南部
食をめぐる

沖縄マグロを使った
加工食品「ボッタルガ」づくりへの挑戦

ETHICAL TRAVEL OKINAWA

那覇市の市魚といえば、マグロ。日本近海で獲れる生鮮マグロのうち、およそ1割が那覇市内の漁港で水揚げされるほど、沖縄は全国有数のマグロの産地です。「クロマグロ(本マグロ)」をはじめ、「キハダマグロ」「メバチマグロ」「ビンナガマグロ」の4種類が年間を通して、近海で獲れます。しかし、そのマグロも刺身で使われる部位以外は流通ルートがなく、多くが廃棄されてきました。

そんな状況の中、「この資源を無駄にしたくない」と立ち上がったのが、那覇でレストラン「BACAR OKINAWA(バカール オキナワ)」を営むピッツァ職人の仲村大輔さんと、その姉妹店となるレストラン「TAMUZZA.OKINAWA(タムッツア オキナワ)」のオーナーシェフ玉城絵里子さん。二人は、「TONNARA OKINAWA(トンナーラオキナワ)」というブランドを立ち上げ、マグロの卵巣を使った沖縄産「ボッタルガ」の商品化に挑戦しています。

シチリアの記憶を頼りに商品開発

「ボッタルガ」は、魚の卵巣を塩漬けにして乾燥させた保存食です。日本では「カラスミ」として知られ、主にボラの卵巣が使われます。一方でイタリアやスペインなどでは他の魚を使って作られるところもあるそうです。

「料理を勉強するために1年ほどイタリア・シチリアで生活していましたが、そこではボラではなく、昔からクロマグロを使ってボッタルガを作っていました。その味は今でも忘れられません。シチリアでは、レストランだけではなく、一般の家庭でもボッタルガをパスタやサラダにかけたり、パンにのせるなど幅広く使われているメジャーな食材なんです。シチリアは気候や立地もそうですが、他の地域からの影響を取り入れながら独自の料理文化を築いている点が、沖縄とよく似ているんです。沖縄でもシチリアのように魚介を使用した加工食品が作れるのではないかと、チャレンジしました」

地元の食材を使って沖縄ならではのボッタルガを目指す

現在、ボッタルガは「TAMUZZA.OKINAWA」に隣接する加工所で作られています。仕入れた卵巣は血抜きした後に塩漬けし、さらに冷蔵で1年以上熟成させて完成します。

「最初は失敗ばかりでした。卵巣の大きさや脂のりは個体によって差が大きく、塩抜きの時間がわずか1時間違うだけでも味が変わってしまいます。乾燥が強すぎれば硬くなり、足りなければ水っぽくなってしまいます。私は香りを頼りに感覚で仕込むタイプですが、誰でも同じ味に仕上げられるように塩の濃度や乾燥時間を数値化することに苦労しました」と玉城さんは話します。

イタリアの技術をそのまま再現するのではなく、沖縄の気候に合わせた方法で試行錯誤を重ねてきました。

味の肝となる塩は、糸満市の沖合およそ2,000メートルから汲み上げた海水だけで作ったものを使用しています。単なる塩味だけでなく、ほのかな甘みがボッタルガの味わいにも良い影響を与えています。また、臭みを抑えるために使うお酒も、沖縄の酒造所が造った泡盛や日本酒を選んでいます。

地元の食材を組み合わせることで、沖縄ならではのボッタルガを目指しているのです。

沖縄生まれのボッタルガを食卓に

加工所で製造した「ボッタルガ」は、隣接するレストラン「TAMUZZA.OKINAWA」の料理で使われています。

「お店ではパスタなどにかけて提供しています。まずは一度味わってもらって、興味を持ってもらえたらうれしいですね。2025年中には、ECサイトでの販売も予定しています。プロの料理人だけではなく、ぜひ家庭の調味料として使ってほしいです。サラダやオムレツ、ピザにも合いますよ」と玉城さん。オープンキッチンでお客さんとの距離が近い「TAMUZZA.OKINAWA」では、使用した食材についても一つひとつ丁寧に説明。こうして沖縄で生まれた食材の魅力を伝えていくことも、大切な役割のひとつ。旅先での食体験が、地域の文化や人とのつながりを深めるきっかけになる。それこそがエシカルトラベルの醍醐味です。

沖縄マグロのボッタルガをたっぷりかけた夜光貝のリングイネ。「海のチーズ」とも呼ばれるボッタルガは、塩気と旨みが濃縮された大人の味。香りも豊かで食欲をそそります。

沖縄ブランドとしての未来

マグロの卵巣を活かしたボッタルガは、新しい沖縄ブランドとして育つ可能性を秘めています。観光客にとってはお土産になり、県外の市場では沖縄発の食文化として注目されるはず。

「僕らがやりたいのは食文化を育てていくこと。10年、20年後に『沖縄といえばボッタルガ』と言われるようになったら最高ですね」

プロジェクトが始まって約3年。商品化はもう目の前ですが、食文化を定着させるという挑戦はまだ始まったばかり。廃棄されてきた食材を活用し、新しい付加価値を生み出すことで、新たな食の循環を生み出し、地域に豊かな未来を紡いでいくはずです。

TAMUZZA.OKINAWA
  • 住所:〒900-0031
    沖縄県那覇市若狭2-7-2 Esquire Table 3F
  • TEL:070-5274-0888
BACAR OKINAWA
  • 住所:〒900-0015
    沖縄県那覇市久茂地3-16-15
  • TEL:098-863-5678
掲載日:
2023.10.26
更新日:
2023.10.27

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