観光客のみなさまへ 現在、沖縄本島地域は少雨傾向にあり、ダム貯水率が低下し続けています。節水へのご協力をお願いいたします。

鮮やかな野菜や果物。瑞々しい海産物。美しい色合いの精肉。自然豊かな沖縄は「食材の宝庫」として有名です。 ここでは生産者やシェフなど、沖縄の食に携わるプロフェッショナルをとおして沖縄が育んだ地元食材の魅力について迫ります。

一歩ずつ誠実に、
未来に誇れる
糸満産にんじんを
作っていきたい

「美らキャロット」 生産農家

安谷屋 健治さん

糸満市出身。父親亡き後、後継者として母親の下でニンジン作りについて学ぶ。リーダシップを生かしながら、糸満市「うまんちゅ市場」生産者会副会長を務める。

父親が育てた畑をとおして、
継承の大切さを実感

にんじんの里と称される糸満市喜屋武地区で、約4000坪の畑を有する安谷屋さんは、にんじん農家の2代目です。失敗を繰り返しながら作り上げた『美らキャロット』は、県内の品評会にて県知事賞を受賞。「すべてはこの土のおかげ。親父が残した畑は一番の財産だね。」市の式典やイベントにも積極的に参加し、PR活動にも大忙しです。

※「美らキャロット」は、糸満市で生産されるにんじんの総称。沖縄県から「にんじん拠点産地」として認定。

糸満の自然があってこその
おいしさを、これからも

にんじん農家として忘れもしない記憶は、初めて商品の生産者欄に自分の名前を見た時。嬉しさと共に、責任も感じたそうです。「にんじんってありふれた食材だけど、天気や土壌で味も変わる。奥深いです」。喜屋武地区で良質なにんじんが採れるのは、島尻マージと呼ばれる赤土とミネラル豊富な海風のおかげ。糖度が高くクセがないのが特徴で、おすすめの食べ方は『にんじんしりしり』とのこと。「おいしいって言ってくれるのが一番。もっと頑張ろうと思える」と日に焼けた顔に浮かぶ笑みが印象的でした。

読谷の自然に囲まれた
くつろぎの別荘で
地元食材の
魅力を体感してほしい

ホテル日航アリビラ
日本料理・琉球料理『佐和』料理長

並里 吉明さん

本部町出身。2016年、同ホテルの和食料理長に就任。地元生産企業とのコラボメニュー開発や首里城復興支援メニューなどにも取り組んでいる。

自然の恵みとチームワークで
仕立てる伝統の味

日本料理・琉球料理『佐和』では、先代料理長から受け継いだ伝統を守りながら、その時期にとれる地のものを合わせた料理を提供しています。食材が組み合わさることでさらなるおいしさが生まれるとのこと。「作り手も同じです。腕が良くてもスタッフの連携が取れないと“不調和”が料理に表れます。」穏やかに語る並里料理長は“チーム佐和”のリーダーとしてスタッフから絶大な信頼を寄せられています。

おいしく、美しく、
沖縄に息づく「医食同源」を発信

幼少時代、オジーやオバーが食事の度に口にした「くすいなたん(薬になりました)」という言葉を現代につなげたい。そんな並里料理長の想いを元に作られたのが、県産食材をふんだんに使った『ぬちぐすい御膳』です。「沖縄は食材が豊富。特に食肉は、もとぶ牛や今帰仁アグーなど他地域のブランド肉に引けを取らないものが揃っています。一方で、自然発酵味噌や天然塩など食材本来の味を引き出す調味料の魅力も知っていただきたいです」と話す並里料理長。「沖縄における和食の作り手として、沖縄の食材の魅力を一人でも多くの方々に伝えたい」並里料理長が手がける料理には、地元食材に対する真摯な想いがつまっています。

栄養価に優れた
沖縄生まれの雑穀を
もっと身近に

沖縄雑穀生産者組合 組合長

中曽根 直子さん

島野菜とオーガニックワインを楽しめるレストラン『浮島ガーデン(2023年現在休業中)』を営む傍ら、在来雑穀の種の保存と生産量を上げたいと、沖縄雑穀生産者組合を発足し、同組合の組合長も務める。

