沖縄の木でつくる世界で一つのマイ箸
ETHICAL TRAVEL OKINAWA
シークヮーサーや芭蕉布が有名で、豊かな自然と糸芭蕉の畑に囲まれた集落、大宜味村喜如嘉(きじょか)。この村で子どもたちの豊かな未来を願う箸職人の鈴木 仁さんは、地元で採れた木を使って箸作り体験を行っています。
沖縄でしか体験できない県産木を使った特別な琉球箸作り体験
箸作り体験が行われるのは廃校を活用した施設「喜如嘉翔学校」。気温が高い日でしたが、緑に囲まれた気持ちの良い風が吹き抜けるテラスで行われました。
まずは、鈴木さんが一本一本荒削りした箸の原型となる木材を選ぶことからスタート。色味の異なるシークヮーサーと寒緋桜の2種類から選ぶことができます。一本ずつ木目が異なり、どれにしようかな?と迷うのも楽しい時間です。
今回作る琉球箸は食い先と呼ばれる箸の先端が四角になっており、持ち手にかけて丸くなっています。食い先を四角く仕上げることで隙間が無く、持ち手が丸いことで親指と人差し指の間が痛くなることがないようにと考えられたデザインだそう。
自分の手に馴染む木材を選んだ後は、鈴木さんお手製の研磨道具を使い、食い先から持ち手の順に削っていきます。安全な道具を使用するため3歳くらいから保護者と一緒に体験ができるそう。削り方のポイントは“食い先を四角く、まっすぐにすること!”とアドバイスを受けながら仕上げていきます。時折、箸にまつわるクイズや冗談を交えながら和やかな雰囲気で箸作り体験は進みます。
形を整え、表面を滑らかにしたら、名入れをしアマニ油(食用油)を軽く塗り、世界に一つだけのマイ箸が完成です。
何度も何度も感触を確かめながら作った箸は、自分の手に驚くほど馴染み早くも次の食事が楽しみ。
制作中、鈴木さんが正しい箸の使い方を見せながら教えてくれるのもこの体験のポイント。握るときに力を入れるべきところや、食い先の合わせ方など意外と知らずにいたことばかりです。
食べることは生きること、箸作りを通して願う子どもたちの未来
鈴木さんは栃木県の農家に生まれました。沖縄に魅了されて、大学進学から沖縄に移住し、様々なお仕事を経験され、現在は箸職人として活動されています。
子どものころから行っていた箸作りを奥様の勧めもあり、55歳から本格的に誰でも使いやすいお箸の試作を開始され、2008年に琉球箸が完成しました。G8環境科学大臣会合で沖縄県公式の贈呈品に採用された功績もあります。
「箸作り体験に使用する木材は今まで破棄されていた剪定木を使わせてもらっており、細かい枝は箸置きにしたりしています。形を見て、この枝はどんなものに生まれ変わるかな?と考える時間も楽しいです。」と、地元農家さんとの関係やエコな観点を持ちながらものづくりを楽しまれているお話しを聞くことが出来ました。
「笑われるかもしれないけどね、僕の箸作りの活動で子どもたちの未来を変えることができるんじゃないかと思っています。自分で作った箸を使い始めると、愛着が湧いてきて、ちゃんと使おうと思うでしょ。そうすると食事は自然と楽しく豊かになるはず。この活動でいつかノーベル平和賞も狙えるんじゃないかなぁ(笑)。僕はそう信じています」
鈴木さんの箸作り体験は、観光客も外国人も誰でも参加することが可能。「英語は話せませんけど、日本語でも伝わるんですよ」と話す鈴木さんのもとには、すでに多くの外国人観光客が箸作りに訪れています。
作った箸は手入れをすれば10年ほど使うことができるといいます。いいものが低価格で手に入る今、使えなくなったら捨てて新しいものを買えばいいと思ってしまいがち。
だからこそ、毎日使う箸からものを大切に使う習慣づけを始めてみてもいいかもしれません。
大切な人との素敵な食事時間を想像しながら、世界に一つだけの箸作り体験を観光の選択肢として選んでみてはいかがですか。