見る旅から、参加する旅へ
民具づくりで知る島への想い
民具づくりで知る島への想い
ETHICAL TRAVEL OKINAWA
沖縄の最北端に位置する細長い形の伊平屋島は、美しい海と緑豊かな山々が特徴で沖縄ではめずらしい稲作が盛んな島です。
そんな伊平屋島で、カゴやトレーといった暮らしの道具からピアスやブレスレットなどのアクセサリーを、島の植物を使ってつくっているのが、民具アトリエ「種水土花(しゅみどか)」。主宰する是枝麻紗美さんにお話を伺いました。
古民家を改装したモダンなギャラリー
伊平屋港から車で3分ほどの我喜屋集落にある民具アトリエ「種水土花」は、古民家を改装した落ち着いた空間。是枝さんの手がけた民具が並べられています。
つくられた民具は、植物がもつ素朴な質感を活かしつつ、カラフルな糸や布をアクセントに取り入れるなど、どこか軽やかでモダン。道具としての使いやすさはもちろん、壁や棚に飾れば、インテリアとしても映えます。
素材を無駄にしない、島のやさしい循環
種水土花で使用する素材は、近所の山から必要な分だけ収穫したもの。伊平屋島では昔からビロウ(クバ)が豊富に自生し、島の人々は葉で笠や扇などをつくってきました。
「クバは、ある程度育ったら刈り取ってあげることが大事なんです。放っておくと葉が混み合って風通しが悪くなり、植物自体が弱ってしまいます」と是枝さん。
クバの葉の収穫は、山の手入れにもつながり、自然環境を守ることにもつながっています。
葉を刈り取り、乾燥させ、形を整えて材料に。制作時に出る端材は畑に還し、また、稲藁のカスは牛の飼料として使っているそうです。
島の植物を余すことなく使い切る。種水土花では、昔から続く“自然と寄り添う暮らし”を実践しています。
旅の時間が深まる、民具づくり体験
ギャラリーに併設された母屋では、民具づくりの体験も楽しめます。体験メニューはクバのかごや稲藁ほうきづくりなど7種類。滞在時間や好みに合わせて選べます。
なかでも人気なのが、クバと貝殻やシーグラスを組み合わせたガーランドづくり。クバで編まれた輪に月桃縄で結んだり、貝殻やシーグラスを取り付ければ、世界にひとつだけのオーナメントが完成。30〜45分ほどで気軽に参加できるのも魅力です。
手を動かしていると、植物の香りや手触り、編み目のデコボコなどに気づかされます。実際に作ってみることで、その手間暇がわかり、自分で手がけたものがより愛おしく感じられるはず。
また体験中には、是枝さんが、植物や民具、島の生活のことなど話してくれました。それは“ものを作る時間”であり、島の暮らしを知ることのできる貴重なひとときでした。
島の子どもたちへつなぐ、“未来の選択肢”
種水土花では民具づくりを通して、島での働き口を増やすことにも力を入れています。工房では現在、子育て中のママさんスタッフが制作や体験のサポートを担当。行事ごとの多い島では、無理なく働ける環境がとても大切で、互いに助け合える場が島の女性たちの暮らしをやさしく支えています。
さらに月に一度、小学校で民具づくりを教える活動も続けています。島の植物や手しごとの魅力を伝えるだけでなく、身近なところから仕事が生まれることを子どもたちに知ってほしいという思いがあります。
「大人になると島を離れる子がほとんどですが、民具づくりに限らず、“島に戻っても生きていく道がある”と覚えていてもらえたら」
“見る旅”から“参加する旅”へ
自分の手を動かす体験は、観光スポットを「見る」だけの旅とは少しちがう楽しみ方。
どんな素材が使われているのか、どんな人たちがどんな思いでつくっているのか。そうした背景にふれると、島の人たちの気持ちがほんの少し理解できるかも。
“見る旅”から、“参加する旅”へ。
伊平屋島で、そんな楽しみ方を体験してみませんか。