食の案内人

Interview #3

体が求める、地元の「旬」の食材

フードコーディネーターとして活躍し、8年前に家族で沖縄へ移住した根本きこさん。
2018年春にオープンしたカフェ「波羅蜜」(パラミツ)では、
やんばる暮らしの中で出合った個性豊かな沖縄食材を自由な発想で調理。新しい食の魅力を発信する。

カフェ「波羅蜜」料理担当 根本きこ

カフェ「波羅蜜」料理担当根本きこKico Nemoto

フードコーディネーターとして活躍し、レシピ集やエッセイなど著書も多数。2018年春に今帰仁村ののどかな集落に「波羅蜜」(パラミツ)をオープン。地元食材の個性をいかしたメニューが並ぶワンプレートランチは、旅で訪れる人はもちろん、ご近所さんにも大人気。

暮らして体感した沖縄の食の豊かさと魅力とは。

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若い頃はバックパックで東南アジアなどを回っていました。パパイヤが道端になっていたり、マンゴーの木があったり、そういう風景を見ると胸がときめくんです。それは沖縄にも共通する空気感。食べられるものが身近に実っているというのは、すごく豊かなだと思います。
やんばるに移住して、最初のころは沖縄食材しか使わないぞ!というのを自分に課していました。でもこれがなかなか一筋縄ではいかなくて。もともとやちむんなどは好きだったんですが、それまでは豆腐ようとかマンゴーとか、いわゆるお土産でもらえるようなものしか手に取ったことがなかったんです。例えばナーベーラー(へちま)なんて、食堂で食べる機会はあっても、旅行で来て買うことはなかなかないじゃないですか。だから、皮の剥き方ひとつ、おいしさや良さもいまいちわからなかったんです。沖縄の農産物って“野性味”が強い。植物の生命力の強さを感じます。その個性の強さに、自分が負けていたんでしょうね。でもある日、「すごくおいしい!」と感じて。多分、体が土地に馴染んだのだと思います。

旅行者に体験してほしいこと、沖縄の食を通して伝えたいこと

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「波羅蜜」には、地元の人だけでなく旅の途中の観光の方もいらっしゃいます。店内のテーブルが広いので、地元の人と旅の人が相席になることも多いんですが、一緒に食卓を囲んでいる風景はすごくいいなと思います。食材はなるべく地元のもので、時には珍しい素材もアクセントにたのしんでもらえたら。直売所でよく買い物をするのですが、農家の方に直接食べ方を聞いて教えてもらって実践すると理にかなっていて。そこからつながって、あたらしい食材に出合うこともあります。
私たちが暮らすやんばる(沖縄本島北部エリア)には、この土地に根ざした食材を扱うレストランや定食屋さんがあります。そういうところに行けば、旬の野菜や果物に実際に触れて、そして調理したものをいただくことができます。ビフォア・アフターがわかると、より沖縄食材の魅力やおもしろさを身近に感じることができると思います。
沖縄の食材は旬がないように思われがちなんですが、ちゃんと旬があります。夏場はゴーヤーやモウイ(赤毛瓜)など瓜類が多く、暑い時期を過ぎると葉野菜類がめきめき育って、青切りみかんが出回ります。本土のみかんに比べると味は薄くてそれほど甘くはありませんが、暑い夏を乗り切った体にはあの酸味が大事で、体に必要な栄養分がつまっているんだなと感じます。沖縄の食材は旬を逃すとなかなか手に入らない。そういうところも魅力だと思います。

沖縄の食の可能性とは。

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昔ながらのものを育てている農家さんもいれば、コーヒーやチョコレートカカオ、胡椒、バニラなど、熱帯で生産される作物に積極的に取り組む生産者の方も増えている気がします。知り合いにもいますが、生産者のみなさんは好奇心旺盛でとても熱心です。また沖縄はブラジルや南米への移民も多く、歴史的な背景も含めて食に多様性があることに驚きます。カフェのメニューでタピオカ(キャッサバ芋)フライを出したところ、地元のおばあちゃんが「小さい頃によく食べてた、なつかしい」と喜んでくれて。私はハワイのイメージがあったんですけど、ブラジルでも食べられているし、やんばるではキャッサバ芋を伝統的に食す文化があります。そういうしなやかさというか、いろんな国の食材もゆるやかに受け止めて、その土地になじませる。温暖な気候も含めて、新しいことにチャレンジができるのが沖縄なんだなと思います。

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