の景観は、男性的な力強さがあり、自然・文化・歴史すべてが八重山のどの島にもない独特の雰囲気で訪れる人々を魅了しています。

与那国町観光PR動画

INDEX

| Access |与那国島までの行き方

琉球エアーコミューター

  • 沖縄「那覇」➡︎「与那国島」1日2便
  • 沖縄「与那国島」➡︎「那覇」1日1便
  • 沖縄「石垣島」➡︎「与那国島」1日2~3便
  • 沖縄「与那国島」➡︎「石垣島」1日3~4便
  • 2024年3月時点の情報です。

※ご予約は日本航空(JAL)にて可能です。

 

フェリーよなくに(福山海運)

  • 石垣島→与那国島 週2便 (毎週 火曜日/金曜日)出港:午前10時 到着:午後2時頃
  • 与那国島→石垣島 週2便(毎週 水曜日/土曜日)出港:午前10時 到着:午後2時頃
  • 電話 0980-82-4962(石垣) 0980-87-2555(与那国)

| interview |新たな発見がある、おすすめの目的地を教えてください

日本の最西端に位置する与那国島は、八重山諸島の中でもほかの島とは異なる、独自の文化や自然が根付く島です。今回は、そんな与那国島の独自の文化や自然を紹介したい!地域を知り尽くしたみなさんに、ズバリこんな質問をしてきました。

「新たな発見がある、おすすめの目的地や新しい楽しみ方を教えてください」

この問いに答えてくれたのは、与那国島出身で俳優・映画監督・与那国語ラッパーとして多彩に活動する東盛あいかさん
「私の生まれ育った与那国島は、他の離島にはない独特の風景や自然・文化があります。私はこの与那国らしさをいつまでも残していきたいと思っています。ここでは、私が想う『ばちらぬん』(与那国語で”忘れたくないもの”)を紹介したいと思います。」

では、東盛さんの案内で、与那国島の『ばちらぬん』を見ていきましょう。

東盛あいかさん

俳優・映画監督・与那国語ラッパー

幼少期から中学までは与那国島で育ち、中学後は高校進学のため石垣島へ移る。高校卒業後、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科俳優コースに進学。大学では演技に加え、脚本・撮影・編集・制作・美術などを自ら学び、幅広いスキルを身につける。
卒業制作作品『ばちらぬん』(与那国語で「忘れない」の意)を企画・主演・監督として制作。島の文化・風景・言語を描いた同作は、2021年「ぴあフィルムフェスティバル」PFFアワードでグランプリを受賞。作品は全国で上映され、与那国島でも凱旋上映。島文化の保存と伝承への強い思いが込められている。

公式Instagram

与那国島のばちらぬん①与那国のてしごと

与那国島のばちらぬん②ヨナグニウマ

与那国島のばちらぬん③与那国島の絶景

与那国島のばちらぬん①与那国のてしごと

よなは民具

与那国島では、古くから島の植物を使った民具が生活の道具として用いられてきました。その一つが「ウブル(水汲み用の容器)」です。ウブルは現在でも、島の年中行事やお葬式で香炉として使われるなど、島の暮らしに欠かせない存在です。
今回は、そのウブル作りを体験するために、祖納(そない)集落で民具を製作している「よなは民具」の工房を訪ねました。

ウブルの材料となるのはクバの葉で、乾燥させてから使用します。
「クバ」は沖縄の言葉で、和名では「ビロウ」と呼ばれる植物です。島内に広く自生しており、与那国町の木にも指定されています。
ヤシ科の植物であるビロウは、とても大きな葉を持ち、アコーディオンのようなひだと優れた伸縮性が特徴です。

ウブルの製作体験は約30分ほどで終了しました。与那国島のクバの葉は柔らかいといわれており、作業はあっという間に進み、無事に完成しました。
完成後は、東盛さんも一緒に記念撮影。その後、海に出て実際に海水を汲んでみたところ、1枚のクバの葉だけで作られているにもかかわらず、一切水が漏れることはありませんでした。
今でも島の暮らしに欠かせない理由を、体験を通して実感することができました。