かつて沖縄の長寿を守っていた雑穀

もちきびやタカキビなど、沖縄生まれの雑穀があるのをご存知でしょうか。沖縄でも少しずつ雑穀の栽培が増えており、場所によってはお土産屋さんでも小さくパッケージされたものを見ることができます。「かつて沖縄には雑穀畑がたくさんあったのに、戦後は栽培する農家さんがとても減ってしまって。でも、沖縄の雑穀は本当においしく、栄養価も優れていて、絶やしてはいけないと思ったんです。だから在来の種を探して農家の方に栽培をお願いして回りました」。

こう話すのは那覇の島野菜レストラン『浮島ガーデン』のオーナー、中曽根直子さんだ。そこから中曽根さんは生産量を保て、共同で作業できる脱穀機を購入するために沖縄雑穀生産者組合を立ち上げました。
こうした活動から少しずつ雑穀の生産量が増え、雑穀を使った新しい料理や加工品が生まれるなど、地元の人も観光客も食べられる機会に恵まれるようになってきました。沖縄で静かなブームになっている雑穀。おいしくてヘルシーな情報に敏感な旅行者には、沖縄で今何よりも味わってほしい味です。

自由なスタイルから生まれた
唯一無二のおもてなし料理

よっちゃん亭

とけし ひろしさん

7年ほど那覇市でフレンチの店を経営後、移動型のビストロ『よっちゃん亭』として出張料理を行う。また、那覇市安里で予約制のお店『cuisine よっちゃん亭』も運営、旬の県産食材を使ったおまかせコースを提供。

沖縄素材のコース料理を好きな場所で

レストランに行かなくても、宿泊先の部屋で沖縄素材をたっぷり使ったコース料理が味わえるのは、なんとも贅沢なもの。よっちゃんの愛称で知られる、とけしひろしさんが出張料理人となってオリジナル料理を提供する、移動型のビストロ『よっちゃん亭』なら、まさにそれが叶います。もともと那覇で7年ほどフレンチのお店を経営していたとけしさん。「お店という形態にとらわれず、新しいことをしたかった」と、今の移動型のスタイルに行き着きました。

素材の良さを十分に引き出し、
食べる人が喜ぶ料理を作ること

そんなとけしさんの代名詞ともいえる料理が「野菜のテリーヌ」。できるだけ自身が生まれ育ったやんばる産の野菜を使い、味付けはシンプルに野菜の煮汁と塩、そして県産のきび糖だけ。それなのに、野菜にこれほどの旨味があるのかと、一口食べるだけで誰もがきっと驚いてしまうおいしさなのです。ただこの一皿も固定メニューではなく、お客様の好きなもの、アレルギー、誰と食べるかなど、事前にヒヤリングし、その人に合った唯一無二のメニューを作るのがよっちゃん流。

「人が喜ぶ料理を想像し提供する」。料理をする上でとても大切なことを、誰よりも体現している料理人ではないでしょうか。旅先でいただく食事としてこれほど贅沢なものはありません。

沖縄の四季を感じる
本格フレンチを

petite rue

新屋 健一さん

那覇市牧志公設市場近くの路地裏に店を構え、カジュアルなビストロスタイルを11年続けた後、2018年10月、那覇市松尾の大通りへ移転し、レストランに形態へ。前菜からデザートまで、旬の沖縄食材のフルコースを提供している。

沖縄食材でいただく本格フレンチ

「地元の方がよく県外のお客様を連れて来てくださるんです」。そう語るのは、フレンチレストラン『petite rue(プチット リュ)』のオーナー 新屋健一さん。フレンチを通して沖縄食材の魅力を伝えたい。その想いから、扱う食材はすべて県産のものにこだわり、どんな沖縄食材も見事に本格フレンチへと昇華させる実力派シェフです。那覇の公設市場近くで11年、地元の人に愛されるビストロを営んできました。

沖縄ならではの四季を
料理で感じてほしい

しかし2018年10月から場所を開南せせらぎ通りに移し、ビストロから落ち着いたレストランに形態を変えました。これまで定番メニューを通年提供してきましたが、新しい店舗は季節で変わるコース料理のみ。「年中暖かい気候の沖縄で、どれだけ料理に季節感を出せるのか追求していきたい」と新屋さん。10〜11月でも夏のような気候だけれど、やんばる産キノコのテリーヌや、温かみのある島かぼちゃのソースなど、沖縄の小さな秋を感じる新屋さんの料理。気温が下がる12月以降は、島大根や田芋などの根菜がおいしくなるのでグラタンを作ってみたいと話します。

