沖縄で海を守る旅|ビーチクリーン&アップサイクル体験
- 掲載日:
- 2025.07.21
美しい沖縄の海と、海ごみという現実
エメラルドグリーンや青に輝く海、白い砂浜。
そのすぐそばに落ちていたのは、ペットボトルや空き缶。
美しい風景の中にひっそりと混じる「海ごみ」に、気づいたことがありますか?
今回は「おきなわ物語」ライターが、沖縄の人気観光スポット・古宇利島で、ビーチクリーンとアップサイクル体験に参加してきました。
沖縄でビーチクリーン体験!ごみの多くは海でポイ捨てされたものではない!?
今回ご協力頂いたのは、古宇利島にある「海洋プラスチックアート FACTORY & SHOP TRUE BLUE OKINAWA」(以下 「TRUE BLUE」)。こちらは、海で回収した海洋プラスチックごみを素材に、アクセサリー作りやキーホルダー作り、ランプシェード作りなどの体験ができる工房です。
今回はその「TRUE BLUE」代表・玉村さんにご協力頂き、ビーチクリーン体験とアップサイクル体験をしてきました。
古宇利島の輝く海のそばに、ぽつぽつと落ちているごみたち。玉村さんによると、ごみで一番多いのはペットボトルとのこと。この日、多く見つけられたのは、やはりペットボトル、次いで缶類、プラスチックの破片、ビニール袋でした。
中には、中身が入ったままのペットボトルや未開封の缶詰、殺虫剤のスプレー缶なども。 漁業で使われるブイ(浮き)が流れ着いていたのも印象的でした。風に吹き飛ばされてしまった漁具(網やブイ)が流れ着いてくるそう。
一見、海とは関係なさそうな道端のごみ。
でも、それが風で飛ばされ、川へ流れ込み、やがてはこんなふうに美しい海にたどり着いてしまう。これまでの「落ちているごみ」に対する見方が、がらりと変わったように感じました。
今日はゴミがとても少ない方なんですよ。夏は観光客の方がたくさんいらっしゃるので、自治体や地域のボランティアの方々がビーチを綺麗に保ってくれているんです。
「TRUE BLUE」 代表 玉村めぐみさん
玉村さんの仰る通り、この日は30分ほどの作業でほとんどのゴミが拾えました。照りつける日差しの下、たった30分の作業でも汗だくに。UVケアの服を着ていても、肌がジリジリと焼けるような暑さでした。私たちが見ている美しい海は、地域の方々による清掃活動のおかげで守られていることを知りました。
海で回収したごみを洗浄・分別・粉砕
ビーチクリーンの後は、「TRUE BLUE」にお邪魔してきました。こちらでは、作品に使う海洋プラスチックをすべて、スタッフ自身がビーチクリーンで回収しているそうです。
今回は特別に、回収した素材をアップサイクル(捨てられるはずだったものに新たな価値をつけて、別の製品に生まれ変わらせること)に使うため、洗浄・分別・粉砕を行う作業場も見せていただきました。
アップサイクルでは、海洋プラスチックをアイロンで加熱して加工する場合もあります(およそ180〜210℃)。そのため、熱を加えても有害物質が発生しないか、事前に必ず確認しているそうです。
確認の方法としては、粉砕したプラスチック片を水を張ったバケツに入れ、浮かぶものは加熱可能、沈むものは加熱不可と判別します。加熱できない素材も、形や色を活かして、そのままアクセサリーづくりに使われているとのことでした。
海外の寄港地で回収された海洋プラスチックも見せて頂きました。現在は沖縄を拠点に、日本・クロアチア・オーストラリア・カンボジア・パラオの5か国へと活動の場を広げているそうです。 中でも驚きなのは、カンボジアでは海洋プラスチックではなく、 「地雷プラスチック」のアップサイクルに取り組んでいるということ!
「TRUE BLUE」の活動は海外にも広がっており、スタッフが世界一周の船旅に同乗し、船内でワークショップを開催しています。さらに、寄港地ごとにビーチクリーンも実施しているんです。
海外では、まだアップサイクルという概念が広く浸透していないと感じています。だからこそ、将来的には、世界中の海のごみが減り、その代わりに美しい作品が世界中に増えていく――そんな未来を目指しています。
「TRUE BLUE」 代表 玉村めぐみさん
扉の向こうに広がるのは、海ごみと真逆の美しい世界
2階にある工房&SHOPの扉を開けると、先ほどまで見ていた海ごみとはまったく無縁の世界が広がっていました。
思わず小さく「わぁ…」と感嘆の声が漏れてしまうほど。
まず目に飛び込んできたのは、キラキラと輝く大きなシャンデリア。聞けば、捨てられていたペットボトルで作られたそう!
