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「沖縄力」を贈ります。明日を幸せにする人、こと、もの

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和楽 INTOJAPAN

第一回 布の力


紅型、花織、ミンサー、芭蕉布・・・、その独特の世界観はいかに生まれたのか。
民藝の研究者であり、沖縄の伝統文化に深い理解を示した柳宗悦(やなぎむねよし)は、「日本のどの縣(けん)を旅してみても、沖縄のやうに卓越した織物を數々(かずかず)もってゐる地方には逢へぬ。實(もと)は織物ばかりでなく染物だとて同じである」という言葉を残しています。沖縄に生まれた美しい布の代表である芭蕉布を訪ねました。

紅型の布「薔薇に蔓草模様」

沖縄の海に溶け込むかのように風になびく紅型の布は、人間国宝の玉那覇有公氏の後継者である玉那覇有勝氏の作品。西武伝統工芸展に出品した紅型着尺「薔薇に蔓草模様」。

世にも美しい布の物語

喜如嘉の芭蕉布

さわさわと風に揺れる芭蕉(ばしょう)の群生、赤瓦の木造平屋・・・・・・沖縄本島北部にある海岸沿いの小さな村には琉球の原風景が広がります。大宜味村喜如嘉(おおぎみそんきじょか)、魂のこもった芭蕉布の生産地です。

芭蕉布の糸

芭蕉布の糸。左から、芭蕉そのものの自然な優しい色、福木で染めた黄色、テーチ(車輪梅)で染めた茶色。

糸の原料である”糸芭蕉”の栽培に始まり、芭蕉から糸をつくって織りに至るまでには20以上もの工程がありますが、それらを一貫して手作業で行っている日本唯一の織物です。染料や、芭蕉畑の肥料に至るまで、化学的なものは一切使われていません。

糸をつくる

撚り掛けをして糸をつくる。均一に撚りをかけられるかどうかが職人の腕の見せどころ。

「軽くて、ひんやりとした肌触り。喜如嘉の芭蕉布は”着る薬”です、安心して纏(まと)える布です」と、平良美恵子さん。戦後の沖縄で、途絶えつつあった芭蕉布づくりを工藝まで高めたのは、喜如嘉の平良敏子さんでした。戦時中、沖縄挺身隊として倉敷に赴き、倉敷紡績工場の大原総一郎や、民藝運動に深く関わる外村吉之助との出会いを機に織物を学ぶ機会を与えられました。そして「沖縄の織物を守り育ててほしい」と激励を受け、その想いで沖縄に戻ります。

芭蕉布の帯

芭蕉布の帯。花織づくしの柄。古典柄だが、現代的でシンプル。

ところが芭蕉布の原料となる糸芭蕉の畑は蚊の発生源になるというので切り倒されていたのです。苦境の中、糸芭蕉を絶やさぬよう、熟練の技を要する芭蕉布の担い手が途絶えぬようにと、喜如嘉の女性たちと共に懸命な努力を続け、芭蕉布の技術の復興に尽力しました。1974年、敏子さんを代表とする”喜如嘉の芭蕉布保存会”は国指定の重要無形文化財に、また敏子さんは重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けました。植物染料の染色に精通し、琉球王朝時代の意匠や染め織りの要素も取り組み、芭蕉布の新たな可能性も追求しました。

極上の糸

極上の糸。自然な艶が美しい。

敏子さんが担ってきた役割は、長男の嫁である美恵子さんが凛として受け継いでいます。「すべての作業の中で最も大変で重要なのは畑仕事です」と、美恵子さん。

芭蕉畑

手入れの行き届いた750坪の芭蕉畑。糸芭蕉が成長するには約3年かかる。年に3~4回、繊維をやわらかくするために葉と芯を切り落とし、茎の太さが一定になるように育てる。

芭蕉布のきものを一反織るためには200本の糸芭蕉が必要です。全部合わせて2500坪にもおよぶ畑で、草引きはもちろんのこと、芭蕉の葉と芯を切り落とすなど、より上質の糸をとるための手入れは欠かせません。熟したものを見定めて秋から冬の間に収穫。刈った茎の脇から新しい芽が生えてくるのが愛おしいといいます。糸がとれる状態に熟すまでには2~3年かかるそうです。

成熟した芭蕉

成熟した芭蕉は秋から冬の間に収穫。皮を剥ぎ、束ねて木炭で煮て、そのあと不純物をしごいて繊維にする。さらに繊維を細かくさいて糸をつくる。その後、撚りをかけて整経、絣括り(かすりくくり)、植物で染色をして、芭蕉布を織り上げる。芭蕉の茎は幾重にもなっており、内側に行くほどやわらかく繊細な糸だ。そのため、外側から小物類、帯、着尺、染色用の4種類に分けられる。

平良敏子さん

今も昔も変わらぬ布づくりのために、戦後奮闘し続けた平良敏子さん。90歳を超えた現在は自らが機を織ることはほとんどないというが、芭蕉布会館で働く女性たちのために、糸を整え、指導をしている。平良さんの祈りにも似たその思いは次の世代にも受け継がれ、美しい芭蕉布の物語を今も紡いでいる。

訪れたのは・・・

芭蕉布会館
後継者育成を目的につくられた芭蕉布会館では、芭蕉布の制作工程を見学し、小物類を購入することもできる。
住所 / 沖縄県国頭郡大宜味村喜如嘉 454
TEL / 0980-44-3033

撮影/森川昇
取材・文/新居典子
構成/高木史郎、木村優、小竹智子、久保志帆子

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  • 第2回 焼き物の力
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掲載日:
2017.02.08

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