サンゴ礁は、生物種の宝庫といわれる熱帯雨林と並んで、単位面積あたりに生息する生物の種類数が最も多い場所といわれ、生物の最も豊富な生態系の1つとしてよく知られています。
サンゴ礁は、石灰質の骨をつくる動物のサンゴをはじめとして、かたい骨や殻をもった生物たちが死んだ後に残したものが、長年にわたって積もりつもって形成されています。サンゴ礁をつくる主な動物「サンゴ」が地球上に出現したのは、人類が誕生した約250万年前よりはるか昔、約4億年前といわれています。サンゴ礁は、まさに生物たちがつくり上げてきた軌跡となっているのです。
サンゴは、刺胞(しほう)という小さな毒針をもち、プランクトンを捕まえたり、身を守ったりする「刺胞動物」で、クラゲやイソギンチャクの仲間です。
世界中の海に600~800種は生息すると考えられていますが、沖縄の海には、その約半数以上が住んでいます。
これは、1つの場所としては世界最大の種類数であり、国内で見られる約400種類のサンゴのうち、380種類以上が沖縄で確認されています。
まさに沖縄の海は、世界一サンゴの種類が豊富な世界に誇れる宝なのです。
特に石垣島の海には300種をこえるサンゴが生息していて、島の大きさからみれば、世界一のサンゴの宝庫となっています。
沖縄に住むサンゴの新種は続々と発見されていますが、地球上に100万種余りの生物が住んでいるなか、沖縄のように1ヶ所でこれほど大量の新種が発見されるのは他に類を見ません。
アザミサンゴ
中部、西部太平洋・インド洋に広く分布。夜にスウィーパー触手という攻撃用の触手を長くのばす。マルクサビライシ
波あたりの弱い、サンゴ礁の斜面の下などに住み、岩にはくっつかない単体性のサンゴの仲間。ヘラジカハナヤサイサンゴ
インド・太平洋全域に広く分布する。サンゴ礁の礁縁部から斜面にかけて生息する。ウスエダミドリイシ
円形のコリンボース型(散房花型)群体で、琉球列島の礁斜面の浅所で普通に見られる種。ウミキノコの仲間
ソフトコーラルと呼ばれるサンゴの仲間。紀伊半島からインド・西太平洋の浅いサンゴ礁海域に生息する。群体は伸縮性があり、触った感触も柔らかい。柄部から大きく張り出したキノコ状になる。ヤエヤマカワラサンゴ
奄美・琉球諸島以南のインド洋、太平洋に分布する。葉状または薄い板状の群体形を呈し、1m以上の大型群体も見られる。画像提供・解説文参照
海洋博公園・沖縄美ら海水族館
サンゴ礁は、世界中の暖かい海の浅い場所で見られますが、地球上のサンゴ礁の分布から見ると、沖縄は北の端に位置します。
沖縄のサンゴ礁は、ほとんどが「裾礁(きょしょう)」とよばれる島のまわりにできるタイプとなっています。島々を取り巻く防波堤として陸地を守るだけでなく、多くの生き物たちの住み場所にもなっています。また、サンゴ礁は隆起して陸地(島)をつくることもあり、竹富島や黒島、水納島などがサンゴ礁の隆起でできています。
1986年には、西表島にある周囲20メートル以上もある巨大なアザミサンゴ群体がギネスブック認定されたのですが、「ギネスサンゴ」として、いまだ全国のダイバーたちが訪れる人気スポットとなっています。
ほかにも、沖縄だけに生息する「スワリクサビライシ」というサンゴや、全国のダイバーがワッと驚く、大きなキノコ状や盤状をした軟体サンゴ「ウミキノコ類」も、沖縄のサンゴの特徴。ウミキノコ類は、ガンの治療に有効な抗腫瘍性物質が含まれていることが判明し、世界的にも注目されています。
また、沖縄の白い砂浜の砂粒をよく見てみると、枝状や塊状の白い石が集合体となっているサンゴの骨の一部を見ることができます。
ちなみに、沖縄のお土産で有名な「星砂」はサンゴではなく「有孔虫」という単細胞生物の殻。日本では琉球列島のみで見つけることができます。生きているときは星形の殻のなかに細胞がつまっていて、潮だまりの海藻や岩にくっついています。
サンゴ礁が発達するような場所は、サンゴのふるさとである東南アジアのような暖かい南の海に限られています。しかし、琉球列島は、中国大陸から離れて位置するために透明度が高いことや、河川とやや複雑な海岸線を持ち、浅海域の生息環境が多様であることなどが、多くのサンゴの生息を可能にさせています。
また、琉球列島のそばを暖かい黒潮が流れているのもサンゴにとって良い環境となっています。
この黒潮は、他の海域の黒潮とは異なり、沖縄の西側海域で南シナ海の「沿岸水」と混じっていっそう栄養分をもつ海流に成長し、さらに広大な中国大陸を流れる揚子江や黄河により運ばれた泥分によって栄養分に富んでいます。
そのため、植物プランクトンや動物プランクトンが無数に繁殖し、魚介類の宝庫といわれる「東シナ海漁場」をつくりあげ、世界一種類が豊富なサンゴが育まれてきたのです。