沖縄には四季がないとよく言われますが、ここには確かに感じる沖縄の春夏秋冬があり、沖縄に訪れる度に行きたくなる場所です。

沖縄に根付く
伝統的な琉球料理を伝えたい

松本料理学院 院長

松本 嘉代子さん

1969年に松本料理学院を開校。「家庭で食べた味は記憶として残ります。味を知って作れるようになってほしい」と、学院長として現在も講師を務める傍ら、沖縄の長寿を支えてきた食文化である琉球料理を次世代に残すための活動に精力的に取り組んでいる。

沖縄独自の食文化「琉球料理」とは。

琉球料理とは島野菜など沖縄らしい食材を使い、独特な調理法でつくられるもの。そこには文化や風習が反映されており、古くから受け継がれてきた料理です。「こうした伝統的な琉球料理は、知れば知るほど理にかなっていて興味深い」と話すのは、松本料理学院 院長の松本嘉代子さん。たとえばソーキ汁は、豚のアバラ骨がタンパク源、昆布はミネラル、大根や冬瓜はビタミンと、具材がたった3種類しか入っていないのに見事な栄養バランスです。そのほか、島豆腐を中心に季節の野菜を炒め合わせたチャンプルーも、それほど食材が豊かでなかった時代でも、効果的にバランスよく栄養を摂取できる一品として重宝されていました。「琉球料理は先人が残してくれた大切な食文化ですよね」と松本さんは話します。

琉球料理ならではの
だし、魅力的な食材、そして調理法。

「琉球料理の魅力はいくつかありますが、まずは味」と松本さん。「『アジクーター(濃厚な味)』という方言がありますが、これはだしがしっかりと効いている味わいのことです」。豚だし、かつおだしをきちんと取り、食材と混ざり合って深い味わいを生みだす琉球料理。だからこそ、塩などの調味料はほんの少しで味が決まるので、塩分摂取量も控えめになり健康的だと言います。また、食材そのものにも魅力を感じる、と松本さん。

「沖縄で育つ野菜はとても個性的。強い太陽の日差しに負けないようポリフェノールが多く、野菜自体の抗酸化力が強い。その最たるものがハンダマです。表が緑、裏が赤紫色をしたハンダマはタンパク質やビタミンAに富む、貴重な夏の葉野菜です」。沖縄の野菜はクセが強いものもありますが、栄養価が豊富なのです。

「『土産土法』という考え方がありますが、これはその土地でとれたものをその土地の料理法で食べることが、一番体にやさしいという考え方。琉球料理には島豆腐と野菜を炒め合わせるチャンプルーや、昆布、かんぴょうなどの乾物を水でもどしてだしを入れながらじっくりと炒め煮するイリチー、ナーベーラー(へちま)やゴーヤーなどを味噌煮するンブシー、食材をさっと炒めるタシヤーなど、その土地でとれた食材をおいしくいただくための調理法がたくさんあります」。こうした伝統的な沖縄の食文化が、長寿県だったこれまでの沖縄の人々の暮らしを支えてきたのです。

県外の人に体験してもらいたい
沖縄の食文化

日本の中においては異文化ともいえる沖縄独自の食文化を、県内外に知ってもらいたいと、料理講師として活動している松本さんは語ります。しかし、ただ表面的でにわかにつくられた琉球料理では、観光客のみなさんにとっても魅力を感じないのではないか、とも考えています。「わざわざ沖縄を訪れるお客様にはその土地に根付いている生活そのものを知っていただきたいし、地元の人々が普段食べている日常食を提供することによって沖縄らしい充実した『うとぅいむち(おもてなし)』ができると思います」。

沖縄は郷土料理のレシピがたくさん残されているのに、うまく活用できていない現状があると感じている松本さん。「県外の人に沖縄旅行を通して体験してもらい、知ってもらうためにも、沖縄県民がその食文化、暮らしを改めて見直すことが大切だと思います」。ウチナーンチュ(沖縄の人)にも県外の人たちにも、沖縄の食文化に触れる機会を松本さんは料理教室を通してこれからも増やしていきます。

沖縄だからこそ体験できる
食の喜びを

名前のない料理店

小島 圭史さん

出張料理専門のフレンチシェフ。出向いた先で季節の食材を使ったフレンチのフルコースを提供する。食材選びは自ら農家や漁師を訪ね、料理をいただくゲストへ生産者の想いを伝えることも大切にしている。2020年、うるま市に予約制のお店『Mauvaise herbe(モヴェズエルヴ)』をオープン。