よなは民具

島に自生する植物だけで生活道具を作る

住所
八重山郡与那国町与那国247-1
TEL
090-8292-1299

やまいとぅ工房

やまいとぅ工房は、与那国島に自生する蔓性植物「トウツルモドキ」をはじめ、クバの葉やマーニ(クロツグ)など島の植物を素材に、すべて手作業で籠や雑貨を編む工房です。

材料のトウツルモドキを採ったら直ぐにひご(編めるように内側の繊維を取り除く)作りを行います。
籠作りはひご作りで全て決まる。籠を編むことは誰でもできるけど、綺麗なひごを作るのが大変だそうです。

ひご(籠が編める様に中のワタ部分を取り除く)が出来上がるといよいよ籠を編んでゆきます。
まずは籠の底面から編んでゆきます。

トウツルモドキを使った籠の他にも、島に自生する植物や木の実など、いろいろな植物を使って日々の暮らしに少しだけ彩りを添える様なものつくりをしています。

やまいとぅ工房

日本最西端、与那国島に自生する「トウツルモドキ」という蔓性の植物を使い材料を採取する事から始まり一本一本ひごを作って籠を編み上げています。
使うほどに艶やが増し飴色に経年変化し、暮らしを彩る民具です。
自然豊かな与那国島の風や香りをほんの少しでも感じてもらえるような素朴で温かみのある物作りをしています。連絡はインスタのDMか、ホームページからお願いします。
※工房見学可能ワークショップあり

住所
八重山郡与那国町365の1

公式Instagram

与那国島のばちらぬん②ヨナグニウマ

ヨナグニウマ(与那国馬)は、日本在来馬8種のうちの一つで、与那国町の天然記念物に指定されています。
日本の在来馬は、モンゴル高原を起源とし、古墳時代以降、朝鮮半島を経由して伝来したと考えられています。
琉球王国時代には、琉球馬が明(中国)への進貢品として献上されていた記録もあります。

ヨナグニウマは、体高110〜120cmほどの小型の馬ですが、かつては運搬や農耕にも使われていたため、足腰が丈夫で、蹄も非常に強く、蹄鉄を必要としません。
毛色は、全身が茶色の「鹿毛(かげ)」のみで、背中には「鰻線(まんせん)」と呼ばれる濃い色の筋が、たてがみからしっぽにかけて一本通っています。

東崎(あがりさき)

島内ではヨナグニウマが放牧されており、のどかな風景が広がっています。
なかでも東崎(あがりざき)では、多くのヨナグニウマを間近で見ることができます。

東崎

断崖絶壁の牧草地で、ヨナグニウマがのんびり草をはむ。

住所
与那国町与那国
TEL
0980-87-2402

詳細ページを見る

海馬遊び

ちまんま広場では、小柄で穏やかなヨナグニウマとふれあいながら、乗馬や海遊び、手入れ体験など、豊富なプログラムを楽しむことができます。これぞ与那国島の「ばちぬらん」体験です。

今回は「海馬(うみうま)遊び」を体験しました。
一緒に遊んでくれたのは、ヨナグニウマの「シャナ」くんです。
まずはシャナくんと一緒に海へ入り、やさしくブラシをかけながら、少しずつ仲良くなるところからスタートしました。

シャナくんと仲良くなったあとは、ゆっくりと騎乗します。
とてもおとなしいので、まったく不安はありませんでした。
そのまま海岸線を、ゆっくりと約200メートル進んでいきます。

さらに慣れてくると、こんなことまでできるようになります。
シャナくんのしっぽにつかまり、海の中を引っ張ってもらうこともできるんです。
シャナくんとのツーショット写真も撮影でき、最後には東盛さんも一緒に記念撮影をしました。

