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「買う」から「シェア」へ着ることで始まるサステナビリティな旅

ETHICAL TRAVEL OKINAWA

沖縄では、仕事やお祝いごとなど、様々な場面で正装として親しまれているかりゆしウェア。その定義は「沖縄で縫製されていること」「沖縄らしいデザインであること」とされ、袖を通すだけで、沖縄の自然や文化を感じられるのが特徴です。旅をしながら、沖縄の未来を守る一着がいま、注目を集めています。

旅のおともにシェアリングという選択肢

2021年、沖縄で新たなシェアリングサービスが始まりました。それは、県内のデザイナーが手掛けた柄や沖縄の伝統的な柄がデザインされたおしゃれで色鮮やかなかりゆしウェアのシェア。観光はもちろん、ワーケーションなどビジネス目的の方まで幅広い層に利用されています。

サービスを運用する「株式会社BAGASSE UPCYCLE(バガスアップサイクル)」は、さとうきびの搾りかす「バガス」を用いたデニム製造などを手掛ける「株式会社Rinnovation」の山本直人代表と、沖縄の老舗IT企業「株式会社オキコム」の小渡晋治副社長が2021年に共同設立した会社です。

社名に含まれるアップサイクルとは、廃棄される予定だったものに新しく付加価値を加え、より価値の高いものに生まれ変わらせること。バガスアップサイクルでは、「作る→使う→捨てる」といった従来の経済システムから脱却し、資源を循環させて持続可能な社会をつくり、経済成長もめざす「サーキュラーエコノミー」という新しい経済概念に基づいたサービスを提供しています。

沖縄のさとうきび畑を次世代に残す

沖縄の基幹産業の一つであるさとうきび産業。離島を含め、県内のほとんどの地域で作られていて、生産量は日本一を誇ります。台風の被害を受けにくく、干ばつにも強いことから、戦後の沖縄復興を支えた重要な作物です。沖縄を舞台にしたドラマや映画のロケ地に選ばれることもあり、沖縄らしい風景をイメージした際には青空の下で風にゆれるさとうきび畑を思い浮かべる人も多いのでは。

年に1度、冬から春にかけて収穫されたさとうきびは製糖工場に運ばれ、搾った汁は黒糖に、残った糖蜜はバイオガスの燃料や家畜の飼料に利用されます。一方で、思わぬ副産物も。さとうきびを搾ると、「バガス」と呼ばれる繊維状の搾りかすが発生します。その量は年間20万トン以上とされ、一部を燃料として活用してはいるものの、すべてを処理できているわけではなく、余剰分は廃棄しているのが現状でした。

「沖縄におけるさとうきび産業は、生産者の高齢化や担い手不足、収益性の低さなど様々な課題を抱えています。沖縄観光の最大の魅力である豊かな自然や原風景を未来に残すために何ができるかを考えた時、有効活用しきれていなかったバガスに注目しました」そう語るのは、株式会社Rinnovationの大本夕貴さん。

同社の山本代表が実際に製糖工場を視察した際、工場内に高く積み上げられたバガスの量に驚いたそう。燃料として再利用するにも二酸化炭素が発生するため、環境への負荷が懸念されます。そこで、バガスに付加価値を与え、新たな収益源とするために、繊維質であるバガスの特徴を活かした生地製造に着手したのです。

余ったバガスが快適な一着に

生地になるまでの工程は、まず沖縄県内の工場でバガスを乾燥させて粉砕し、パウダー状にすることから始まります。その後、岐阜県や北海道の製紙工場にて和紙に加工。その和紙を細くスリット状にし、撚りをかけて糸にします。バガスを使った和紙糸と綿を広島県内の工場で織り合わせてできた生地は沖縄県内にある工場にて縫製され、かりゆしウェアになるのです。

完成した生地は高い吸湿速乾性とさらっとした肌触りが特徴で、湿度の高い沖縄の気候によく合います。また、消臭効果もあり、汗をかいても快適に過ごせるのも嬉しいポイントです。

「私たちは生地の生産から加工まで、すべて国内で行うことにこだわっています。現在、アパレル産業において世界的な課題となっているのが、環境負荷の問題。例えば、ジーンズ1本を作るために、原料や素材が地球を1.6周分移動すると言われています。コストを抑えるために、安価に生産ができる場所を選んで物を移動させていると大変長い距離を移動しなければならず、それだけ二酸化炭素を排出することになります。だからこそ、全ての工程を国内に集約することで、少しでも課題解決に寄与したいとの思いがあるのです」

「完成までの背景を可視化することで、着ることを通してサーキュラーエコノミーの一部になっていることを実感してもらいたい」との思いから、1着ずつNFCタグがつけられています。スマートフォンで読み取ると、利用開始日や累積利用回数、期間が表示されるほか、いつバガスからパウダー化されて糸になり、生地になったといった、製品が誕生するまでの過程を確認することができます。

ウェアが古くなって着用できなくなった時には、同社が保有する製炭炉で炭にし、さとうきび畑の土壌改良材などとして使用されます。

旅が沖縄の未来を守る一助に

バガスアップサイクルが提供するかりゆしウェアのもう一つの特徴は、買うのではなくシェアすること。

沖縄旅行の記念にかりゆしウェアを購入しても、自宅に帰ると着る機会がなく、タンスの奥にしまったままとなってしまった人もいるのでは。その点、シェアリングサービスなら、現地調達、現地返却が可能で、衣服を無駄にすることなく、旅行を楽しむことができます。

大量生産、大量消費、大量廃棄による環境汚染が問題となっている昨今のアパレル産業。循環した製品を身につけることは、小さな一歩ではありますが、それらの課題に一石を投じることにもつながるはずです。

ここ数年は、従来の個人利用に加え、企業の社員旅行など団体利用も増えているそう。

「最大の目的は、このかりゆしウェアを来て旅行を楽しんでもらうことです。スーツケースを空港で待つ時間や自宅での荷造り、帰宅後の洗濯など、旅行におけるちょっとしたストレスを、私達のサービスで少しでも改善できたら。なおかつ、着ることで環境問題やさとうきび産業、沖縄の文化保護に興味を持ってくれたら嬉しい。環境にも、旅行者にも優しいサービスになることが目標です」と大本さん。

余っていたバガスを快適な生地に仕立て上げ、沖縄を感じさせる一着に生まれ変わり、たくさんの人にシェアされて再びさとうきびを生育させる糧となる。シェアリングサービスを利用して旅行を楽しむことが沖縄の未来につながるサイクルの一部になれるのなら、こんなに嬉しいことはないのではないでしょうか。

SHIMA DENIM WORKS
  • 住所:〒901-2134
    沖縄県浦添市港川2丁目14-7
  • 電話番号:098-988-3100
掲載日:
2023.10.26
更新日:
2023.10.27

※掲載内容は、掲載日もしくは更新日時点での情報です。最新情報は、ご利用前に各施設などにご確認下さい。

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花笠マハエ