伝統をつなぐ作り手の思い

古来より、先人たちの技術と情熱に支えられ
脈々と受け継がれてきた沖縄の伝統工芸品。
歴史が大切につないできたものを、
この先の未来に手渡すために。
熟練の技を有するベテランから
期待の若手職人まで、
作り手ひとり一人の
“ものづくり” への思いを感じてください。

やちむん

壺屋焼窯元 新垣陶苑

新垣 寛

1977年那覇市出身。沖縄県工芸士。代々続く壺
屋焼窯元の家に生まれ、幼少期より壺屋焼の匠で
ある祖父や父の技を間近に見て育つ。10代後半
から本格的に工房での修行に入り、以来30年近
く伝統技術を受け継ぎながら、自由な発想で壺屋
焼の魅力を提案している。

祖父や父を含め、親戚の多くが壺屋焼の製作に携わっているため、幼い頃から工房の風景が日常生活の一部でした。小学生の頃には見よう見まねで焼きの工程まで体験していましたから、恵まれた環境だったのだと思います。高校卒業後に本格的に工房に入り、父・新垣修の作陶の側で修行をしました。親子とはいえども職人の世界なので、手取り足取り教えてもらうようなことはなく、試行錯誤しながら納得のいくものづくりを追求しているうちに今に至ります。

壺屋焼は、赤土の上に白土で装飾する「上焼(じょうやち)」が主流で、線彫りなどを用いて魚紋や唐草といった柄をつけます。職人同士なら、同じ伝統柄でも一目見たら誰が作ったかわかる程、作品には「その人」が映し出されるもの。また、この世界は40代後半の私でもまだ若手の部類です。常日頃から「職人は50代から本番」と言われており、生涯をかけて取り組むものだという思いがあるため、これからも精進しながら、壺屋焼をつなぐ作り手のひとりになれたら嬉しいです。

「窯変指描壺」は、伝統柄を用いた代表作で、登り窯ならではの釉薬の変化と指で描いたダイナミックな唐草模様が特徴です。また、私は伝統柄をベースに新しいデザインを取り入れており、正方形を傾けたフォルムと魚紋を立体的に再構築した「CUBE魚群カラカラ」はその象徴的な作品です。長い歴史をもつ壺屋焼ですが、時代に合わせた商品作りや伝統技法を活かした新しい意匠など、作り手自身も楽しみながら先人たちの思いと技術を受け継げたらと思います。

主な取り扱い店舗:

新垣陶苑(那覇市)/
しびらんか(南城市)/
土産品店あさと(那覇空港内)等

壺屋焼窯元 新垣陶苑

住所:那覇市壺屋1-30-7
TEL:098-864-1713
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紅型

紅型工房 守紅/紅型作家

宮城 守男

首里高校染織デザイン科を卒業後、奈良県の芸大
にて染色を学ぶ。帰郷後、城間栄順氏に師事し、
2002 年独立。「紅型工房 守紅(もりびん)」を
開き、伝統文化を受け継ぎながら、新しい挑戦を
続けている。2022年より「琉球びんがた事業協同
組合」の理事長を務める。

幼い頃に目にした、「うちくい(風呂敷)」の色彩の豊かさや美しいデザインが私と紅型の出会いであり、今へと通じる原点で、染織科で学ぶうちに、紅型を生業にしたいと考えるようになりました。その後奈良県の芸大で4年間染色の技法を学んでいましたが、帰省時には「城間紅型工房」へ日参し、卒業後はここで修行をしたいと直談判したんです。それほど憧れていた工房、城間栄順先生の下で働くことが決まった時は本当に嬉しかったです。

修行時代は紅型の全工程を叩き込まれました。独立して20年以上経った今でも、あの日々は私を支えてくれる揺るがぬ骨格となっており、「先人に恥じないようなものを作りたい」、そんな思いで紅型と向き合うようになりました。現在は製品作りと並行して自身の作品作りや企業とのコラボレーション、現代の生活に馴染む小物類の製作も行っています。例えば「琉球紅型干支お守り」もそのひとつ。干支にまつわる物語を紅型で丁寧に染め上げて表現しています。