ちまんま広場

日本最西端の与那国島で在来馬ヨナグニウマと遊べる牧場

与那国語で、与那国馬のことを島の馬「ちま(島)んま(馬)」といいます。
たくさんの方にヨナグニウマの存在を知ってもらいたい、日本の果てまでヨナグニウマに会いに来てくれる方の気持ちに応えたい。ヨナグニウマたちが今後も人々から愛され続けますように。皆様のお越しを心よりお待ちしております!
■住所:八重山郡与那国町字与那国4022-1
■連絡先:090-4470-4792
■メールアドレス:chimanmahiroba.4792@gmail.com

公式ホームページ

与那国発の地域発信型映画『かでぃんま』~与那国に生きる父子と馬を描く~

『かでぃんま』は、沖縄県の「フィルムツーリズム推進事業」の一環で、地元の魅力を発信する「地域発信型映画」の企画募集で選ばれた作品。東盛あいか監督が、故郷である日本最西端の地・沖縄県与那国町を舞台に映画を撮るのは、ぴあフィルムフェスティバル2021でグランプリを受賞した『ばちらぬん』に続き2作目です。

【ストーリー】
亡き妻・カヨの故郷である与那国で与那国馬を育てるタケシと、それを手伝う息子の潤寧(じゅんねい)。父のように馬と意思疎通ができないことに悩む潤寧が、あるできごとをきっかけに、幼いころに亡くなった母・カヨの温もりに触れ、成長していく物語です。与那国の言葉や文化を織り交ぜながら、与那国に生きる父子と馬の姿が優しくあたたかな視点で描かれています。

東盛あいかさん/俳優・映画監督・与那国語ラッパー

『かでぃんま』は、私にとって2作目の映画で、登場するヨナグニウマの1頭はシャナくんなんですよ。
この作品では、与那国の言葉や文化を織り交ぜながら、与那国に暮らす父と子、そして馬との姿を丁寧に描いています。
この記事や映画を通して、少しでも与那国島に興味を持っていただけたら嬉しいです。ぜひ、実際に島を訪れてみてください!

東盛あいかさん/俳優・映画監督・与那国語ラッパー

おすすめ③与那国島の絶景

与那国島は、その独特な地質構造とそれに由来するダイナミックな地形が融合した、地学的にも魅力にあふれる島です。
その独特な地形から力強くて神秘的な風景が多く、大自然のエネルギーを肌で感じることが出来ます。

ティンダバナ

ティンダバナは与那国村祖納(よなぐにそん・そない)集落南西にある標高100mの切り立った断崖で、頂上近くにある大きな浸食洞が展望台の役目を果たしています。祖納集落や東シナ海の眺望はもちろんのこと、月の出を最も美しく眺めることができます。岩陰には豊富な湧き水が出る泉があり、神聖な水として島の祭事に使われます。

クブラバリを含む海岸一帯(クブラフリシ)

クブラバリは、与那国島・久部良港の東側高台に位置する岩礁の裂け目で、「バリ」とは割れ目を意味します。割れ目の幅はおよそ3メートル、深さは約7メートルにもおよびます。一帯は海岸近くの景勝地として知られていますが、そこには悲しい伝承が残されています。
かつて王府時代、人頭税(にんとうぜい)という、島の住民数に応じて課される過酷な税制度がありました。島の人々はその重い負担に苦しみ、人口を増やさないようにするため、妊婦にこの断崖を飛び越えさせたと伝えられています。失敗すれば転落、たとえ飛び越えても流産してしまうという、あまりにも過酷な試練でした。
人頭税が廃止されたのは明治36年(1903年)、すでに20世紀に入ってからのことです。現在、クブラバリは沖縄県の指定名勝となっており、悲しみの歴史を伝える場所として訪れる人も少なくありません。

クブラバリの先に広がる海岸一帯は「クブラフリシ」と呼ばれています。この地域は、主に砂岩から成る八重山層群の上に、堅い琉球石灰岩から成る琉球層群が重なる地質構造をしています。
波による長年の浸食によって、岩に凹部が形成され、緑色や紫褐色を帯びた砂岩の急崖が続く独特の景観が生まれました。その風景は、まるで物語の中に入り込んだかのような、どこか幻想的な雰囲気を漂わせています。