カウンターには色とりどりに分けられた海洋プラスチック片が瓶詰めされて並び、まるで美しいカラーストーンが並ぶ宝石店に入ったかのような気分になりました。
工房の奥にある大きな木枠の窓からは、古宇利島の海がエメラルドグリーンに輝いています。写真では到底伝えきれない、透き通るような美しさが目の前に広がっていました。
工房を訪れる人に「この美しい海を守りたい」と思ってもらえるように、海のそばで活動することにこだわりました。
「TRUE BLUE」 代表 玉村めぐみさん
街中では味わえない特別なロケーション。そんな絶好の場所で、いよいよアップサイクル体験のスタートです。
海洋プラスチックで、キーホルダー作り体験
今回選んだのは、カメの形のキーホルダー作り。
色とりどりの海洋プラスチック片の中から、好きな色や形を自由に選び、型に入れていきます。30秒ほどアイロンの熱でプラスチックをじんわりと溶かし、また空いた部分に新たな素材を加えていく――そんな工程を繰り返します。
静かに流れる心地よいBGMの中、無心になって手を動かすこの時間は、穏やかで優しい気持ちになれるひとときでした。
表と裏で違った色合いや表情を見せてくれる、世界にひとつだけのキーホルダー。「おきなわ物語」編集部に持ち帰ると、「可愛い!」とみんなに大好評でした。きっと、こんな素敵なキーホルダーを鞄に付けていたら、「それ、可愛いね!どこで買ったの?」と声をかけられることがあるでしょう。
そんな時は、こう答えたい――「実はこれ、海に捨てられていたプラスチックごみから作ったんだよ!」
そこから会話が広がって、海や環境のことを話すきっかけになるかもしれません。
知ってほしい、海で起きていること
キーホルダー作り体験の後は、玉村さんより「海のお話」を聞かせて頂きました。
「2050年には魚よりも海のゴミが多くなる!?」そんなギョッとするようなタイトルのもと、海に関するリアルなお話を聞くことができました。とくに印象的だったのは、一度ごみが海に流れ出すと、その形がなくなるまでに何百年もかかるということ。そして長い年月、海にとどまり続け、ウミガメやクジラといった海の生きものたちの命を脅かしているそうです。
さらに驚いたのは、海ごみのほとんどが私たちの目に見えていないという事実。
浜辺に打ち上げられるのは全体のわずか5%、1%が海中を漂い、なんと94%が海の底に沈んでいるといいます。つまり、私たちが普段目にするごみは“ほんの一部”に過ぎないのです。
玉村さんは、「海のごみ問題は、決して他人ごとではないんですよ」と、教えてくれました。
一度海に流れてしまったごみは、何十年、何百年という長い年月、海に残り続けます。
特にプラスチックごみは自然分解されないため、実質的に“永遠に”海に残り続けるとも言われています。それは海の生きものたちを苦しめるだけではありません。
細かく砕けたプラスチック片は、海中を漂い、それを魚が食べ、その魚を私たち人間が口にすることも――。
つまり、私たちが捨てたごみが、巡り巡って自分たちのもとへ返ってくるのです。
「TRUE BLUE」 代表 玉村めぐみさん
私が“海を守る活動”を始めた理由。
元々は静岡県出身という玉村さん。3年ほど前から本格的に “海を守る” 活動をされているとのこと。
「活動を始める前から、沖縄の海が大好きで、10年近く泳ぎに来ていました。それが次第に沖縄の海に違和感を感じるようになりました。 “もっとサンゴがあった気がする、魚が少なくなった気がする。” そんな違和感を感じていた中、4~5年前から海洋プラスチック問題のニュースを見られるようになって、自分の中でリンクするものがあったんです。沖縄の海に救われていた自分、それから自分事として沖縄の海で起きていることを調べました。」
最初は静岡県で、ビーチクリーンなどを通して活動をはじめ、次第に想いを同じくするパートナーと出会い、現在に至るまで活動の輪を広げてこられたそう。
「環境問題というと、難しい、どう関りをもっていいか分からないと思われがちです。そんな眉間にしわを寄せるような難しいことは、きっと伝わらない。可愛い・楽しい・ワクワクすることを通して、興味を持ってもらいたい。まずは興味を持つという一歩を踏み出してみる、それが “海を守る” ということだと考えています。」
「アップサイクル体験や海のお話を通して、海ごみに対する価値観が変わると思います。実際に体験された方からは、
『沖縄旅行から帰ったあと、子どもが「カメさんがゴミを飲み込んだら大変!」と言って、道端のごみを拾うようになったんです』
という嬉しいメッセージもいただきました。
“海を守る”ということは、決してハードルの高い行動ではありません。私は、1人が100歩進むよりも、100人がそれぞれ1歩踏み出すことのほうが大切だと思っています。今まで全く興味のなかった人に、ほんの少しでも興味を持ってもらえたら、気軽に参加してもらえたら嬉しいです!」
旅の後に残るもの。
「ビーチクリーン、やってみたいけど、イベントに参加するのはちょっとハードルが高くて……」
そう感じている方は、きっと少なくないのではないでしょうか。実は、筆者もその一人でした。
でも今回の体験を通して、たとえビーチでの清掃活動までは踏み出せなくても、道ばたに落ちているごみを一つ拾うだけでも、美しい海を守ることにつながるのだと気づかされました。
ひとりひとりの「ちょっと良いこと」が、世界中の海への大きなギフトになるかもしれません。
ウミガメのキーホルダーという、世界にひとつだけの素敵なお土産はもちろんのこと。
今回の体験では、それ以上に目には見えない、たくさんの“大切なもの”を持ち帰ることができた気がしています。
今回ご協力いただいた工房&ショップはこちら
海洋プラスチックアートFACTORY&SHOP TRUE BLUE OKINAWA
絶景の古宇利ブルーを眺めながら、海洋プラスチックごみを宝物に変える体験を♪
雨の日だって楽しめます!
- 住所
- 国頭郡今帰仁村古宇利385
- TEL
- 080-4810-7460







































































































実は海ごみのほとんどは、海で“ポイ捨て”されたものではなく、漂流して流れ着いたごみなんです。
多くは、街中で発生したごみなんですよ。
道路に捨てられたごみが、風の強い日に吹き飛ばされて、川をつたい、やがて海に流れついてしまうんです。
「TRUE BLUE」 代表 玉村めぐみさん