旅行者が求める食の魅力、
沖縄だからできることとは

「旅で沖縄を訪れる人に、東京と同じような料理を作ったり、どこの食材かわからないものを提供したりしても意味がない。なにより、それでは『この土地に来た!』という喜びは得られません」。そう話すのは、地元の食材を使ったフレンチのフルコースを提供する出張料理人として県内で活動する小島圭史さん。わざわざ沖縄に来た甲斐があったと感じてもらえる料理を、地元の食材を使って独自に生み出していくことが大切だと話します。

また、一料理人として、沖縄の食の魅力を、旅行で訪れる人たちに100%お伝えできているか、ということには、少し疑問を感じていると話す小島さん。仕事柄、県外に行くことも多く、旅先でその土地のことを深く考え、生産者とも深く関わりを持ちながら形にしている料理人たちに出会うと、「食の地方創生」の必要性をとても感じるそう。「僕は出張料理で沖縄の食材のみでフレンチのフルコースをつくるということをやっていますが、できれば調味料も含めそれを実践していきたいと考えています。自分も含めてですが、『沖縄だからできること』というのは、まだまだたくさんあるはずです」。小島さんはそう話します。

沖縄の食材でフレンチ料理をつくる
大変さとおもしろさ

「良い食材というのは世の中に溢れていて、世界中から食材を集めて一皿作ろうと思えばいくらでもできてしまいます。ただ、それでは沖縄でやる意味とは?という疑問が生まれます。沖縄の食材に興味を持ったというよりは、料理人としてこの土地で何をしたらよいかということを考えて、食材を探しはじめました」と小島さん。知らなかったもの、どう調理していいかすぐにはわからなかったものも中にはあり、また今でも難しいと思う食材はあるそう。けれどそれも裏を返せばその個性が、沖縄の食材のおもしろさであり沖縄らしさ。

「沖縄に住む料理人として扱うべき食材だ」と話します。「個性的な食材に向き合うと、どう調理しようかと試行錯誤し、いままで思いつかなかったアイデアが生まれる、そこがおもしろいですね」。難しい沖縄の食材と出会い、メニューや調理法を考えることは、小島さんにとっては毎回、大変だけれど好奇心を掻き立てられるワクワクする挑戦でもあるのです。

料理人として考える 沖縄の食の可能性

「フランス料理で使われる食材と沖縄の食材では異なるものが多い。昔勉強したものを、今沖縄で、この土地の食材に置き換えて組み立てようとしても無理があります。だから、沖縄の食材にあった調理法と料理を考えなければならない。それはまさしく、生み出すことだと思います」と小島さん。
「沖縄だからできる」という食の可能性は確かにあると感じつつも、一方で、料理にかかわる全ての人が地域の食や文化に対してもっと意識を高めなければその可能性は途絶えてしまう、という危機感も抱いていると言います。

「食材はたまたまそこにあるのではありません。農家や漁師、畜産家といった想いを持って生産してくれている人がいて、その方たちに出会って教えてもらい、食材の魅力に気づかされる。自分で探さなければ気がつかないまま通り過ぎてしまっていたかもしれません。一皿を生み出す行為は、料理人一人でできません。外の世界にも目を向けながら、地元の生産者の声にも耳を傾けると、そして東京に負けないくらいの知恵や技術も必要になってきます。こうしたことを持続的に取り組んでいけば、それが伝統となり文化となります。それがまた新しい沖縄の食の魅力のひとつになっていくのではないでしょうか」。小島さんの新たな沖縄料理への情熱は、まだまだ尽きることはありません。

体が求める
地元の「旬」の食材

カフェ「波羅蜜」料理担当

根本 きこさん

フードコーディネーターとして活躍し、レシピ集やエッセイなど著書も多数。2018年春に今帰仁村ののどかな集落に『波羅蜜(パラミツ)』をオープン。地元食材の個性をいかしたメニューが並ぶワンプレートランチは、旅で訪れる人はもちろん、ご近所さんにも大人気。

暮らして体感した
沖縄の食の豊かさと魅力

若い頃にバックパックで東南アジアなどを回っていたという、カフェ『波羅蜜』の料理を担当する根本きこさん。パパイヤが道端になっていたり、マンゴーの木があったり、根本さんがときめくそんな風景は、ここ沖縄にも共通する空気感なのだそう。食べられるものが身近に実っているというのは、すごく豊かだと感じると話します。
沖縄本島の「やんばる」に移住して最初の頃は、沖縄食材しか使わないぞ!という目標を自分に課していたと根本さん。でもこれがなかなか一筋縄ではいかなかったそう。

