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幾何学模様が花のように美しい
継承が続く「読谷山花織」

ETHICAL TRAVEL OKINAWA

沖縄は「工芸の宝庫」と呼ばれ、各地に特色ある織物が点在しています。その中でも読谷村(よみたんそん)で受け継がれる「読谷山花織(ゆんたんざはなうい)」は、独自の技法と人々の祈りが織り込まれた、特別な存在です。

読谷山花織とは

「読谷山花織」は、あらかじめ染めた糸を使い、織る過程で色糸を浮き上がらせて美しい紋様を描き出す「紋織(もんおり)」の一種です。最大の特徴は、布地に浮き上がる色鮮やかな幾何学模様。まるで南国の花々が咲き誇るような布地です。

琉球王朝時代から受け継がれ、約600年の歴史を誇る技法ですが、戦争という悲劇によって一度は絶滅の危機に瀕しました。読谷村は激しい地上戦の地となり、数百年受け継がれてきた技術や貴重な文献も、すべてが灰となってしまったのです。

戦後、「この伝統を絶やしてはならない」と立ち上がったのは、当時の池原村長や、後に人間国宝となる与那嶺貞(よなみね さだ)さんら有志の方々でした。文献が一切残っていない中、村の家々を訪ね歩き、焼け残ったわずかな生地の端切れを集めました。記憶の糸をたぐり寄せるように、模様や技法を一つ一つ解明していく。そんな情熱のもと、「読谷山花織」は現代に復活を遂げたのです。

©沖縄観光コンベンションビューロー

花織の「花」とは模様のこと。そして、布に織り込まれる模様には、深い意味が込められています。

丸いお金をかたどった「ジンバナ(銭花)」は、豊かになりますようにという願いが込められています。
末広がりの扇の形をした「オージバナ(扇花)」は、幸せや繁栄が末永く続きますように。
沖縄で97歳のお祝いの際に配る風車にちなんだ「カジマヤーバナ(風車花)」は、長寿祈願を意味しています。

この三つの花を組み合わせてさまざまな模様を生み出し、大切な人の幸せを想って織られています。

後継者を育成。全工程を一人で担う職人たちが誕生

伝統を継承するため、読谷山花織事業協同組合では後継者育成事業に力を注いでいます。

「読谷山花織」の大きな特徴の一つに、「一人の職人が全工程を担う」という点があります。一般的な織物は分業されていることが多い中、図案の設計から草木による染料作り、糸染め、機織りまで、すべてを一人の織り手が責任を持って行います。

そのため、作業工程の約8割は、織り始める前の準備に費やされます。デザインに合わせて配色を考え、染め上げた何百本もの経糸(たていと)を一本ずつ色を変えながら機(はた)にセットする作業は、緻密な計算と根気を必要とします。一貫して手がけるからこそ、絶妙な配色や複雑な柄の組み合わせも可能となり、完成度の高い美しい織物が生まれるのです。

育成講座を修了した卒業生は、組合員としてそれぞれの生活に合わせたペースで織り手として制作活動を続けます。育児や別の仕事と両立する人も多く、定年制度もありません。現在、90代の現役職人も活躍しており、育児中の女性からベテランまで、多くの人が自分のライフスタイルに合わせた自由な働き方を実現しています。

「読谷山花織」は、現代の暮らしの中でも、しっかりと伝統技術の継承が生活の一部として息づいている工芸なのです。

読谷山花織に出会える、伝統工芸総合センター

座喜味城跡のほど近くにある「読谷村伝統工芸総合センター」は、読谷山花織事業協同組合の拠点として、後継者が学び、織り手たちが糸を染めに訪れる場所です。

一般の来館者も見学が可能で、「読谷山花織」の歴史や技術を紹介するパネル展示や、高度な技が光る帯や着物を鑑賞できるほか、厳しい検査をクリアした証紙付き製品の購入や花織体験もできます。

名刺入れや小物入れ、ストール、コースターなど、日常生活に取り入れやすいアイテムも多く、花織の美しさを身近に楽しめるのも魅力です。

糸を渡し、模様を紡ぐ。職人の心に触れる「花織体験」

ぜひ挑戦していただきたいのが、「コースター作り体験」。現役の織り手さんがマンツーマンで、丁寧に手ほどきをしてくれます。

ベースとなる5色から1色を選び、柄は基本模様の「ジンバナ」「オージバナ」「カジマヤーバナ」から一つ選択。約40〜60分かけて、10cm四方のコースターを1枚織りあげます。(3,300円 税込・要予約)

講師の織り手さんと対話を楽しみながら、手仕事の大変さと奥深さを実感できる体験です。自分の手で一段ずつ織り進めて仕上がった作品には、言葉にできない達成感と想いが宿るはずです。

未来へと織り続けるために

読谷花織事業協同組合は、2026年に設立50周年という大きな節目を迎えます。先人たちが繋いできたバトンを、この先どのようにつないでいくのでしょうか。

理事長の下里直美さんは、「伝統を守るとは、過去の形を維持するだけでなく、今の時代に必要とされるものへと進化させ続けること」と語ります。

「近年の地球温暖化は、着るものにも影響を与えています。『読谷山花織』は裏側に糸が渡っているため、裏地を付けた秋冬用の袷(あわせ)の着物に仕立てます。生地の特徴から、裏地を付けない夏物の単衣(ひとえ)の着物に仕立てることができないのが、現在の課題です。素材を変え、織り方を工夫し、現代の気候やニーズに馴染む花織へと進化することも考えなければなりません」

豊かで美しい文化を未来へとつなぐため、読谷村では今日も幾何学模様に願い込めて、新たな花が織りなされています。

読谷山花織事業協同組合(読谷村伝統工芸総合センター)
  • 住所:沖縄県中頭郡読谷村字座喜味2974-2
  • TEL:098-958-4674

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掲載日:
2023.10.26
更新日:
2023.10.27

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