六畳ビーチ・軍艦岩・立神岩・ナーマ浜・トゥイシ

まだまだ与那国島の絶景スポットはあります。
・六畳ビーチ(写真1・2枚目):断崖絶壁から見下ろす海が美しい浜※潮の流れが速いため遊泳禁止
・軍艦岩(写真3枚目):大きな軍艦のような形でそびえる岩
・立神岩(写真4枚目):島の南東部の海岸にそびえ立つ岩は、与那国島のシンボル
・トゥイシ(写真5枚目):ココが正真正銘の日本の最西端
・ナーマ浜(写真6枚目):日本最西端のビーチ

東盛あいかさん/俳優・映画監督・与那国語ラッパー

与那国島の「ばちらぬん」、いかがでしたか?
「ばちらぬん」とは、与那国語で「忘れない」という意味です。
ここでは、私が心に抱く与那国島の「ばちらぬん」~いつまでも残したい風景や文化をご紹介しました。
ぜひ、皆さんにも与那国島を訪れて、「ばちらぬんな体験」~忘れられない体験をしていただければと思います。

東盛あいかさん/俳優・映画監督・与那国語ラッパー

| model course |紹介スポットも回れる、とっておきの旅プラン

与那国島で、ばちらぬん(忘れられない)体験をする2泊3日

海と風と歴史が息づく与那国島

日本でいちばん西にある島。東シナ海に浮かぶこの地では、どこまでも続く海、豊かな自然、そして島の人々の温かな笑顔が、あなたを迎えてくれます。訪れるすべての方にとって与那国島が“忘れられない特別な場所=ばちらぬん”となるはず。与那国島で、あなただけの物語を見つける2泊3日の旅。

詳しくはこちら

| comment |一般社団法人与那国町観光協会からのメッセージ

一般社団法人 与那国町観光協会

ようこそ、海と風と歴史が息づく与那国島へ。
ここは、日本でいちばん西にある島。東シナ海に浮かぶこの地では、どこまでも続く海、豊かな自然、そして島の人々の温かな笑顔が、あなたを迎えてくれます。私たち観光協会は、訪れるすべての方にとって与那国島が“忘れられない特別な場所=ばちらぬん”となるよう、心を込めて旅のお手伝いをいたします。与那国島で、あなただけの物語を見つけに来ませんか?

住所
八重山郡与那国町字与那国437-17
TEL
0980-87-2402

公式ホームページ

| 編集後記 |おきなわ物語編集部

「与那国の海」は、世界でも数少ないハンマーヘッドシャーク(シュモクザメ)に遭遇できる海として知られ、世界中のダイバーの憧れの地となっています。
しかし今回の取材では、「与那国の陸」の素晴らしさも存分に体感することができました。

ダイナミックな風景は、与那国島ならではの地形・地質・気象が織りなすもの。
遠く離れた離島だからこそ色濃く残る文化や風習。
日本在来馬・ヨナグニウマと、それを守ろうと尽力する人々の姿。
なんと夜22時過ぎまで運行する無料バスや、島で採れた新鮮な野菜や魚介をふんだんに使った居酒屋の美味しさにも驚かされました。

文字数の関係でご紹介しきれないのが惜しいほど、陸の魅力も満載の与那国島。
“ダイバーの聖地”だけにしておくのは、もったいない――
ぜひこの夏、「陸の与那国」も体験してみてはいかがでしょうか。

【ピックアップ】連載・おきなわ41物語/沖縄にはまだ知られていない魅力いっぱい

連載・おきなわ41物語

沖縄にはまだ知られていない魅力いっぱい

41、それは沖縄県にある市町村の数です。おきなわ「41」物語では、41市町村のイマの魅力をひとつずつ独自取材。
地元民がおすすめする地域ならではの魅力や是非訪れてほしい穴場スポット、寄り道グルメなど、新しいローカル旅の目的地を紹介してまいります。
41の物語とともに、新しい沖縄を再発見してみませんか?

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