「もともとやちむんなどは好きだったんですが、それまでは豆腐ようとかマンゴーとか、いわゆるお土産でもらえるようなものしか手に取ったことがなかったんです。例えばナーベーラー(へちま)なんて、食堂で食べる機会はあっても、旅行で来て買うことはなかなかないですよね。だから、皮の剥き方ひとつ、おいしさや良さもいまいちわからなかったんです」。沖縄の農産物は“野性味”が強く、植物の生命力の強さを感じながらも、その個性の強さに、自分が負けていたのかも、と感じた根本さん。「でもある日、『すごくおいしい!』と感じて。多分、体が土地に馴染んだのだと思います」。それからは、沖縄の食材を使った料理のアイデアがぐんと広がったと言います。

旅行者に体験してほしいこと、
沖縄の食を通して伝えたいこと

『波羅蜜』には、地元の人だけでなく旅の途中の観光客の姿もあり、店内の広いテーブルでは、そんなお客さん同士が相席になり、一緒に食卓を囲むことも。根本さんのお気に入りの風景です。食材はなるべく地元のものを使い、時には珍しい素材もアクセントとして楽しんでもらいたいと話す根本さん。よく買い物をする直売所では、農家の方に直接食べ方を聞いて教えてもらって実践すると理にかなっていると感じ、そこからつながって、あたらしい食材に出合うこともあると言います。

やんばるには、この土地に根ざした食材を扱うレストランや定食屋さんがあり、そういうところに行けば、旬の野菜や果物に実際に触れて、そして調理したものをいただくことができます。ビフォア・アフターがわかると、より沖縄食材の魅力やおもしろさを身近に感じることができるのだと、根本さんは話します。
沖縄の食材は旬がないように思われがちですが、「ちゃんと旬があります」と根本さん。「夏場はゴーヤーやモウイ(赤毛瓜)など瓜類が多く、暑い時期を過ぎると葉野菜類がめきめき育って、青切りみかんが出回ります。県外のみかんに比べると味は薄く、それほど甘くはありませんが、暑い夏を乗り切った体にはあの酸味が大事で、体に必要な栄養分がつまっているんだなと感じます」。沖縄の食材は旬を逃すとなかなか手に入らない。そういうところも魅力なのだそう。

沖縄は、新しい食のチャレンジできる場所

昔ながらのものを栽培する農家さんもいれば、コーヒーやチョコレートカカオ、胡椒、バニラなど、熱帯で生産される作物に積極的に取り組む生産者の方も増えている沖縄。根本さんの知り合いの生産者のみなさんも好奇心旺盛でとても熱心なのだそう。また、ブラジルや南米への移民も多い沖縄では、そんな歴史的な背景も含めて食に多様性があることに驚くと話します。

「カフェのメニューでタピオカ(キャッサバ芋)フライを出したところ、地元のおばあちゃんが『小さい頃によく食べてた、なつかしい』と喜んでくれて。私はハワイのイメージがあったんですけど、ブラジルでも食べられているし、やんばるではキャッサバ芋を伝統的に食す文化もあったんです。そういうしなやかさというか、いろんな国の食材もゆるやかに受け止めて、その土地になじませる。温暖な気候も含めて、新しいことにチャレンジができるのが沖縄なんだなと思います」。根本さんの料理を通して、沖縄食材の可能性はもっと広がっていきそうです。

大宜味の山の上で育まれた
タフで元気な野菜たち

L LOTA

赤坂 望さん

名護市の屋我地島にあるBistro Cafe『tutan(トゥタン)』料理人。過去にLLOTAにて料理を担当。東京・銀座の有名店で腕を磨いた後、沖縄へ。沖縄県産の野菜や魚など季節の素材が持つ魅力を最大限に引き出す一皿を作る。

生産者

奈良 幹さん

大宜味村の約4,000坪の広大な畑で、無農薬、化学肥料不使用にこだわって野菜やスパイスの栽培を行う。

生産者から直接届く
シェフをワクワクさせる野菜たち

遠くには緑豊かな山並みが連なり、鳥がのどかにさえずる大宜味村の奥深く。隠れ里のようなこの場所に、約4,000坪もの大きな畑が広がっています。この地で農業を始めて9年目、農家の奈良幹さんは、無農薬・化学肥料不使用にこだわり、試行錯誤を繰り返しなら、約40種類もの多品目の野菜をそれぞれ少量ずつ育てています。古宇利島のレストラン『L LOTA』では、奈良さんに特定の品種をオーダーするのではなく、その時に畑で採れた野菜をおまかせで調達。

