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復興を支える匠たち

確かな技術とアツい想いの復興人

首里城の復元という、全国から注目が集まる一大事業を成し遂げるためには専門技術を持つ職人の力はなくてはならないもの。

熟練の技と豊富な知識、そして復興にかける並々ならぬ情熱が集結し復興に向けて一歩一歩、着実に歩みを進めています。

陰で首里城復興を支えるさまざまなプロフェッショナルにその想いをインタビューしました。

[#01] 宮大工 / 上原 翔吾

那覇市出身。高校卒業後、関東で約8年間、木造住宅の建設に携わった後、28歳で沖縄に帰郷。沖縄県内で木造住宅の建築や現場監督を担当し、2023年2月から首里城正殿の復元工事に携わる。

関東で木造住宅の建築技術を磨いた後、首里城火災があった2019年に沖縄に帰ってきました。火災が起こる以前は木造住宅の建築やリフォームの施工管理を行っていましたが、首里城正殿の工事が始まると聞き、「世界中の人々が注目する工事。雑用でもいいから、どうしても携わりたい」との思いが強くなりました。勤めていた会社の親方に首里城関連の工事依頼があれば自分に声をかけてもらうようお願いし、念願かなって2023年2月から

復元工事に携わっています。これまで、木材に割れ目をつくる背割りの作業や柱の加工を行い、現在は原寸図を基にした実物大模型の製作などを担当していて、山本信幸総棟梁の下、安全第一に、以前の首里城よりもより良い物を作ろうと、宮大工や職人ら関係者が一致団結して取り組んでいます。後輩たちに伝えられるよう、少しでも多くの経験と技術を覚えたいです。

[#02] 漆文化財修復師 / 土井 菜々子

女子美術短期大学卒業後、目白漆芸文化財研究所の室瀬和美氏に師事。15年間修業した後、2011年に沖縄に拠点を移し「琉球漆工藝舎」を立ち上げ、琉球王国時代の琉球漆器文化財の修復を担っている。漆文化財修復師として活動する人は、沖縄県内では土井さん一人だけ。

2019年の火災では、建物だけでなく、建屋内の収蔵庫にあった琉球王国時代の文化財も大きな被害を受けました。収蔵庫は耐火構造となっていますが、火元から近く、外部からの熱と消火水が内部へ入ったことから、保管されていた琉球漆器が熱や水の被害を受けました。通常は50年100年かけて進むような劣化が、一晩で急激に進んだ状態。漆文化財修復に30年間携わってきましたが、長時間高熱にさらされた漆工芸品の修復は初めてです。

県外の修復師とも相談したり、科学分析からもアプローチしたりして修復にあたっています。焼失した建物は平成の時代に建立されたものですが、漆器は琉球王国時代から残る貴重な文化財で、世界に誇れる工芸品です。技術を築き上げた先人への敬意を忘れず、県民のみなさんにもっと琉球漆器の素晴らしさを知ってほしい。2026年に完成する新しい首里城が、琉球文化を発信する場所になってほしいと願っています。

[#03] 赤瓦職人 / 八幡 昇

沖縄県赤瓦事業共同組合代表理事。有限会社八幡瓦工場代表。県産の原土を使用し、琉球王国時代から続く製法を用いて赤瓦を製造している。赤瓦の製造販売や屋根葺き工事のほか、オリジナル商品も開発。首里城正殿復元整備工事では赤瓦製造を担当する。

首里城復元に向けた技術検討委員会の木材・瓦類ワーキンググループが定めた形やサイズに沿って、首里城正殿に使用する赤瓦の製造を行っています。県工業技術センターが行った首里城赤瓦に関する研究成果も参考にしながら、製作していきます。首里城で使用する瓦の特徴は、普段製作する瓦よりも色を濃くし、黒っぽくするため、通常より高温で焼き上げることが特徴。ボランティアの方々が焼け残り瓦を粉状に砕いたシャモットも使われます。

雄瓦や雌瓦と、種類は13型あり、正殿だけで約6万枚が必要で、沖縄県赤瓦事業共同組合に加盟する五つの瓦工場で分担し、約1年をかけて製造する予定です。実は私自身、第一尚氏尚泰久の子孫なんです。かつて先祖が携わった首里城の復元工事に携われるのも、何かの縁だと感じています。首里城火災が発生した当初はまさかという思いでしたが、今は1日でも早く復興し、県民のみなさまに披露したいですね。

[#04] 工事長 / 川上 広行

清水・國場・大米 特定建設工事共同企業体 首里城正殿復元整備工事企業体所長。工事責任者として、品質管理や安全管理、工程管理を担う。平成の復元にも携わり、当時は現場監督として施工管理を担当した。

首里城正殿復元整備工事の工事責任者として、工事全体を見ています。今回の復元工事では「見せる復興」をテーマとしており、見学者の方々との距離も近いので万が一でもトラブル、事故がないよう安全管理には特に気を配っています。首里城の復元工事に携わるのは2回目になります。約30年前の平成の復元工事では正殿のほか、西之廊下、南之廊下復元工事の現場監督を務めていました。今回工事の総棟梁の山本信幸さんも私と同じく

平成の復元工事に携わっていたので、当時を振り返り、反省を踏まえながら全体のスケジュールを組んだりと、前回の経験が役立っています。2023年は正殿の礎石の上に柱と梁(貫、桁)を組み立てる「建方工事」と、屋根を支える「小屋組」までを終え、2024年の5月ごろには、宮大工の腕の見せ所とされる軒まわりの工事が完了予定です。火災から丸4年が経ちましたが、材料の調達から本体工事まで、これほどの大規模な木造建築の工事にしては早いスケジュールで進んでいます。これも、県民だけでなく、世界中の方々の熱い支援があってこそ。3年後無事に引き渡しができるよう、責任は重大ですが、頑張っていきたいです。

[#05] 解説員 / 多和田 沙弥

那覇市出身。2019年4月に一般財団法人沖縄美ら島財団に採用される。解説員として来園者に対し、琉球王国の歴史や文化、首里城を解説するほか、「大龍柱補修展示室」や「木材倉庫・原寸場」など復興が進む様子を伝えている。

解説員として首里城公園を訪れた方々に対し、首里城の歴史や文化、魅力を伝えています。首里鳥堀町出身で高校まで首里城のそばで暮らしていました。首里城火災が発生したのは、解説員になってから1ヶ月が経った頃。当時は「起きたらいつもの正殿があるんじゃないか」と考えてしまうほど現実味がなく、まるで悪夢のようでした。それまで解説していた正殿自体が無くなってしまい、何を話すべきか悩んだこともありましたが、

火災を機に、瑞泉門や曲線が美しい城壁など、首里城の魅力は建物だけではないことに気付かされたのです。現在行われている復元工事は今しか見ることができない貴重な光景です。現場で作業されている工事関係者の方々は「すごいものを創ろう」と一致団結して取り組んでいて、私自身も、解説員として「伝える」ことを通して、復元工事に携われることを嬉しく思います。変化していく首里城の姿を、より多くの方々に何度でも見てほしいですね。

掲載日:
2024.01.17

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