「奈良さんの野菜は味が濃いんです。他ではあまり見ないような珍しい品種もたくさん作ってくれるので、何が来るか毎日ワクワクします」と話すのは、奈良さんの野菜に全幅の信頼を寄せているシェフの赤坂望さん。お店ではお客さんから「この野菜は何ですか?」と聞かれることもあり、野菜をきっかけにコミュニケーションも広がることもあると言います。

さまざまな調理法で
野菜の魅力を引き出すサラダ

そんな奈良さんの野菜の魅力を存分に味わえるのが『LLOTA』。朝、昼、夜と、地元で取れた食材を使った創作フレンチがいただけますが、中でもイチオシが「農園サラダ」。一皿に約20種類、レタスだけでも3種類もの野菜が使われています。つんだばかりのエディブルフラワーや色味の異なる人参、鮮やかな緑のモロッコインゲン、赤カブなどが彩りよく盛られ、お皿はキャンパス、野菜は絵の具のごとし。

これだけたくさんの量の野菜を食べるのは大変では?と思うなかれ。生であったり、茹でられていたり、ローストされていたりと、それぞれ野菜の味付けや調理法が異なるので、一口一口を楽しみながら、あっという間に完食できます。そこに旬の野菜スープと焼き立てのパンを添えれば、完全食の出来上がり。大きな窓の外を見渡せば、眼下には古宇利大橋と海。そして目の前には美しい料理。とても贅沢な時間を過ごせます。

野菜天国ギノザでの
新しいチャレンジ

Coffee & Break Ginoza Farm Lab

石井 雄一郎さん

京都府出身。北谷町にある『炭火焼 月と器』オーナー。2014年に食の蚤の市「OKINAWA FOOD FREA」をスタートさせ、県内を代表するフードイベントに。

ぴりなファーム

林 真弘さん

東京出身。イベント関係の仕事を経て、沖縄へ移住。農業を始めようと、農業研修所のある宜野座にて就農。科学的・論理的な栽培方法でトマトを栽培。

宜野座の野菜の魅力を
味わう、発見するカフェ

『道の駅ぎのざ』にある『GINOZA FARM LAB(ギノザ ファーム ラボ)』。その名の通り、宜野座産の野菜料理が食べられたり加工品を開発したりする、いわば実験場です。実験場と聞くと仰々しい感じがしますが、見た目は完全にセンスの良いカフェ。それもそのはず、ここを作ったのは、北谷の人気店『炭火焼 月と器』やフードフェス「OKINAWA FOOD FLEA」を手掛けてきた石井雄一郎さんなのです。

お店で使われている野菜は、ハンバーガーやサラダに加え、新作「ナポリタンプレート」のジャガイモを練り込んだ麺に至るまで、可能な限り宜野座産を使用。ソースも宜野座産のトマトから作られています。「あえてナポリタンというB級グルメを作ったのは、宜野座の野菜にもっと親しんでほしいから。トマトソースには、市場ではB、C級品と呼ばれてしまうトマトを使っています。形が歪でも味は変わりませんし、用途があれば廃棄しなくてすみます」と、料理の全てが宜野座の野菜を盛り立てるために考えられており、宜野座の野菜に心惹かれた石井さんの強い想いがつまっています。

宜野座の野菜は地域の観光資源!
農家と飲食店もどんどん繋げていきたい

ナポリタンの味の要となるのがクオリティーの高いトマト。それをつくっているのが「ぴりなファーム」です。運営する林さんと石井さんの出会いは約1年前。石井さんが「トマトを買うなら林さんから」とたくさんの方から言われただけあって、林さんのトマトは栄養価と旨味のバランスが抜群。美味しいことはもちろん、抗酸化力は平均の倍以上というから驚きです。これからはお店を拠点にして、林さんのような農家さんと飲食店とをつなげていきたいと語る石井さん。「食は宜野座観光の一つになり得ると感じています。加工品もどんどん作っていきたいですね」と、夢は大きく膨らみます。

掲載日:
2023.12.19
更新日:
2023.12.20

※掲載内容は、掲載日もしくは更新日時点での情報です。最新情報は、ご利用前に各施設などにご確認下さい。

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